自己紹介
二尊院:あたくしたちは物語の登場人物。
斉藤:僕たちは、作者の存在なしでは、存在できない。
依田:私たちは、作者が気に入ればいつまでも大切にされる。
稔土:俺たちはいつでも、光を浴びて舞台に立ちたいと思っている。
化野:ボクタチは、主人公になりたカッタ。
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二尊院:うーん、ここは…?暗くて何もありませんわね。あたくしはなぜここに…?
二尊院:…あ、あそこにドアがありますわ。
0:(ドアの前まで駆け寄る)
二尊院:このドアの向こうに、きっと何かあるのですわ。
0:(ドアを開ける)
稔土:お、やっと来たか。
二尊院:ひいっ!仁王像ッ!
稔土:うわ、バレたか…警備を縫ってやっとここまで脱出してきたのに…。
化野:なるほどネ、本物の仁王像だったらその顔のマズさも納得だネ。
稔土:いやいやいや!色ついてるじゃんか!否定しろよ…。
二尊院:あ、あの…。
斉藤:ちょっと、漫才始めるのはやめてくださいよ。
依田:そ、そぉですよぉ…。あんまり仲良くしてると、後が辛いじゃないですかぁ…。
二尊院:あのー。
斉藤:まあ、たしかに、僕たちは敵同士ですから、馴れ合い過ぎるのも…。
化野:敵同士!気合入れすぎじゃナイ?
二尊院:あの!
稔土:ん?あー、ごめんね。
二尊院:あの、ここは一体…
依田:あなたもしかして、ここに来るの初めてですか…?
二尊院:え、ええ。そうですわ。
斉藤:ああ、通りで…。
化野:新キャラじゃナイのォ?
二尊院:え??ええ…えっと…
斉藤:ここにいる全員そうなんです。声劇のシナリオのために作り出されたキャラクターということを自覚しています。
依田:あ、あのぉ…これぇ…。
二尊院:手紙?えっと…
二尊院:『皆様こんにちは。作者です。
二尊院:皆様は次のシナリオの主人公候補です。皆様で、主人公を一人決めてください。
二尊院:方法はなんでも構いません。
二尊院:それでは、機会があればまた。』
二尊院:なんですの、これ。
稔土:見ての通りだよ。俺たちの中から、主人公を一人選ばないといけないんだってよ。
化野:そーそー。文字通りこれでやーっと役者が揃ったってわけだよネ。
二尊院:そうなんですの。
斉藤:とりあえず、自己紹介でもしますか。
依田:そ、そうですね。お互いのこと、全然知りませんし…。
稔土:んじゃ、俺からいかせてもらうぜ。
稔土:俺は稔土。こういう顔だから、今までの出演は悪役ばかり。武闘派っぽいから殴り合いばっかさせられてるけど、本当はそういうのしたくないんだよ。むしろ自分の部屋で少女漫画とか読んでる方が性に合ってるっていうか…。
依田:えええ……ありえなぁい、強そうなのにぃ…。
化野:ホントだよネェ。釘バットで満塁ホームランかっ飛ばしそうな顔してるくせにさァ。
稔土:そこは否定できないけどさあ…。とにかく、俺はもう殴り合いとかしたくないの。もっと繊細で華麗な唐紅の恋物語に耽溺したいの!
依田:え、えっとぉ…、どう、いう、意味…?
二尊院:後半送り仮名多すぎて意味不明ですわよ!
斉藤:僕は無理だと思いますが、あなたはいかがですか?
化野:無理に決まってんジャン!あのサ稔土クン、鏡って知っテル?日頃の身だしなみから自分のレベルまで嫌ってほど理解させてくれる、有り難ーい発明なんだヨォ?
稔土:(ムッとしながら)へえ、ウチ帰ったら買ってくるわ。
斉藤:え、えーっと…。じゃあ、稔土さんの自己紹介はそれくらいにしておいて…次はあなた、お願いします。
化野:あ、ボク?ボクは化野。
化野:今までの出演は…マ、ソコソコかナ。主役も何回かやったことあるヨ。
二尊院:まあ、すごい。
化野:デショ?だってボクちんだもン♪
依田:その自信はどこからくるんですかぁ…羨ましいぃぃ。
化野: ボクはボクをきちんと褒めるのサ。アンタもその方が得するヨ?座右の銘は、「自分に嘘つくくらいなら他人に嘘つけ」デース。
稔土:堂々と俺らに嘘つくって宣言してねえか、それ。
化野:ノープロブレム!ボクの言葉は基本的に信用に値しナイ、ボクはプロの嘘つきなんダカラ!『トリックスター化野』って呼んでヨネ!
二尊院:いえ、お断りしますわ。
化野:ええーっ、カッコいいと思うんだけどナー。
斉藤:…じゃあ次は、あなた。お願いします。
依田:えぇ!わ、わたしですかぁ…?
斉藤:はい、お願いします。
依田:…依田…です。
依田:今までは、脇役として少し…出たくらいです。主役になったことは…ありません。どうせ、私に主役なんて無理なんですよぉ…。
斉藤::まだ始まってもいないんですから、諦めることはありませんよ。
依田:いえ、私は人気も人望もないですし、私のことなんてどうせ誰も気にしてませんよぉ…。
稔土:お、おい、大丈夫か?
依田:っていうか…なんで私がこんなところにいるんですかぁ?いらないですよねぇ?私なんて…ああ恥ずかしいぃ…。穴掘って埋まるのでシャベル下さい……早くぅ!!
二尊院:ちょっと、ほんとに堀りはじめましたわよっ。というか、どこからシャベルが…。
斉藤:この空間では、基本的には何でも僕たちの思い通りにできるようです。欲しい物を言えば手に入りますし、欲しい景色を思い浮かべればその通りの景色になるんですよ。
化野:ヒャハッ、これがホントの『墓穴を掘る』だネェ!ジメジメしてて薄暗いアタマに入ってるモンだから脳みそに虫が湧いてるんだネ、きっとどっかのチーズみたいな見た目の脳みそなんだろうナァ。キモチワルイ~!おーい安心しなヨ、今から防虫剤入れてアゲるかラ~。
依田:っちょ、なん…わっぷ!なんて早口…。
二尊院:化野さん!なんて事を仰るの!
化野:エー、だッテ~。こうしとけば秋には立派に実るかもしれないジャ~ン。
斉藤:ハイハイ‼次行きましょう‼じゃあ、あなた、お願いします。
二尊院:あたくしの番ですわね。二尊院と申します。
二尊院:今回が生まれて初めての出演になります。従ってキャリアはありません……が、あたくしには二尊院家という力が有りますのよ!主役は間違いありませんわ!
化野:…現代アートみタイ、気持ち悪~イ。
二尊院:…なんですって?どういう意味ですの?あたくしは完璧のはずですわ。
化野:そういうトコ!そこまでペラペラのキャラな癖シテ、無駄に自信たっぷり。テンプレに喋らされてるみタイで不安になるゥ。
稔土:まあ現代アート云々(うんぬん)がどういう意味かはおいといて…今どきそういうお嬢様キャラは少女漫画でも流行らないっていうか…。もっと個性がいるよな。
依田:…あなたが言うと、説得力がありますねぇ。
斉藤:まあ、生まれたばかりの頃はキャラを模索するものですからね。気にすることはありませんよ。
二尊院:あたくしは生まれた時からこの性格ですわ!?何といわれようと、この性格は貫きます!
化野:…あァ、そう。まァ、アンタが何をどうしようが自由だけどサ。くれぐれもキャラに飲まれないようにしナヨ。
斉藤:えっと、じゃあ最後は僕ですね。
斉藤:斉藤と言います。今までの出演回数はかなりありますが、モブキャラばかりで、主役はありません。今回こそは、主役になれるように頑張りたいと思います。
二尊院:…それだけ、ですの?
斉藤:え、まあ、そうですけど。
依田:フツーですねぇぇ。
稔土:地味だよな。そりゃ主役にはならねえわ。
斉藤:自分でも分かってますよ、それくらい。気にしてることなんですから、あまり深く突っ込まないでくださいよ。
化野:…つまんナイヤツだナ~。塩。
二尊院:どういうことですの?
化野:だって、塩って塩辛い以外の味がないジャン?そういう事だヨ。
斉藤:それって引き立て役でしかないってことですか?
化野:…へー、自覚あるんダ。
斉藤:だからありますって!今回は頑張ろうと思ってるんですから、何度も言わせないでください。
依田:存在感がないんですねぇ。可愛そぉ…。シャベル使いますかぁ?
斉藤:いりませんっ。