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新生活

学園編始まりました。よろしくお願いします。

「殿下、こちらを」


 同室のユルゲンがローブを捧げてくれ、リアムはそれに腕を通した。


「ありがとう。でも自分で着れるからここまでしなくていいよ。ユルゲン」


「殿下に王子らしい振る舞いを覚えていただくよう立ち回りなさいと、言い含められていますので」


 学園の新学期が始まり三週間が経った。

 リアムにとっては三年生、学園生活最後の年だ。

 リアムは学生会に会長として復帰し、テオドールは役員を外れて一生徒として寮生活をしながら、学校に通っている。


 ライモンドが教師兼護衛としてリアムの面倒を見てくれるのは前までと変わらないが、彼だけでは護衛の人数が足りないということになり、教師がもう一人増えたのに加えて、同じ三年生のユルゲン・リッツがルームメイトになった。もちろん彼は単なるルームメイトではなくて、リアムの護衛である。

 昨年度、テオドールが専横を極めたときも、他の下位貴族達の盾になりテオドールに意見したこと、また父親のように立派な近衛騎士になりたいと鍛錬に励んでいて、学生にしてはかなりの腕前だったことを買われたのだ。


「今日の放課後の予定はなんだっけ?」


 鏡の前で身支度に崩れがないか確認していると、ユルゲンが少し斜めになっていたローブの襟元を直してくれる。


「学生会二、三年生と一年生との初顔合わせです。また賑やかになりそうですね、リアム殿下」


「上手くやれるといいけど、不安だな……」


「胃薬を取り寄せておきましょうか?」


「必要ないことを祈るよ」


 鞄を背負ってユルゲンと共に寮を出ると、すれ違った生徒達に恭しく頭を下げられるし、親しげに微笑まれる。

 無視されたり侮蔑されてくすくす笑いの種になっていたのには慣れていたけれども、正反対の態度を取られる事にいまだに慣れない。


「よう、おはよう。調子はどうだ?」


「ライモンド先生、おはようございます」


 偶然行き合ったように見えるライモンドは当然護衛として合流したのである。

 三人で雑談をしながら歩いていると、ユルゲンとライモンドの立ち位置がリアムを守るかのような位置に変化した。

 横に視線をやると、足早に一人の生徒がこちらを追い抜かしていく。


「テオドール、おはよう」


 ライモンドが声をかけると、綺麗に整った眉がほんの少し持ち上がったが意外にもちゃんと返事が返ってきた。


「……おはよう、ございます。ライモンド先生、リアム殿下」


「え……っと、おはよう」


 義務は果たしたとばかりにリアムの返事は無視して足早にテオドールが遠ざかっていく。


「感心感心、ありゃ赤狼団で相当キツく叩き込まれたな」


「今、先生とあからさまに距離を取りましたもんね」


 ユルゲンの言葉にライモンドがうっすらと笑って肩をすくめた。

 リアムには分からないが、そうなのだろう。

 テオドールのエリアスに似た美貌は相変わらずだが、その雰囲気は険を含んで人を寄せ付けない。

 昔は朝から取り巻きが鞄を持ち、テオドールの回りに侍っていたが、今は誰もいない。

 華やかな人間関係はなりをひそめ、クラスで遠巻きにされ、一人孤立している。

 本当に反省したかは分からないが、やり直す気概はあるようで、そんな状況でも勉学に励んでいるようだ。

 学年が分かれたこともあって学園内でほとんど関わることがなくなった。

 テオドールの寮の部屋もコンラートの手配で一般生徒用の小さな部屋に移動させられているから、寮でも顔を合わせることはほとんどない。

 あの時の片割れであるエミーリエは全く反省もせずリベルタ送りになったので、テオドールにはしっかり反省し、更生してもらいたいと思っている。


 一行が校舎に続くメインロードに入ったところで、道の逆側からソフィアとレジーナ、それに今年度から新人教師としてライモンドの補佐に入った若い男教師が一緒に歩いてくるのが目に入った。


「おはよう、ソフィア。レジーナもおはよう。……あとベルゲン先生も」


 ぴりり、と嫉妬に灼ける心を自覚しながらリアムは三人に挨拶をした。

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