第五節 開戦
スマフォで書いていたら行間が… 自宅のパソコンで覗いて意外とスカスカ
夜明け前。幾つもの見張り櫓から、笛が付いた矢が飛ばされ、村の至る所に配置された板木が叩かれる。
敵が来た。
村の住民は港に集まり、櫓の者から話を聞く。船団がこちらにやって来る。先行して来るのは海賊船、中型1隻、小型4隻。残りの船影見えず。
前もって取り決めていた作戦通り、戦船3隻のうち、1隻は港で待機、残り2隻は60名が乗込み迎撃に向かう。
海賊を辞めて長い期間が経っている筈なのに、連携の取れた素早い出港、「隠れて海賊続けていなかったか」と、つい呟いてしまい。
村長から、「それはないです」と真顔で返事された。
こちらの戦船には、各々回転式 大型弩砲が船首と船尾の2機取り付けてある。欲しかったのは船首側だが操舵のバランスが悪いので船尾にも取り付けた。
船は重くなったにも関わらず、村人たちは息の揃った操作で凄すぎるスピードを出している。
敵が射程距離近くになると、船長の「迎撃準備」の合図で帆柱を海に捨て、船を左側に急旋回させ止めた。
「撃て」の合図で、船首、船尾とのバリスタから同時に矢が放たれた。こちらに向かって来る先頭の敵中型船の櫂を漕ぐ兵に命中、貫通、貫通は続いて一本の矢が4、5人に致命傷を与えた。
「転身、次弾装填」の掛け声と共に船は左回りで島の方角に進路を変え、船を進み始めた。このバリスタの弱点は次弾装填までに時間がかかり過ぎる事である。
船首から「装填完了」、続けて船長の「転身」の掛け声で、船は左周りで再び敵に向かい、追って船尾の「装填完了」の声が聞こえた。
攻撃を受けた敵中型船は速度が落ち、小型船4隻が前方に出てきていた。
距離を見計らって、船長の「迎撃準備」の声と共に船は、左側に急旋回、「撃て」、「転身、次弾装填」、「装填完了、転身」この掛け声を4ターンほど繰り返すと、敵5隻はもう櫂を漕ぐのを止めていた。
船長が、「微速前進、近戦準備」と唱えると、敵中型船の真横に船を着け、総員が背中に殻っていた、盾と弓を敵に向けた。
「抵抗するな、今回はお前たちの負けだ。大人しく捕虜になるなら命までは取らない。」
領主マルグレーテから、敵が戦意を失ったなら捕虜として拿捕する様に命令を受けているからである。
敵を拿捕する行為はリスクが伴う行為だが、最後まで戦うと味方にも死人が出るかもしれないという配慮である。
その頃、島の方では、櫓から敵本体の船団が見えたと連絡を受けていた。全ての敵船が島に向かってくる、最悪のシナリオである。
私は、
「執事、いや近衞中将、後は頼んだ」と叫び、
港に残していた戦船のバリスタの矢を半分火矢に積み替え、私が乗り込んで出発した。
「急げ、救うぞ」
つい声に出でしまった言葉が船員に伝わり船足を早くしていく。このスピードなら間に合うかもしれない。
先行船と戦った者たちは敵兵を縛り上げる事に専念しており、敵本体の船団が近づいている事に気がついていなかったが、見張りの1人が気付き、「姫が来る」と大声を上げた。
事前に取り決めていた符号である。
慌てる事なく、敵兵を縛り上げ終え、拿捕した敵小型船2隻を含め、船4隻に兵と捕虜を配分、死んだ敵兵は海に帰した。
速度は落ちたが、船4隻は島に向かって船を漕ぎ始めた。
後方に敵本体の船団が近づいてくる。確実に向こうの方が早い。
後尾のバリスタで足の速い小型、中型船を撃つて時間を稼ぐが、大型船は櫂を漕ぐ兵士が船体で守られているため効果がない。
小型、中型船は速度を落として、大型船の後ろに隠れる、大型船は帆の力も借りて船足を早め、左右を挟む形で追い着いてくる。
大型船に横に並ばれたら矢衾にあって終わりだ。
そう思った時、領主の船とすれ違い、猛スピードで右敵大型船の左側にスレスレに突っ込んで行く。
領主の掛け声で、領主の船全員が櫂を引っ込め、盾で体を覆う。酷い音を立てながら、敵大型船の櫂を折って領主の船は止まった。
敵大型船のうち、衝突した1隻は左側に曲がる形で急激に速度を落としてゆく。
領主の次の掛け声で、領主の船は大型船から離れ、島に向かって漕ぎ始めた。
領主の船は、移動しながら、帆柱を立て、船尾のバリスタを組み立て直し、積み込んだ火矢で襲い掛かる敵大型船の帆柱に打ち始めた。
何発か帆柱にあたり、消化にあたるため、敵大型船の船足が遅くなって来た。
風の力も借りて、領主の船はとんでもない速さで味方の船に追い着いた。
笑う暇はないが、誰かの笑い声、領主の笑い声が聞こえる。
笑い声は感染した様に広がり、全員が笑い始め、櫂を漕ぐ力が増し、船足を早くした。
船足を止めたヴィンタシュトウの海賊船団を追い越し、アナルシアの上陸船9隻が速度を上げて向かって来る。
私たちが、島の港までもう少しというところで、
上陸船に火の玉が落ちて来た。
投石器である。油が詰まった陶器製の壺に火を付けて飛ばしているのだ。他にも岩に油塗れ布を巻き付けた火球も用意してある。急に進路を変えられない図体のデカイ上陸船は格好の的である。
港に取り付けた投石器3機が次々と火の玉を降り注ぎ、敵船は消化に追われ射程距離内で船足を止めた。
私たちは港まで逃げ込み、補給、要員交代、簡易的な修理を行い出港準備を整える。
投石器の玉が切れ始める頃、私たちは5隻の戦船で撃って出たが、アナルシアの上陸船は既に穴だらけで焼け落ちるのも時間の問題だった。
私たちは、上陸船を素通りして次の標的に向かう。次の標的は、残存するヴィンタシュトウの海賊船である。
敵は大型船2隻、中型4隻、小型4隻である。まだまだ動ける兵数で言えば敵の方が多い。
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