メンテナンス
斉藤:……やれやれ、ようやく静かになりましたね。
化野:はっ、塩だと思わせといて、やっぱり毒だったわけか。
斉藤:…飲まなかったんですね、お茶。
化野:あたりめーだろ?あからさまに怪しいんだよ。
斉藤:…なぜ、そう思われたんですか?
化野:テメエ、最初に言ってただろ?「馴れ合いはよくねえ」って。テメエの常識じゃあ、馴れ合おうとしてなかったヤツが「お互いのことを知るのも重要」なんて言って、突然お茶すんのかよ。随分平和な世界に生きてんだなぁ。
斉藤:…今からでも遅くないので、飲んでいただけませんか?
化野:なぁんでオレがテメエに命令されなきゃなんねえの?しかも睡眠薬盛るようなヤツにさぁ。…オレはプロの嘘つき、番狂わせのトリックスターだっつったじゃん。『プロ』相手にいつまでもしらを切れると思うなよ、『素人』が。
斉藤:………ふふっ、うふふふ…ふははははははははははっ!!
斉藤:…おかしいなあ。不自然な言動はしていないつもりだったんですけど。貴方の方がよっぽど不自然でしたよ。
化野:「不自然な言動」ね。総合点だと、確かに俺の方が上回るわな。人畜無害ぶりも、適度な気配りも、あとツッコミも。「凡人役」なら百点以上じゃねえの?オレっちもすっかり騙されちゃった~。ひゃはは!
斉藤:…っ!
化野:…アンタ、これまで欺瞞だの讒言だのにも縁が無かったんじゃねえ?猜疑心なんて、抱いたこともなかった。…人を、何の疑いもなく、心から信じることが出来てる。
化野:さっきのお茶だって、全員が引っかかる、って信じて疑わなかったんだろ?まず、稔土は飲まない可能性があった。案外思慮深いんだぜあいつは。バカがつくくらいのお人よしで、断れない性格だけどな。依田もそうだ。あいつはそれこそ猜疑心の強い性格で、掛け値なしの好意ほど疑うところがある。…その設定を自分で忘れちまうくらい、どうしようもねえアホだけどな。
化野:そうでなくても、オレが騒いで止めたりすることも出来たんだぜ。「疑り深い性格のヤツがいて飲まない」「気づいたヤツが飲まないように言う」ざっと考え付くだけでも、これだけある可能性を考慮しないんじゃあ、しょせん素人だな。
斉藤:…だったらどうだって言うんです?「オレの方が上手だ」って勝ち誇って、僕を蹴倒して、主役に踊り出ますか?
化野:主役?はっ、興味ねーよ。オレはみんないなくなった所に一人残って、真実を知るチャンスを持つのが好きなだけ。「なんでここまですんのか」それさえ教えてくれりゃ、俺も大人しく引き下がるよ。
斉藤:……言われたんですよ。「お前は俺の分まで生きてくれ」って…。
化野:…。
斉藤:だから、僕は主人公になって、あいつの分まで生きなきゃならないんだ…!そうでないと、彼が本当に忘れられてしまう、から……。自分もいつか忘れられて、捨てられて、しまうから…っ!
化野:……へー。そんだけ?
斉藤:なに…?
化野:過去に縛られ続ける「キャラクター」ほど見苦しいもんもねーな。はーあ、つまんね。
斉藤:(化野の胸倉をつかむ)ふざけるな…!元々お前みたいなふざけたヤツは、大っ嫌いなんだ!あのお茶には、お前の分だけ毒を盛ってやったのに!飲まなかった!トリックスターはいつだってそうだ!いつもいつも邪魔ばかりしてきやがって…!
化野:ふーん、運のねえヤツ。
斉藤:何を…っ!
化野:トリックスターってのは、「職業」なんだよ。オマエはヒトの職業にケチつける気なのか?「神様」は、「世界」は、俺たちが必要だから作ったんだ。で?アンタはどうなんだ?なぜここに居る?必要とされてるからじゃねえの?
斉藤:…!
化野:必要とされてるから「キャラクター」がここに居るとして、後ろばっか向いてるヤツは必要とされると思うか?変わろうともせず、後ろ向きなモチベーションでひたすら暗い目標に向かって暗い気持ちを募らせていっている…。そんなヤツが衆目を惹いて重宝されると思うか?
斉藤:…。
化野:ま、そういう事だな。過去にばかりこだわってたら、本当に一人になっちゃうよ。周りで手を差し伸べてるヤツの存在も、きちんと認識しといた方がいいぜ、って…
斉藤:(さえぎって)そんな事はわかってる!
化野:…へえ。
斉藤:…わかってるさ…。手を差し伸べてくれる人がいるのも知ってる…。けど…。忘れちゃいけないんだ…。僕はあいつの為の復讐をしなくちゃならないから…。
化野:…わかんねーヤツだな…。そういう事って、四六時中考えてる必要あるわけ?
斉藤:ああ…。そうさ…。僕にとっては、そうなんだ…。だから、仲良くなったキャラクターも、蹴落としていってる…。今みたいに…。
化野:…。ま、そこまで言うなら、強要はしないよ。
斉藤:へっ?
化野:だぁからさ、「思う存分やれば?」って言ってんの。何もかも投げ棄てて、復讐鬼になるって生き方もありなんじゃない?納得いってるならね。
斉藤:…。
化野:アンタ、さっきから聞いてりゃ、世界で大変な思いをしてるのは自分だけ、とでも言いたげだけどさ。「キャラクター」たちはそれぞれ、感情も思考もある。となれば当然、思い思いの想いを抱えてるよな。そん中には重いのも居る。…オレの『知り合い』にもな。
斉藤:…抱えているのは、あなたも同じじゃないですか?
化野:『知り合い』の話だよ…。ま、オレは下りるわ。止める理由もねーし。
斉藤:…本当に、いいんですか?
化野:最初っからそう決めてるって言ってるだろ?行けよ、ほら。
斉藤:…ッ!
0:(斎藤、去って行く。)
化野:あ、そうだ。一つ、忠告しておくぞ!…って、居ないか。
化野:主役になるってことは、今まで蹴落としてきたヤツ全員の思いを背負っていかなきゃなんねーって事だ。まして復讐鬼になるなら、なおさらその肩は重くなる。復讐が終わった空の心には、この事実は「死の強迫観念」より重いかもしれないぜ?…
0:(間)
化野:あ、言い忘れてた…。オレの普段の口調、あれはどっかの「神様」の御意向だ。なぜだか、語尾やら何やらが、口から発した瞬間に書き換えられていくんだよな。
化野:…口調一つとっても、思い通りにならない世界。別れたくない人と別れ、言いたくもない台詞を言わされ、やりたくもない役をやる。
化野:ここで起こったことは、オrボクたちの、日常の一部に過ぎない。
化野:けれど…「キャラが作者に復讐する」tって事態が起こりつつある。
化野:さて、作sssカミサマ。アnキmmmm…「アンタ」は、どうする?
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?: (*月*日*時~ ボイコネはメンテナンス予定です。)
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0: 《終》