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【完結済】NTR王子は悪役令嬢と返り咲く(カクヨム、なろう2サイト累計40万pv)  作者: オリーゼ


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婚約の許し

 怪我をおった貴族達が収容され手厚い看護を受けている騎士団棟内の療養室の一室。

 オリヴェルが療養している部屋を2人は訪ねた。


「あーあ、結局まとまっちゃったんだ。もう少しもだもだしてた方が面白かったのに」


 ソフィアは半分に切った林檎をさらに半分に切る前に、ベットで体を起こしたオリヴェルの口にねじこんだ。


「うっ……! ひょんなおっきいの……むりぃ」


「貴方のせいで、ほんっとに! ひっかきまわされて!!」


「そおぶん、もりあがったデショ?」


「ソフィア、残ったもう半分も口に突っ込んでしまったら?」


 反省のかけらもないオリヴェルに苛立ちを覚えて、リアムは冷淡にソフィアを煽った。


「二人ともひゃめて! ちっそくしちゃう! 殿下ちゃんが助けてくれたんでショ! いのち、大切にさせて!!」


 りすのような素早さで口を動かし林檎を咀嚼し飲み下したオリヴェルを見て安堵した。

 迷惑な男だが嫌いきれない愛嬌があると思うのは、彼に対する警戒が薄れたせいだ。


「で、サミュエル閣下の反応教えてヨ、お二人さん? 泣いちゃった? それとも娘は嫁にやらん! 俺の屍を越えてゆけとか言われて斬られそうになった?」


 林檎を飲み込み、へらへらと人の悪い笑みを浮かべて尋ねたオリヴェルにソフィアがさきほどよりも一層刺々しく言う。


「そう、それですわ! 名前をゲロ出るお兄様に改名なさい! 吐瀉物以下の煽りでわたくしたちのことをかきまわして、さーぞ! 楽しかったでしょうね」


「ひっどいな! ゲロデルってオリヴェルにちっともかかってなくて全然上手いこと言ってないかんね! そもそもそれでかき混ぜられる程度の気持ちでまとまろうってのが、片腹痛いんだヨ。姫サン」


 甘く垂れた瞳に切ない光が浮かんだのをあえて見なかったことにしたリアムは、つい昨日のことを思い返した。


 ヴァンサンとアレックスの様子に危機感を覚え、リアムはベアトリクスの元を訪れ、親戚対応を代わってもらえる算段を取り付けた。

 その後ソフィアの元に赴くと、少し前に到着したベルニカ公爵サミュエルが旅装を解いた最高のタイミングだった。

 順調にいけば今日到着予定と連絡が入っており、ソフィアはリアム達に付き合わず公爵達の宿泊宮である西宮で父の出迎え準備をしていたのだ。

 首都の騒乱では不覚を取ったヴィルヘルムだが、国境の動きについては予想を外さなかった。

 ノーザンバラ帝国は国境を侵犯したものの、彼らは準備万端整えたサミュエル率いるベルニカ騎士団の前にあえなく敗北し撤退した。

 そして、その報告と王都での六公会議のため、サミュエルは最低限の供だけを連れ、馬で首都へとやって来た。

 リアムが礼を取ると、それは不要と雑に手を振られ前置きなしに尋ねられた。


「小僧、どうした? 何の用だ?」


 リアムとソフィアは小さく視線を交わして頷いた。どんな邪魔が入るか分からないし、オリヴェルとソフィアが婚約させられてしまうかもしれない。

 ヴィルヘルムから婚約の許可を得るのはレジーナの冤罪を晴らし今回の事件が解決するのを待つにしても、首都にあまり来ないサミュエルからの婚約許可だけは先に取っておこうと二人で話し合ったのだ。


「ベルニカ公爵、僕達は心から愛し合っています。プロポーズもしました。婚約のお許しをいただけませんか?」


 覚悟を決めてリアムがサミュエルに頭を下げると、意外な反応が返ってくる。


「おう、いいぞ。というか、やーっとその気になったのか? お前ら」


 あっさりさっぱり許可をくれ、婿殿はベッドの中も遅いのか? と続けた父親の首を絞めながらソフィアは訊ねた。


「まるでわたくしたちがその気にならなかったから結婚の話が進んでなかった、みたいな事を言いますわね?」


「なんてその認識なんだ?? 結婚したくなったらヴィルヘルムに報告すればすぐに成せるように整えてあるって伝えてなかったか?」


「「は??」」


 リアムとソフィアの声が重なった。


「聞いてないです! そもそも友達だって言って整わなかった婚姻じゃないですか!」


「おおぅ。二人ともぐいぐいくるな。ソフィアちゃんは素直じゃないから、あそこで言えなかったんだなって思って、父様気を利かせてあげていたのにさー」


 当然、寝耳に水だ。


「それに、オリヴェルお兄様とわたくしの婚約は??」


そうサミュエルに尋ねたソフィアの声が震えている。


「いやいや、あんな不誠実な私生活のボケマラに、大切な娘を嫁がせるわけないだろ。というか、なーんでそんな話になってるんだ?」


 自分の不誠実な私生活は棚に上げたサミュエルに問われ、ソフィアはオリヴェルに担がれていた事を悟りながら答えた。


「オリヴェルが夜会でわたくしとダンスしたのは、婿候補だからで、私と番い、公爵位を後継と争う当て馬役だからと」


「フヒッ……おいおい、オリヴェルのあの性格でベルニカ公爵が務まるものかよ。人品に優れていることも条件だぞ。お前らまんまと担がれたな。イェルドの実力は今やオリヴェルを圧倒して折り紙つきだ。じゃなきゃ、戦争後すぐ、俺がこっちに来れるわけないだろ。しかもイェルドは真面目で信義に厚く、品位もある。臣下達には、さっさと公爵位を譲って引退しろと言われてる」


 そう爆笑したサミュエルの言葉に、二人は今まで散々振り回されていたオリヴェルの言動は全てなんの根拠もなかったと悟ったのだ。

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