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誘い出された少女

 時間は少し遡る。レジーナは不安を押し殺しながら学生会室で皆を待っていた。

 半刻近くになるが先に外に行った彼らから音沙汰はなく、窓際に近づくのは危険だからと部屋の壁寄りにいるように指示されて外の喧騒も推し量れない。

 護衛として置いていかれた警備兵に外の様子を見に行くことを提案したが彼は首を縦に振らなかった。

 レジーナがそわそわと部屋の安全な場所を歩き回っていると扉がノックされた。


「誰だ?」


「すっ……すみません! 二年生の地理政治学と歴史を担当しているアッシェンです! ライモンド先生に伝言を頼まれまして……!」


 聞き覚えのある声にレジーナが頷くと護衛が警戒しながら扉をあけてくれた。

走ってきたのだろうか、灰色の髪を汗で額にべったりと張り付かせたアッシェンが肩で息をつきながら立っていた。


「先生に頼まれたという証拠は?」


「これを預かっています」


 強面の警備兵に怯えたのだろうか。震える手でアッシェンの懐から出された手紙を見て彼は頷いた。


「ライモンド先生の筆跡のように見えるが……。状況は?」


「さきほど爆音を聞かれているかと思いますが、あれよりも小規模な爆発が学園のあちこちで起きています」


 警備兵の不安そうな表情を見ながらアッシェンが続けた。


「さきほど起きた爆発は捕縛したテオドールが仕掛けた物です。まだ何ヶ所か残っている可能性が高いのですが、彼は仕掛けた場所までは言わなくて。公爵令息に拷問を施すわけにもいかないので他に仕掛けた場所がないか話すよう交渉を試みたところ、レジーナ殿下にならば話すと嘯いたそうです。ライモンド先生をはじめとした他の先生方は生徒の誘導と警備でこちらまでくる余裕がなくて。以前殿下とお話しした事があった私が手紙にもあるようにこちらに派遣されました」


 立板に水のごとくしゃべるアッシェンにレジーナはほんの少しの不信感を覚える。


「あの……ここを動くなと校長先生にも言われていて」


 ガイヤールを出せば引くのではと思ったが、アッシェンは強く言葉を重ねた。


「避難中の生徒達がいる場所でさらなる爆発が起きたらどうなると思いますか? その犠牲を防ぐことができるのは殿下だけです。一刻の猶予もありません。護衛の方の立ち合いの元、鉄格子越しならば問題ないでしょう?」


 煽るように生徒たちの安全を危ぶむ言葉をかけられて、心が動かないわけがない。護衛に目線を送ると彼が頷いたのでレジーナはアッシェンに言った。


「分かりました。案内してください」


「ありがとうございます。こちらです」


 身を翻し、先導するアッシェンの厚い眼鏡に隠された眦が三日月型を描き口元が小さく歪む。だがそれはレジーナから見ることが出来なかった。


「殿下、ゆっくり彼についていってください。すぐに追いつきますので」


 護衛がアッシェンに聞こえないようにレジーナに声をかけ、先ほどアッシェンが持ってきたライモンドからの手紙に、万一に備えて行き先を書きはじめたのを見てレジーナは頷き、アッシェンについて足を進めた。

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