新たなる門出の日1
「会場のセッティングは問題ない? そろそろ入場だけど大丈夫??」
会場を覗いてリアムはディオンに声をかけた。
今日は学生会主催の卒業パーティーだ。
リアムを含めた三年生四人が卒業し、そのパートナーに元からいた一年生の役員二人がよばれてしまった。
そのため、中の進行は新役員とディオンで取り仕切ることになり、結果、新学生会長となるディオンが駆けずり回る羽目になっている。
「殿下、卒業生で主賓でしょ! 入場最後なんだからさっさと一番後ろに行きやがってください! っていうか、列は大丈夫なんです? リスト通りに並んだかもう一度確認していただけますか? 名前に間違いがあったら最悪ですから!」
制服姿で手に何枚も紙を持ち、鉛筆で何事かをかきつけ、新役員に指示を出すのと並行して、ディオンはリアムに矢継ぎ早に言った。
「外はジョヴァンニとユルゲンが万事取り計らってるから大丈夫。ソフィアがまだ来てないから伝えとくね」
「マジです?! またオリ先と喧嘩してるんじゃないですか? オリ先は運営側なのに相変わらずどっかフラフラしてるし。ソフィア先輩はリアム先輩の婚約者ですし、そっちは任せました! オリ先も含めて!」
ディオンに父親に対する時と同じ雑さであっちに行けと手を振られたリアムは苦笑して、会場の外へと戻る。
事件の後始末から卒業パーティーまでのデスマーチを経て、ディオンも頼もしく成長した。
本人は実家で母の手伝いをしたいと消極的だが、来年卒の側近候補筆頭である。
そう遠くない未来王位につくにあたり、信頼できる側近はなるべく手元に置きたい。正直逃すつもりはない。
そう、混乱の収拾の合間にソフィアとの婚約の許しをヴィルヘルムから得たリアムは、代わりのように卒業後五年以内の譲位を打診されたのだ。
今回の事件でヴィルヘルムの求心力が下がり国内各地で小さな火種が燻っている、それを新王の即位で払拭し、前王である自分が各地を回ることでそれでも燻るものを抑えたいのだ、ベルニカ公爵のサミュエルも賛同していると訴えかけられた。
そんなに早く王位を背負えるとは思えないと保留したが父の意思は堅いようだったから、なるべく早く信頼できる側近で周りを固めたい。
そんなことを考えながら、リアムは親の爵位順に列を作りながらも楽しげに周囲と話をしている生徒達の様子を眺めた。
今年の卒業パーティーから、去年導入した式典制服での参加を可とした。
そのため、ドレスやアビなどの正装に混じって制服で参加する生徒も多いようだ。
去年の卒業パーティーは王家主催の夜会として、自分とエリアスで計画を立てて城で主催したことを思い返し、さらに一昨年の卒業パーティーでの婚約破棄騒動の事を思い返す。
過ぎてしまえばあっという間の出来事だった。
目まぐるしく状況は変わり紆余曲折を経て、あの婚約破棄騒動で会場を騒がせたテオドールはその地位を剥奪されてリベルタの鉱山へ、エミーリエも同じく綿花農園へ、それぞれ囚人として送られた。
三年生から親しく挨拶を受けながら、リアムは最後尾の学生会生徒の待機場所に戻った。
いつもお読みいただきありがとうございます。
エンディングエピソードを分割で上げていきたいと思います。書いて出しなので修正を入れるかもしれません。
9月末には最終回の予定です。
後少しお付き合いください。
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