怪盗カルヴェロ
稔土:犯行時刻まで…あと10分だ。警備に異常はないか?
依田:ハッ、問題なく!
稔土:怪盗ヨーダめ…今度こそひっ捕らえてくれる!
化野:ネーネー館長サン、そのダイヤ、記念にちょっとだけ触らせてもらえナイ?
稔土:バケノ!貴様…。
二尊院:あら、いいじゃないですか。もう少し時間もありますし。
稔土:し、しかし…。
化野:ヤッター!こんなモノ滅多に観られるモンじゃナイからネ!じゃ、男場、いやいやお言葉に甘えて…。
斉藤:バケノ!いい加減にしろ!
化野:ア、刑事さんもいる?
斉藤:いるかっ!「森のわがまま姫」を何だと思ってる!世界の至宝なんだぞ!
化野:しっかし何回聞いてもふざけた名前だよネエ、元が何語か知らないケド。マジメな刑事さんの矜持の為にも、そろそろ返しとクヨ。ハーイ。
依田:ちょっ、投げっ…!
斉藤:…警部。もうそろそろ犯行予定時刻です。
稔土:ああ、頼むぞバケノ…と素直に言いたい所なんだが…。
化野:エエーッ、安心して頼んジャッテ下さいヨー。なんなラ、警部さんたちモ帰ってもらって構わナイのニー。
稔土:…ったく…警察をなめおってからに…。
斉藤:予定時刻を過ぎましたよ?館長さん…。
二尊院:そうね。ダイヤはこの通り、ケースの中です。
斉藤:本当に来るんですかね?ひょっとして怖気づいたんじゃ…。
稔土:いや、ヤツに限ってそんなことはない!
化野:あるいは、もうとっくに来ていル…。
依田:ッ…!そこのダイヤは偽物ってことですか!?
二尊院:えっ!そんな!嘘でしょう!?ケースの鍵を!早く!
0:(ケースを開ける音)
依田:ど、どうですか…?
二尊院:…問題ないわ。ダイヤは無事。本物よ!
依田:そう。ならよかったわ。
全員:ナニッ!!
二尊院:キャッ!
稔土:おい、依田はどこだ!ダイヤが!
斉藤:くそっ!どこだ!
依田:あーっはっはっは!揃いも揃ってバカばっかりなのね!大丈夫?この国♡
斉藤:あっ、あそこ!二階の窓に!
稔土:逃がすな!追え!追えー!
依田:あっは!ここまで来て御覧なさいな!(外へ飛び降りる)
稔土:追えー!今度こそ逃がすな!
化野:警部サン!ボクの事忘れてナーイー?ネーネー刑事さんボクが行きタイー!
斉藤:くっ…!仕方ない…!行ってこい!
化野:ワンワン!キャハハハ!
斉藤:どいつもこいつも警察をなめやがって…!
0:(外)
依田:ほーんと、警察もバカ、探偵もバカ。…バカばっかりで張り合いがないわ。
化野:全く同意するよ、女怪盗さん。
依田:ッ!?
化野:ただし、オレは除いて貰うよう頼むぜ。
依田:…あら、なぜ貴方だけここに?
化野:怪盗ってのは、脱出ルートの探索には余念がないんだよな。アンタ、見回りに熱心なのはいいけどさ、一週間前から毎日ってのはそりゃ目立つぜ?
依田:あら…。じゃあ言わせて貰うけど、貴方、なぜ私に協力してくれたの?
化野:ん?なんのこと?
依田:とぼけたって無駄。貴方よ?館長をケースに向かわせる、私の発言を促したのは。
化野:なるほど?
依田:貴方の「もうとっくに来ている」そして私の「ダイヤは偽物」…この二つの発言がなければ、 館長はケースに向かわなかったわ。
化野:ふーん…。
依田:(銃を取り出す)ホールドアップ。…貴方、私に取り入る気なのね?おあいにく様。そんな安い女じゃないのよ、私。
化野:…ハッ、じゃ言わせて貰うが、オレの本当の名を知らねーな?
依田:知らないわ、「バケノ」さん。無名のバカ探偵なんて…。
化野: 手元見てみろよ?
依田:…!な、そんな、嘘!私のダイヤが…。
化野:ひゃはっ、ま、「普段の仕事」じゃ顔なんか見せないし、知るはずねーか!
依田:なっ…!その姿は!
化野:そう、「怪盗カルヴェロ」とは俺の事だよ。お見知り置きを、マイン・シュヴェスター?
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化野:ホーラ、チョット手を入れりゃコンナもんサ!どうヨ?コノ鮮やかな語り口!
斉藤:ちょっと待ってください!
化野:ん?ナニ?これ以上文句つけル気?
斉藤:銃向けないでください!文句もなにも、何勝手に展開変えてるんですか!
二尊院:そうですわ。貰った台本だと、依田さんがダイヤを盗んで、それを探偵の貴方が偽物にすり替えてましたのに!怪盗カルヴェロなんて聞いてませんわっ。
斉藤:大体なんですかカルヴェロって!今まで全員、名前からそのまま役名をつけてたでしょう!どっから来たんですか!
化野:エー、トリックスターと言えば道化師じゃナイ!チャップリン知らないノ?
斉藤:名前しか知りませんし、興味もありませんっ。
依田:え、えーとぉ…私は、いいと…思ったけどなぁ…。
化野:そりゃ、キミがここマデ実質主役だからじゃないノ?ざぁぁんねぇぇぇん!コレ以降はボクが主役だもんネー!
依田:ええぇえぇえぇ!!そ、そんなぁ、わざわざ言わなくてもぉ…。
稔土:おい、そりゃねえだろう!あんな思わせぶりな外国語使っといて!
化野:イヤイヤ、意味深な外国語はミステリーに必須でショ!それに、ちゃんと意味があるンだヨ!しばらくすると解き明かされる事になってるノ!依田サンは主役じゃないケド、準主役だシ…。
依田:どうせ私は噛ませ犬なんです…。
化野:話聞いてた?
斉藤:と、ともかく、自分の事しか考えてない展開の仕方はやめて下さい…。
化野:…ハア。ジャ、アンタがやってみレバ?
斉藤:…分かりました。では、僕がやってみせましょう。