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姿を消したレジーナ

 むせかえるような血の匂いと共にライモンドの赤髪がさらに赤い赤い血に染まった。

 オリヴェルが一息でライモンドの斜め後ろに迫っていた敵を斬り倒し、返す刀で彼自身に襲いかかってきた敵を易々と屠ったからだ。

 首の血管を斬られ立ち尽くしたまま事切れた敵から吹き出した血を頭から被るはめになったライモンドは、その匂いで再び吐き気に襲われた。


「あんな近くまで来てた敵に気づかないなんて、パイセンマジヤバじゃん。顔色も真っ青だヨ。大丈夫?」


 ふざけた態度は相変わらずだが、珍しくその口調には真剣にライモンドを労る響きがあった。


「だいじょば、ない……うぇ……っ。吐き気が戻ってきた……」


 普段ならば血臭ごときでこんなことにはならないが体調不良にこれは厳しい。生臭い鉄錆の匂いに胃が耐えられない。


「どーぞコレ」


「いや……」


 目の前に差し出された水筒に手をつける気にならず、ライモンドはそれを手で押し留めた。


「えー?! もしかしてオレのこと疑っちゃってる?? ひっど! オレ、パイセンの命の恩人でベルニカ公推薦の安心安全のオリヴェル君だヨ。オレのことは信じられなくても、公爵閣下のことは信じてくださいヨォ!」


 そう言いつつ口をつけて中身を飲んでみせてくれたオリヴェルからライモンドは水筒を受け取って水を飲み込まずに口を濯ぎ、頭から浴びた血潮を落とすのにありがたく中身を使わせてもらった。

 味方だと認知しても、今は他者からもらった何かを飲み込む気になれない。


「ならもっと信頼される態度を取れ。うさんくさいんだっつうの。そうだ、テオドールはどこの牢に繋いだ?」


「へ?? テオドール?? テオドールってあの粗チンのゴミカス汚ぼっちゃんだよね?」


「ああ、その顔だけボンボンだよ。警備兵がお前が連れているのを見たと」


「知らないヨ?? オレずっと庭を駆け回って、ノーザンバラの奴らとあそんでたし」


 やっと退屈な先生ごっこから解放されてはしゃぎすぎちゃって。何人斬ったでしょうか! ジャジャーン6人ですと、脂で汚れた剣を服の裾で拭きながらからりと笑うオリヴェルの話をライモンドは聞いていなかった。

 頭をよぎるのは、オリヴェルが学生会室にいた時間にディオンに目撃されていた、もう一人のオリヴェルのこと。


「まずいな。リアムと合流……いや、先に学生会室に戻るぞ。レジーナ殿下の安全を確保した方が良さそうだ。ディオンが前に見たっていう、ローブを着たお前らしき人物のこと覚えてるか?」


「あー、なんかそんなのあったネ。結局よく分かんなかったもう一人のオレね」


「お前が連れて行ってないならそいつがテオドールを連れていった可能性がある。そいつがノーザンバラ側の手先だとして……十中八九そうだろうが、次に狙われるのはレジーナ殿下だ。そいつより先に彼女を確保しないと」


 ライモンドはオリヴェルの手を借りて立ち上がり学生会室に戻ったがそこはもぬけの殻になっていた。


「パイセン、これ、ちょーっとやばいかも……」


 部屋を探しまわったオリヴェルがピラピラと振って見せた書いた覚えのない書き付けを見たライモンドは思わずそれを握りつぶした。

いつもお読みいただきありがとうございます。

アレックスが主役のこの作品の BL前日譚、「自由を取り戻した男娼王子は南溟の楽園で不義の騎士と邂逅する」ですが、カクヨムさんのルビーファンタジー大賞に落選しまして…。応援お礼と別の短編コンテスト向けにランスの護衛時代の短編を書きましたのでなろうさん男娼王子の最終話に番外編として追加しました。

イリーナの護衛騎士を務めていた間のランスの話となります。前作お読みいただいている方向けにこちらで宣伝しておきます。

お時間のある時にお読みいただければ嬉しく思います。

狂愛のペルソナ

https://ncode.syosetu.com/n3104hs/102/


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