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敵に回してはいけない男

「もういいか? 離してくれ。ここには学園の見取り図を取りに来た。親子の親睦を邪魔するつもりはない」


「忘れろください!!」


 顔を真っ赤にしたディオンに無言で肩をすくめたケインは、剣についた血糊を拭った。

 その間にヴァンサンが地図と共にインクを出してテーブルの上に置き、学園祭の会場から避難所に向かった生徒の移動経路、寮から東門を通って移動した生徒の動き、それにそこから出れずに引き返したリアム達の動き、レジーナの足取りとジョヴァンニとオリヴェルの向かった先と知る限りの状況を書き込んだ。

 ヴァンサンの作業が済むとケインがおもむろにソフィア達の脱出経路を書き込んでいく。

 その書き込みは澱みなく滑らかで自分達と別れた後のリアム達の動きが見えるようだ。


「で、俺は北門から入り、北門と東門の敵を排除してここまで来た」


 そう言って北門と東門の敵を消したケインの行動にディオンは自分の耳目を疑った。


「え? あの数を?! 一人で?!」


「雑魚ばかりだったからな。剣を暖めるのにちょうど良かった。何人かは殺さずに拘束してあるから、後で回収しろ」


「この人はこの国一番の化け物ですからね。敵に回しちゃいけません。ついでに逆鱗はエリアス殿下なので、良いですね。私の言いたい事分かりますね」


 ディオンは父にだけ分かるように小さく頷いた。

 エリアス大公を腐すのは父に対する当てこすりでそうしているだけだ。

 大公に対して思うところはない。むしろ父の構い方を考えると面倒だろうなと同情する部分がある。


「まあ、お前はいまだに俺の執行猶予()リストの一番上にいるがな。その状況でおおよそ十年間生き延びてるのはたいしたものだよ」


「はは。そろそろ消してくださいよ。下心なくエリアス殿下を推しているだけで今は無害ですよ、私。代わりにフッカーライでも入れておけばいいんじゃないですか? で、これからどうするんですか?」


「俺はこのまま西門裏に行き、ライモンドとリアムと合流を図る。すでに脱出してくれているといいんだが。ところでこの地下遺構ダンジョン、ここにレジーナが囚われてる可能性が高いなら、どうして彼女を助けた上で全員で脱出しなかった? 抜け道があるようだが?」


 ケインの指摘にヴァンサンがはきはきと答えた。


「ああ、これ。地下牢までは良いんですがその先は大きく崩落している部分もありますし、一人二人づつ通るのが限界の上、勾配が急な場所もあって逃げにくいので除外していました。ただアッシェンが歴史研究の一環として調査を申請して、作業員も入れていましたからね。今考えると、ここからも敵が侵入した可能性が高いですし、脱出もできるかもしれません」


「なるほど。ならリアムの通った西門までのルートを辿って、助けられるようならば学生会の役員を助ける。西門付近にリアム達が逃げた痕跡があれば地下遺構に移動というところだな。お前達はどうする? この建物にいた奴らも片付けておいたから、出入口を塞げば安全は担保できる」


そう尋ねたケインに、ヴァンサンが地図上に指を使って丸を描いてしめした。


「この辺りはおそらくオリヴェル先生、こちらの辺りをライモンド先生が排除してますよね」


「返り討ちにあっていなければそうだな」


「この状態で、ケインさんが西門方向の敵を排除……ならばこの建物はまず安全。仮眠室とこの部屋に鍵をかけていけば敵のことは考えなくていいですね」


「ああ。まあ大丈夫だろう」


「ならば、ディオン君はここにいてください。私はこの人と一緒に表に出て、怪我人の救出や誘導にあたります」


「……っ! 父親ムーブすんな! ボクだって学生会の皆の事が心配だし、先生達の事も心配だ。連れてってください!」


「慣れない人間にはきついぞ。泣き言は聞かないが構わないか? それなら応急手当てに使うための道具を支度しろ」


 ディオンはそれに自信たっぷりに返事をした。


「大丈夫です! ボク、やれます!」


 その後移動した校長室の中に転がる死体とその血臭の洗礼を浴びたディオンはさっそく派手に一吐きしたが、ケインは泣き言を聞かなかったし、ディオンも青い顔をしながらもそれに耐え、二人に付き従った。

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