6.初戦の後
「光のチカラ……」
ツキノが考え込む仕草を見せた。
「そんな事より、回復した方がいいんじゃないか?」
「あ、そうだった」
ツキノはディバイスを胸に当て、「ケア」と唱える。するとツキノの服や体の傷はみるみる治っていく。
「やっぱ凄いな、それ」
「うん?それって?」
「いや、ケアだよケア!その回復の技!マジでなんでも治せんじゃん」
「…まぁ。…うん。…そうだね。…大体の物は治せるかな」
ダメだ。またあの無気力な対応になってしまった。さっきまでは結構感情を表に出してた様な気がしたんだけどなぁ……。
ツキノの怪我が治った所で、そのツキノは俺をじっと見つめる。
「……………」
「……ん?どうしたんだよ。そんなに見てきて…」
「いや、なんだかヒビノ君、疲れてる?」
「実はな……割と疲れてる……」
俺は先の戦いで派手に動き回った。それのせいで体の疲労は結構溜まっている。がしかし本当の疲れの原因は……
「ココロのチカラを使い過ぎたんだね」
「そうっぽい……」
何度も言うが俺はココロのチカラについて、ディバイスを手にした時全て把握した。ココロのチカラを使い過ぎたというのは………
「ココロのチカラは無限じゃない。『神経を擦り減らす』という言葉がある通り、ココロのチカラだって擦り減っていく………」
「そうだな………。なんだか、気疲れした感じなんだけど、体もだるいって感じだな……」
ツキノが説明した通りだ。
ココロのチカラは技を使ったり、武器を出したり、拳銃から光の球を出したりすることが出来たり、ディバイスを身に付けているだけで、"身体能力が上がる"というのも、ディバイスを手に取って理解した。しかし、技を使う時と銃から光の球を出す時はココロのチカラを消費する。
しかし、使っていけば使っていくほど、ココロのチカラの総量は多くなっていく。
マラソンで例えると分かりやすいかもしれない。
最初は全然体力がなかったけど、毎日走って行くうちに段々と体力が付いてくる。そして最初走ったよりも圧倒的に体力が付いている、みたいな感じだ。ココロのチカラも大体そんな感じ。
「早くあのお店に戻ろうぜ。お前のバックとか置きっぱにして飛び出してきちゃったし………」
「あ、そうだった」
「そ、そうだったってお前……」
「ごめん。あの時は灰霧が出たと思って、それで頭がいっぱいになってた…」
「そ、そうか……」
まぁ、その予想は当たってた訳だし。てゆうか俺もバックは気にしてなかったからなぁ……。
「お互い様か……」
「え?何が?」
「えっ!あ、いや、2人ともバック忘れたんだなって思ってさ……」
「あぁ、それでお互い様なんだね」
「そそ!そういう事!さ、早く戻ろうぜ」
俺は座っているツキノに手を差し伸ばす。
「…………………」
「ん?どうしたツキノ?」
「…………いや、何でもない」
ツキノは俺の手を掴む。俺はその手を引っ張って起き上がらせる。
「よし、行くか」
「うん、そうだね」
俺らは人混みの方へと向かう。
「うおおおお!お前らよくやったぜ!!」
「ありがとな!!兄ちゃんに姉ちゃん!!」
人混みにいる人達は俺らを歓迎ムードで待ち構えてくれた。
「ハハハ、どういたしまして…」
俺は疲れてる体で人混みに対して言う。
「………どういたしまして」
ツキノも素っ気無くそう言う。
「いや〜兄ちゃん!お前すげえんだな!」
そう言ってきたのはさっき俺に色々説明してくれたオレンジ色のターバンの人だ。
「あ、さっきは色々とありがとうございました!」
「いやいや、いいって事よ!つうかお前、あんなに強かったんだな!」
「あぁ、それはその……さっき強くなったって言うか……」
「ん?さっき強くなった?……あ、そういえばさっきお前の頭上になんか変な物落ちて来てたな!」
「あ、はい!それですそれ!それがさっき強くなった原因で………」
「…ヒビノ君」
俺とオレンジターバンの人が話している時、ツキノが俺に話しかけて来た。
「早くお店に戻ろう?」
「え、あ、あぁ、そうだな……」
ツキノが話を遮ったのに少し戸惑いながらも、俺は質問攻めしてくる人々の間を通り抜ける。
それはまるで大勢の取材陣に囲まれながらもその中を通って行く問題を起こした議員の様だった。
そして、俺らは人混みを通り抜け、お店に急ぐ。
急ぐ際の道中で、
「ねえ、ヒビノ君」
「ん?どうした?」
「正直、ココロのチカラの事は余り人に話してほしくないんだ。まあ、君には話しちゃだけど……」
「それはどうして?」
「後で………元の世界に帰ったら説明する」
これからはなるべく文字数を短くして、毎日投稿していこうと思います。出来たらですけど。