私だけの靑蓋十字軍(スルマン・ド・モワ・ラ・クロワザー・ド・アズール)
稔土:今度のコンクール、ソロ候補は…二尊院!
二尊院:当然です。わたくしにはそれだけの力が有りますもの。
稔土:(モブ1)二尊院さん、流石だわぁ!
化野:(モブ2)入部以後ずっとソロを独占し続けてらっしゃるんですものね!物心ついた時からフルートを口に当ててらっしゃったって話よ!
稔土:(モブ1)それに比べて、依田さんときたら…。
二尊院:……。
0:(廊下にて。外に立ち尽くす依田)
二尊院:依田さん。
依田:ハッ…。二尊院さん…。
二尊院:如何なさったの?その格好…。
依田:…な、何でも有りません!
二尊院:冗談はよして。貴女、そんな程度の事でこたえるような器ではないはずだわ。それとも…わたくしの見込み違いかしら。
依田:そ、そんな…。それは、違います!
二尊院:じゃあ、わたくしと同じ舞台で戦ってから負けなさいな。不戦勝ほどの屈辱は無くってよ。
依田:ハッ…。
二尊院:コンクール。ソロパート選出品評会。そこで待つわ。必ず…いらして。
0:(去っていく二尊院。見送る依田)
依田:…私は…でも…。
稔土:依田くん?
依田:ハッ…!ネ、ネ、ネン…。
稔土:…その格好は…ッ!ゲフッ!
依田:稔土先輩ッ!?発作が出たの!?
稔土:…ハァ、ハァ…。そんなに非道い(ひどい)格好…。僕の可愛い依田くんに…。そう思うと、つい、ね…。
依田:…ごめんなさい、稔土先輩…ッ!私のせいで、部活も、先輩も、生死の境を彷徨う羽目に…ッ!おまけに、こんな、格好じゃ…ッ…。フ、フルートもッ、こんな…ッ、こんなッ、これじゃッ、あたしッ…。ヒグッ…。
稔土:……依田ッ!(抱き締める)
依田:!?や、よしてくださッ、きたないですッ、
稔土:俺が…ッ、俺が不甲斐ないばかりに…ッ!こんな…ッ…。
依田:…稔土…先輩…。
0:(間)
斉藤:作戦は…うまくいったようだね、化野君。
化野:…依田さ…依田の、居ない隙をついて、楽器と、本番の衣装を、堆肥に埋める…。
斉藤:そうだ!ククク…見たかね、化野君!あの女が廊下中に腐敗臭と汚物をまき散らしながら歩くところを!いやはや…実にケッサクだった!これで、今度こそ吹奏楽部の命運も尽きたに相違ない!
化野:会長…。僕は、あなたが、恐ろしい。
斉藤:何だと…?君は、私の方針に文句があると言うのかね?
化野:ッ…!いえ…。
斉藤:フッ…。君は、随分と依田に肩入れしているようじゃないか。
化野:それは…!違います!依田ごときを始末するのに、稔土先輩までも巻き込まなくともと…。
斉藤:フハハハハッ!そうか!なるほど!しかし…可哀想だが、稔土は依田と関わったことを運の尽きと思ってもらわねばな。さて…最後の仕上げだ。化野、行きたまえ。
化野:はっ…!
化野:(僕は…どうすればいい…?依田君の懸命な頑張りは、会長の私怨に絶たれてはならないのに…!アア…稔土先輩…。僕の偉大なる友よ…。どうか力を…。
稔土:(ナレーション)それぞれの葛藤と愛と憎しみが、次のコンクールで絡み合う!暮射弧音学院の窓辺には、最後の一葉が揺れていました…。
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稔土:よし、完璧!
斉藤:ごめんなさい、どのへんが!?
稔土:あん?完璧だったろ?少女漫画の基本構造はちゃんと抑えてるしな。
二尊院:それは、そう…かもしれませんけど…。
依田:世界観が…そのぉ…ちょっ、と…。(小声)私…ずっとゴミまみれだし…。
化野:だよネ。何コレ?いつの少女漫画?
稔土:少女漫画の全盛期の頃だけど。
化野:なんでボクとオマエが裏声で喋ってルワケ?
稔土:少女漫画に説明モブは必須だろ?
二尊院:(小声)化野さん抑えて!口調がやさぐれてきてますわよ…!
化野:あ、ソウ?ごめんネ~。
斉藤:僕の性格、最悪じゃないですか…。
稔土:そりゃあ、お邪魔キャラってのは必須だしな。
二尊院:ああもう!あたくしも早くヒロイン演りたいですわっ。なぜいつまでも依田さんがヒロインですのっ。
稔土:使いにくいからに決まってんじゃん!はーあ…。仕方ねえから、次はお前でいいや。
二尊院:いよいよですわね。あたくしが夢のあるストーリーをお見せしますわ。