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【完結済】NTR王子は悪役令嬢と返り咲く(カクヨム、なろう2サイト累計40万pv)  作者: オリーゼ


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調査

「リアム殿下、レジーナを釈放してもらえまし……あっ! 大公閣下」


 本宮に割り当てられた王太子の執務室に戻るとジョヴァンニとディオンが待ち構えていた。


「っ!!……はじめまして。ディオンといいます」


 リアムは父王の許可をもらう前から二人を呼んで、学園で起こった騒乱の情報のまとめと精査をしてもらっていた。

 嵐の中の小舟のように二つの国の争いの渦の中に引き込まれ壊れそうな妹を一刻も早く、そして、なんとしても助けたかったから早く動くに越したことはないと考えたのだ。

 この場にアレックスを連れてくるのは予想外だったらしく、二人とも驚いた顔で頭を下げた。


「よろしく。ディオン。ジョヴァンニもこの間からありがとう。早速だが資料を見せてくれ」


 挨拶もそこそこに、迷いなく部屋の主人の席に座ったアレックスは資料を求める。

 察したようにジョヴァンニが今回の概要とライモンドが毒を盛られた経緯やその後についての聞き取り資料を渡すと、アレックスはパラパラと紙をめくった。

 さして時間をかけずにかなりの量がある資料に目を通し終え、口を開く。


「何か気がついたことは?」


「実行犯の名前をどこかで見た気がするんですけど思い出せないんですよ。ディアーラ人なのでソフィア絡みじゃないかと思うんですけど」


「伯父上、資料を見せていただいていいですか」


 ジョヴァンニの回答を聞いて、リアムはアレックスから該当部分の資料を受け取り、作業用の大机の角、一番手近な席に腰をかけた。

 実行犯の情報を目で追うと、ジョヴァンニの言う通り確かに見覚えのある名前だった。

 だが、どこで見たのかリアムにも思い出せない。


「食堂でレジーナに足をかけた生徒だろう」


 唸るリアムにこともなげに答えたアレックスに、当事者だったジョヴァンニが手を打った。


「それだ! ノーザンバラの将軍に家族を殺されたって言ってたあの生徒だ。閣下、よく覚えてますね。結構前の話なのに」


「その報告を受けたのが最近だからね。忘れてないよ」


 ちらりと言葉尻に毒を含ませたアレックスは、形のいい顎をつまんで淡く浮かんだ無精髭を擦った。


「おかしな話だ。ノーザンバラへの恨みでレジーナに八つ当たりじみた幼稚な嫌がらせをした生徒が、アッシェンを挟んだとはいえ当のレジーナの命令に従うなんてね」


「レジーナを貶めるためのこの生徒の虚言で、押し通せるんじゃ」


 リアムの言葉にディオンが顔を輝かせてにっこりと笑う。


「これで解決ですね!」


「難しいだろうな……」


「駄目でしょ」


 アレックスとジョヴァンニの二人がほぼ同時に否定した。

リアムが二人の間で首を巡らせると、アレックスが譲ってやるとばかりにジョヴァンニを顎で促した。そこに普段の万人に好かれる物腰の柔らかさはなく、生まれ持った王族としての傲岸さが透けている。


「物証がなければ仰る通りなんですが。例の物証の茶葉が。淹れて飲んだらレジーナが死んでいたわけですよね。彼女は大切な旗印だったわけでしょう? ノーザンバラ皇家の血を引くメルシア連合王国の傀儡の女王として」


「そもそもノーザンバラ側だったアッシェンが毒を渡すいわれがないのか……」


「理屈的にはこの生徒の供述の方が辻褄が合うんですよ。残念ながら」


 レジーナの不利な立場を実感し、リアムは愚痴めいたため息をこぼした。


「状況的に、誰かが後から仕込むのも難しいんだよね。というか、レジーナも茶葉を持っていたことは認めているわけだし。アッシェンに話を聞ければよかったんだけど。そういえばディオンは彼の授業を受けてたんだっけ?」


 アッシェンの受け持ちは主に二年生だったから、リアムは彼をよく知らない。


「講義は毎回面白かったですよ。生徒のこともよく把握してましたし。ノーザンバラとベルニカの話をよくしていたのは、思うところがあったのかもしれないです」


「オリヴェル先生の生き別れの兄弟なんですよね。兄弟揃って迷惑だな」


「オリヴェルに話を聞いてくるよ。落ち着いたらソフィアと見舞いに行くつもりだったし」


 そこにおざなりなノックと共に、本宮の別の場所で事件の後始末をしているはずのガイヤール校長が入ってきた。


「ディオン君、パパが差し入れに来ましたよ。あとレジーナ殿下のために役に立ちそうな情報があったのでこっそりメモって……ピャッ! ウィステリア??」


部屋の奥に鎮座したアレックスを見て、ガイヤールが文字通り飛び上がった。


「おや、ヴァンサン、なぜここに?」


「あっ……! その、えっと。実はこれが、前にお話しした息子で! 差し入れと情報提供に来たんです……! どうぞ!」


 素早い動きで封筒だけをアレックスに預けると、さっと離れてどこかわざとらしくディオンに差し入れの籠を渡す。

 そしてリアムの袖を小さく引いた。なぜかその手は微かに震えている。


「リ、リアム殿下、ちょっといいですか? お耳に入れたいことがあって。みなさん! 殿下をお借りしますね! すぐお返ししますので!」


 自分の息子と入れあげているアレックスが出会ったのがいたたまれないのだろうか。

 そう予想しながら廊下に連れ出されたリアムだったが、ガイヤールの口から出た言葉はそこから大きく外れたものだった。

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