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霧の中の灯火

「寮の中の生徒は全員退避できましたね」


 ガイヤールが教師達の報告と名簿をつけ合わせ、寮に残っていた生徒全員の安全を確認すると、寄り集まった生徒の数を見てリアムに提案した。


「50人程度ですから東門から避難して、大学校の庭で先に避難した生徒と合流しましょう」


 東門は寮に出入りする業者用の通用門で小さい造りだが確かにこの人数ならそれほど時間がかからず抜けられるだろう。


「うん。東門はここから近いし、そこから逃げられなくても北門の方に抜けられるからね」


 リアムの指示で数人の教師が生徒を先導して動き出した。

 交流祭に参加していた生徒達よりも怯えていたが、二十名ほどの警備兵が彼らを挟んで壁となる事で安心感を与えて落ちついて避難できていた。

 先程の場所から東門までは歩いて五分ほど。

 イチイの生垣に沿って進み、アーチ状に刈り込まれた植栽のガーデンゲートを横切ると、ベリー類の植え込みの低木の合間に薬草などの花壇がある実用的な庭になっている。

 2列で抜けるのがやっとの狭く見通しの悪いガーデンゲートを生徒達が一列に、その横に兵士達が付き添いながら早足で抜けていく。

 だが列が半分ほど進んだ時、警備兵と警備兵の間を穿つように植え込みの低木の陰に潜んでいた敵が鬨の声をあげて襲いかかって来た。

 人数はこちらの兵達と同じぐらいだろうか。

 兵士達もある程度は訓練を受けているが、側面をつかれ混乱した生徒達が狭いガーデンゲートの辺りで押し合いへし合いしながら逃げ惑っているせいで、上手く戦えず遅れをとっている。


「こちらに!」


 巻き込まれない方がいいと判断したらしいユルゲンが、リアムの手を引いてガーデンゲートからかなり離れた位置に下がる。

 その一瞬後にリアムがいた場所が人混みに呑まれた。

 ユルゲンの判断は正しかったようだ。

 混乱する生徒と警備兵を再び引き締めたのは、ソフィアの一喝だった。


「警備兵が貴方がたを守りますわ! 粛々と行動なさい! 警備兵は敵を食い止め、生徒達に付き添って守り、彼らを安全に逃すのです!」


 ソフィアの声は混乱のさなかでも、いや、そういう状況になった時こそ強く通って心に響き、戦う者を鼓舞する力に優れている。

  それは霧の中の灯火の輝きのようで眩しく頼もしい。今日だけですでに何度彼女に助けられただろうか。

 雄叫びをあげた警備兵達が敵に銃槍を突きつけ、その横を生徒が走り抜けた。警備兵がコンビネーション良く彼らを守って共に校外に脱出していく。


「敵の増援が来てる!」


 ディオンの切羽詰まった声に指さされた方向を見ると、北門の方向からも武器を持った一団が押し寄せて来ている。


「一般の生徒達は警備兵がついていればなんとかなります。殿下、一度寮の方まで引いて別の出口に向かいましょう!」


「皆! こっちへ!」

 

 あの人数を突破できないと判断したリアムは青ざめた顔をした役員と教師達に声をかけて率先して来た道を駆け戻る。

からくも一般生徒は全員逃げおおすことが出来たが警備兵と分断されたリアム達学生会役員一同は想定よりも多勢の敵の中取り残された。

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