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異ろんな世界へ行く  作者: 本郷隼人
一章  剣と魔法のファンタジー世界へ
5/39

4.覚醒 4人目

主人公覚醒です。

 外からサイレンの音が鳴り、アナウンスが流れた。


「な、なんだ!?」


 ………南大正門?てゆうか、モンスター!?緊急事態って一体どう言う事だ?


 俺は月野の方を見る。月野は店のガラス窓から外を眺めていて無反応だ。

 月野の表情はいつになく真剣で、草原でオオカミと対峙した時に見せた表情を彷彿とさせる。


「南大正門に出現………。攻めてきたということか」


 そう言ったのはカウンターのテーブルを挟んで向かい、厨房にいる男性店員だ。

 この男性店員……見た目からしてマスターと言おう。マスターは皿を拭きながら真剣な表情でそう言った。


「えっと……攻めてきた?ってどういう事なんですか?」


 俺はマスターにそう尋ねる。月野とは違く、マスターは俺の方を向き返答してくれた。


「お客様、冒険者の方々ですか?今のは敵国やモンスターの群れなんかが攻めてきた時の為の"魔道具"を使ったアナウンスなんです」

「ん?魔道具?」


 また聞いたことのない単語が出てきたな……。


「………ご存知ないですか?マナを溜めたクリスタルを埋め込んだ国中にあるメガホンから、発信者の信念を音にして発信する魔道具です」

「は、はあ……そ、そうですか……」


 マナ?クリスタル?信念を発信?聞いた事のない単語のオンパレードで全く意味が分からなかった俺だが、それを聞いて話を止めるのは忍びないので、聞き返すのは止めておいた。


「最近は他の国々とも関係は良好で戦争も無いですし、ここ一帯は比較的モンスターのいない安全な地域のはずなのですが……一体何故……」


 マスターは不思議そうな表情を顔に出し、考え込む。

 そして月野はスクールバックの中を漁り、何故か持ち手のある手鏡を出した。


「灰霧の反応……しかも多い。さっきの灰霧か……」


 そう呟いた月野はマスターを見て尋ねる。


「南大正門はどこにあるんですか?」

「はい…、目の前の第2大通りを左に真っ直ぐ進み、4番目の脇道を右に行けば第3大通りに出ます。第3大通りを出て右を向けば見えて来ますが……」

「ありがとうございます」


 そう言うと月野は急いだ様子で手鏡をバックに突っ込むと、そのバックを持たずに一目散に店を出で言ってしまった!


 あんなに慌てながら店を出て行って……。まさかそのモンスターが出たって言う所に向かったのか?


 そしてアイツの真剣なあの顔……。まさかあの灰霧って言う化け物が関係しているのか?正直、何が何だかよくわからないが…………………なんだかほおってはおけない。


「マスターさん!すぐに戻って来ます!だからお代は後で払います!………えっと…多分…アイツが……」

「あなたも行くのですね?」

「はい!必ず戻って来ますので!」


 俺はそう告げ店を出る。

 左を向くが月野の姿は無かった。くそッ、どんだけ速いんだアイツ……。とにかく目的地に向かおう。そう俺は駆け足で道を走りだす。


 さっきマスターが言っていた道を通っている途中俺は周りの景色を見た。


 この街…いや、国とマスターは言っていたか。どうやら周りは大きな壁で覆われており、国の中からでもよく見える。

 行き交う人々はみんな俺が向かう道とは逆を必死に走っている。南大正門と言う所から逃げて来てた人達なのだろうか。


 俺は4番目の脇道を曲がり、第3大通りと呼ばれる道に出る。右を向くと大きな門がみえ、扉は全開に開いていていた。俺は急いで門を潜った。そこには人集りがあった。逃げている人たちも居るというのに、怖いもの見たさで見物しているのだろうか……。

 俺は人集りの中をかき分け前の方に出る。


 視界にはまたしてもあの草原が広がっていて、それにゴツゴツとした小岩がチラホラとあった。






 そして、さっき月野が灰霧と言っていたか角の生えているオオカミの群れと、()()()()()()()()()とその近くで横たわっている人達がいた。


 モンスターと戦っている人達もいて、攻撃を仕掛けていたが、状況は素人目の俺にでも分かるぐらい最悪だった


「「「中級魔法!!ミディアム・フレア!!!」」」


 ツバの大きな帽子を被り、杖を持った魔法使い風の女性達がそれぞれ杖を()()()()()()に向けて叫ぶ。

 女性の目の前には炎の球体が出来、肥大していき、その女性ほどの大きさになる。

 炎の球体はその熊にめがけ直進、直撃する。


 しかし、


「グオオォォォォォォオオオッッッッ!!!!!」

「…き、効かない!ミディアム・フレアが!全く効いてない!!」


 熊に炎の球体が当たった瞬間、球体は一瞬で蒸発、跡形もなく消える。が、当の熊はピンピンしている


「うぉぉぉぉおおおッ」

「うおりゃあァァ!!」


 兜を被り、鎧を全身に身に纏う騎士の様な見た目をした人達が剣を振り上げ、あの角を生やした灰色の霧に包まれているオオカミに振り落とす。

 だが、岩を叩いたかの様な金属音がして、斬撃が弾かれる。


「ッ!?なんだこのデビルウルフ、なんて硬さなん……うわぁッ!」


 1人の騎士が、オオカミに反撃を喰らう。オオカミはその角で突進し、吹き飛ばす。


「くそッ!なんで攻撃が通らない!しかも何だこの霧は、何故デビルウルフに纏わり付いている!」




「コレは一体………。」

「………日比野君!」


 俺が驚いていると、人混みの中から月野が出てきた。


「どうしてここに………」

「お前が急に店を飛び出すから、気になって付いてきたんだよ」

「そっか……そういうことか……。ごめんね、急に飛び出しちゃって」


 月野は俺に心配をかけたと思ったのか謝ってきた。


「いやいや、別に謝るほどじゃ無いって。………てゆうかさっきのオオカミの他に、あのデカイ熊も灰霧って言うヤツか?」

「うん、アレもそう。灰霧はその世界の生物に擬態するって言ったよね。あの熊やオオカミもこの世界の生物を真似て擬態している灰霧だよ………」


 なるほど、この世界にはあんな奴、モンスターと言われていたか……?そいつに擬態してるって事か。


「灰霧はココロのチカラじゃないと攻撃が通用しない。だから剣や魔法を使っても倒せない」


 ………魔法というのはさっきの炎の球体のことだろう。多分月野が俺の傷を治した、あのココロのチカラとはまた別の物と月野はさっき言っていた。しかしこの世界には魔法なんてあるのか。まあ世界観的にありそうな雰囲気だが………。



 オオカミはざっと15から20匹ぐらい居て、かなり数が多い。

 熊はざっと9〜10mは有るだろうか。まるで怪獣だ。


「だから日比野君、君はここで見てて」

「えっ、ちょっ!?月野!?」


 月野はそう言うと戦闘の場所に向かって走り出した。


 無茶だ。あんなの数の灰霧、いくら月野が強くても無理があるだろ。


「……………………」


 月野は戦闘をしている場所からある程度の距離で片膝を着いて止まり、そして右手に例の拳銃を出した。


「連射モード………」


 そう言うと月野は拳銃をリロードするかの様に、スライド部分を引いてスライドさせ、群れに向け引き金を引いた。

 銃口からはあの光の球が、今度は連発して出てくる。

 光の球は、マントや甲冑、騎士の格好をした人達に襲い掛かっているオオカミ達に次々と当たる。


 オオカミ達は次々と断末魔を挙げ、霧となって消えていった。


「ナニっ!」

「ッ!攻撃が効いている!」

「皆さん、ここは私が戦います。皆さんは怪我人を担いで下がって」


 戦っていた人達はみんな月野の方を見る。


「君はいったい………」

「……いいから早く」


「………ここは任せた方がいいな。」

「なっ、隊長!あの少女1人にこの場を任せるんですか!?」

「今の攻撃を見たろう、我々の攻撃が通じないのに、()()()は通じた。あの特殊なデビルウルフとキンググリズリーと戦えるナニか秘密が有ると見た!!……ここは彼女に任せて、我々は怪我人の救助と回復を優先する!!」


 騎士の格好をしたリーダーっぽい人がそう指示をすると他の騎士の人達はその指示に従い、地面に倒れている怪我人を担ぎ、こっちの人混みに向かってくる。


「…よし、俺ら冒険者もあの嬢ちゃんに任せて一旦引くぞっ!嬢ちゃん任せた!」

「お願いねお嬢ちゃん!」

「任せましたぞ!」


 そう言いながら、灰霧と戦っていた人達……冒険者も戦の前線から退く。


 月野はオオカミの灰霧の群れに銃口を向け、引き金を引いき光の球を連射する。高速で発射されたその球は、次々とオオカミの灰霧に当たり、体が霧となり、蒸発して消える。


「7体撃破、残り約15体」


「うおおお!!すげぇええ!!」

「なんで…、アタシ達は傷1つ付けられなかったのに……」

「デビルウルフが消えた!?とゆうか何なんだ、あの子が持っている武器は、見た事ないぞ………」


 人混みの中から、冒険者の中から、騎士の中から……。様々な所から様々な意見が飛び交うが、みんな月野に対して驚いている。かく言う俺もそのうちの1人だ。


「すげぇ………すげぇよ月野!!これなら行ける!!」


 オオカミの灰霧は月野に次々と迫り来る。角で突進をするオオカミを次々と撃ち、倒していく。


「2体…3体…」


 しかし、


「グァオォォォォォォオオ!!!!」


 ここまで静かだった熊の灰霧が、雄叫びを挙げながら四足歩行で月野に向かい走ってきた!そのスピードは凄まじく速い!

 熊の灰霧は月野に近づき、走ってきた勢いで飛びかかる!だが流石は月野!瞬時にバックステップで回避し、なんとバク転をしながら距離を取る。バック転する時、月野は手元の拳銃を手から消し、両手で手を着いていた。

 そして、


「…………くらえ」


 何回かバク転をした後、すかさずライフルを手に出し、熊を狙い光の球をぶっ放す。光の球は高速で熊の頭に直撃した。


「よしっ!ナイス月野!」


 しかし……


「ガアァァァァァアアアアアアッッッッ!!!」

「……………………!」


 熊の灰霧はピンピンとしていた。

 月野の表情には驚きの文字が出ている。


「クソッ!やっぱりキンググリズリーの頭は硬ぇな……!」

「硬い?どうゆう事ですかそれ!?」


 俺は近くに居たデカイハンマーを持ち、胸当ての甲冑とオレンジ色のターバンをした女の人に話しかけた。



「なっ、なんだ兄ちゃん急に……」

「お願いします!教えてください!」

「ったく……。キンググリズリーの頭はめちゃくちゃ硬くて、剣や斧じゃ砕けちまう。魔法でも通じない、常識だろっ?」


 オレンジターバンの人はそう呆れながら喋る。

 そっ、そうなのか…。だから頭に直撃してもビクともしないのか。



 熊は月野に近づき、前足で月野に連続して爪を振るって攻撃する。その猛攻を月野は必死に避ける。


「クッソ!初級のデビルウルフはともかく、なんで中級のキンググリズリーまでいんだよ!」

「初級?中級?それも教えてください!」

「……一体なんだよ兄ちゃん………」

「お願いします!」

「…はぁ。初級、中級、上級、特上級にモンスターの強さが分かれててっ!初級は1匹に対して冒険者1人、中級は5人分の強さがあんのっ!そんで、キンググリズリーは中級でも飛び抜けてて強くてっ!アイツに殺された強ぇ冒険者が何十人といんのっ!」

「なっ、なるほど…」


 月野はそんなのと戦って………….




 そして、


「……きゃっ!」


 月野が熊の爪を振る攻撃をモロに受けてしまった!月野は吹き飛び、小岩にぶつかる。小岩は砕け散り、砂埃が舞う。


 砂埃の中から倒れている月野が現れたが、すぐに体を起こす。が………


「ガァァッ!!」

「………ッ!」


 起き上がる月野に対してオオカミ達が突進してくる。月野は間一髪で避けている。しかし、見た感じ満身創痍だ。無理もない。あんなデカイ熊の攻撃受けて小岩にぶつかったんだ。生きてるのが不思議なぐらいだ。


「ッ!!月野ッッッッ!!!」

「あっ!ちょっと待て兄ちゃん!!」


 人混みから飛び出そうとした俺をオレンジターバンの人が腕を掴んできた。


「なにしょうとしてんだ兄ちゃん!まさか、あそこに突っ込むんじゃないよな!?」

「俺のクラスメイトなんです!助けないと!」

「無茶だ!あんなとこ兄ちゃんが言っても、すぐ死ぬだけだ!」

「っ!!」


 その通りだ。なんの力も持たない一般人の俺がでしゃばっても、何もできない。



 そして………、熊が月野に向かって体当たりを仕掛ける。満身創痍の月野はそれを避け切れない。


 月野は吹っ飛び、宙を舞い、こちらの方へ飛んでくる。月野の体は地面を水切りの様に跳ね、ザーッッッッと滑る。


「月野ォォ!!」

「おい!兄ちゃん!!」


 俺はオレンジターバンの腕を振り切って走り出し、倒れている月野に駆け寄る。月野は傷だらけだ。


「月野っ!オイ月野大丈夫か!しっかりしろ!」

「ひ…ヒビノ…くん……」


 月野が俺の顔を見る。月野の顔は疲労感が漂っている。息切れも激しく、それにさっき熊から受けた爪の傷や無数の擦り傷………とても戦える様な状態じゃない…。


「にげて…はやく……わたしに構わないで……はやく……」

「…ッ……月野お前……」

「私は…、私は大丈夫……」


 そう言うと月野はなんとその体で立ち上がり、ライフルを出して敵に銃口を向ける。

 俺は周りを見る。すでにオオカミ達が俺と月野の周りを囲んでおり、とても逃げ出せる状態じゃなかった。


「私が灰霧(あいつら)を倒さないと、不明病の患者が……。それに攻撃が効かないこの国の人達までやられちゃう。」

「……ッ」


 さっき月野は『灰霧はココロのチカラじゃないの倒せない』と言っていた。騎士達や冒険者達の攻撃が通じてないのを見て、それは理解していた。


「大丈夫……大丈夫だか……うッ…」

「月野ッ!」


 だが、月野は脇腹を押さえ、片膝を着いてしまう。


「大丈夫、大丈夫だから……あなた達は私が護るから……だから大丈夫」


 そして、月野は虚な、しかし覚悟を決めた目と声でこう言った。


「私はこの身が朽ちても、絶対に倒してみせる!」


 ………コイツ、こんなになってまでもあんな化け物達と戦おうとしている!

 自分しかいない、護れるのは自分しか。そう自分に言い聞かせて、傷だらけになりながらも、ライフル両手に戦おうとしている!

 なんてやつだ、今にも死にそうだってゆうのに!


 助けたい。助けないと。

 でもどうやって?俺は何も無い。魔法なんか使えるわけがないし、武器も持ってない。どうしようもできない。



 いや、魔法が使えないからなんだ。武器がないからなんだ。月野は満身創痍なんだ。もう戦えない!戦っていい状態じゃないんだ!


 なら、ならどうすれば…………


 そう思った時、俺に1つの感情が現れる。





 俺が、護ればいい。俺が、月野や国の人々を護れば………。


 護る?護れるのか?俺がか?何にも無い俺がかよ?一般人で、魔法も、武器も何もない俺が?



 …………いや、でも、それでも、護りたい。俺は護りたい。みんなを、月野を。



 俺が………俺が護りたい。俺が月野を、国の人達を護りたい、そんな感情が"ココロ"の中を湧水の様に湧き上がり、そして満たしていく。ココロを満たしていく。



 ………護りたい。いや、"たい"じゃない。そうじゃない。


 護る。俺が護ってみせる。絶対に。何がなんでもだ。何がなんでも護るさ。



 そう…………絶対………絶対に……………









 俺が絶対に護るッッッッ!!!!!!





 ―――――その想いが、護りたいという想いが、気持ちが、勇気と希望という名の心の湧水が、…………()()()が溢れ出す。




「………!?これは……!?」



 突然、突風が俺の周りに吹き荒れる。


 あの無表情な月野が驚くが、俺は構わず立ち上がり月野の前に立つ。


 突風は俺を中心にグルグルと吹き荒れる。まるで俺に力を、


「まさか……、ヒビノ君…!?」


 俺は右腕を空に突き上げる。


「ヒビノ君キミは……!?ココロのチカラに目覚めたの………!?」


 月野の驚きの叫びに俺は構わない。そして………


 空から、()()()()()()()()()()がゆっくりと落ちて来る。まるで立ち塞がる逆境に立ち向かえる力を、そして"勇気"と"希望"を与えてくれる様に、ゆっくり、眩い光を放って舞い落ちてくる。


 が、俺は驚かない。ディバイスが落ちて来ることを"予感"したからだ。


 俺はディバイスをゆっくりと手に取る。手にする。


 そして、そして俺は…………





 ココロのチカラを獲得した。



 …………それは希望の光。それが俺のココロのチカラ。そう理解した。

次回、主人公の初戦闘です。


更新はゆっくりやって行こうと思います。

あと、作者のもう一つの作品も見てね!

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