38. ヒビノ・ツキノvsチート無双系転移者 〜後編〜
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轟音を立てて向かってくるその禍々しいエネルギーの塊に対し、俺は胸にディバイスを翳し、心を込めて叫ぶ。
「――ミロワール――」
すると突然、俺の目の前に"鏡"が現れた。
直径が人1人分ぐらいの長さで、円形で厚さはそこまでない、むしろ薄い。まるで虫眼鏡のレンズをくり抜いた様なガラスが、いや"鏡"が、突然俺の目の前に現れた。
「ブッ潰れろーーーーーッッッッ!!!」
山本浩介の殺意が困った叫びが聞こえたと共に、禍々しいエネルギーの塊がその鏡にぶつかる。
ズドンッッッッ。激しい衝撃音が辺りに鳴り響く。
当然、その薄い鏡がその威力に耐えられる訳もなく、ひび割れて、粉々になる、
「な、何で………何で壊れない………!!!!」
そんな事には決してならない。目の前の鏡はしっかりと受け止めている。禍々しいエネルギーから俺達を守ってくれている。
この鏡、"ミロワール"は何も攻撃を防ぐだけの技じゃない。ミロワールの最大の特徴、それは、
………攻撃を反射出来る事だ。
「ッ!!」
瞬間、光を反射するかの様に、禍々しいエネルギーは山本浩介の方へと跳ね返っていく。
「う、嘘だ、嘘だろ、何で、何でッッッ!!!!????」
もの凄い速度で自分の元に返ってくるそれに、相当動揺しているみたいだ。
「来るな、来るな…………来るなァァァァあああああ!!!!!!」
そして、見事に自分が放った攻撃を喰らった。
「ぐあああぁぁぁぁぁああッッッッ!!!!」
山本浩介は身体から灰色の煙を噴き出しながら、見事に放物線を描いて吹っ飛んでいき、地面に落下する。
ミロワールは相手の攻撃を反射する技。鏡に相手の攻撃が当たれば、その攻撃を相手へと反射する。まるで光を反射する鏡と言った感じの、用はカウンターの技だ。
俺は倒れている山本浩介を見る。
立ち上がって来ない………当然だが、相当なダメージ入ったんだ。立ち上がれる方が可笑しい。
いや、それよりもまずは………
「ツキノ!大丈夫か!」
俺は後ろのツキノに振り向いた。山本浩介を倒したおかげが、俺がさっき居た場所の地面とツキノの地面にあった魔法陣が消えている。
「ハァ……ハァ……うん………大丈夫……だよ……」
地面に倒れたままそう答えるツキノ。息切れが激しく、どう見ても相当疲弊しいる。"虫の息"って言った感じだ。
……ヤバいなこれ。冗談無しでヤバい。このままじゃ本当に死んでしまう。
「どこが大丈夫だよ………。ツキノ、お前の回復技で体力も回復できるか?」
俺が焦りながらそう聞くと、ツキノはゆっくりと頷く。
「うん………出来るから……安心して……そんな顔しないで……」
どうやら俺は今、相当不安そうな顔をしているようだ。
安心させる様に優しい声音でそう言って、ツキノは震える手でディバイスを胸に翳し、ケアを唱えた。
すると、ツキノの険しいかった顔がいつもの無気力な顔になったので、俺は心の中で安堵する。
「ふぅ………何とかこれで、大丈夫かな」
そう言ってツキノはゆっくりと身体を起こし、片膝立ちになる。
良かった、本当に大丈夫そうだ。俺はホッと一息入れた。
「………あぁ、良かった……良かったマジで……」
「…………ごめんね、心配かけちゃって」
すると突然、ツキノが謝ってくる。とても申し訳なさそうな顔だ。心配かけた事に罪悪感を覚えているようだ。
「えっ、いやいや、なんで謝るんだよ。お前何も悪いことしてないだろ?」
「でも…………」
「謝る事じゃないって。俺はお前が無事でホント、何よりだよ………」
本当にツキノが死なずに済んで良かった。本当に………。
「ヒビノ君………」
「てゆうかそれよりも早く、光線銃を山本浩介に撃って、元の世界に戻ろうぜ。日も暮れてるし」
俺の言葉を聞いて、ツキノはハッとする。
夕日はもう地平線に沈み、夜空にはちらほらと星が出ている。
夕日が沈んだ地平線には、微かにオレンジ色の光が塗られている程度だった。
一応まだ明るいけど、すぐに暗くなるだろう。
「…………そうだね。早く犯人の所に行こう」
ツキノは真剣な顔になって頷く。
対して俺は片膝立ちのツキノに手を伸ばし、ツキノの手をグッとそれを掴んだ。そして俺は引っ張り上げてツキノを立たせる。
そうして俺達は吹っ飛んでいった山本浩介の方へと振り返る。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
山本浩介が立っていた。2本の剣を両手に握りしめて。
「「ッッッ!!!」」
どうしてだ……。あんな威力の攻撃を喰らったのに、まだ立てるのか?
「ハァ………ゼェ……ハァ………」
「クソッ、まだ闘えるのかよ………」
肩で息をしながら、険しい顔で、辛そうに立っている。
「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」
どう見ても満身創痍な身体で、それでも鋭く俺達を睨み続けながら、立っている。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
服もボロボロで、頭にある2本のツノの内の片方が欠けている。コウモリの様な羽も所々に穴が空いていて、鋭い爪も何本か折れている。
正直言って見るに耐えない、痛々しい姿をしている。が、それでも立っている。
俺は直剣を右手に出して、視線を山本浩介から離さずに、隣に立ってライフルを構えているツキノに問う。
「ツキノ、まだココロのチカラ残ってるか?」
「うん、ほんの少しだけ」
「…………バルチックショットって撃てるか?」
「…………1発だけなら」
1発か。なら十分だ。1発あれば、今の満身創痍な山本浩介を倒せる………筈だ。
「俺が山本浩介を引きつける。絶対に隙を作るから、合図したら1発、お見舞いしてやれ」
「…………了解」
そう言って、ツキノは納得する。
「よしっ、思いっきしブチかましてくれよ?頼んだぜ?」
俺はそう言ってツキノの背中をポンっと軽く叩く。ツキノは「おっ」と少しよろめいた後、こう言った。
「うん、ブチかます。ヒビノ君も遠慮はいらないよ」
正直驚いた。まさかツキノが冗談を言うなんて。
やっぱり、ツキノは謎だなぁ。無気力で無表情で、冗談なんて言いそうな奴じゃないと思ってたのに。ツキノ先生の時もだけど、こいつ結構ユーモアあるよなぁ。
あっ、いや、ただ単に天然発動させただけか?ツキノ、そういうところもあるし。
まぁいいか、どっちにしたって。でも、どっちにしても、
「ハハっ、そうだな!…………これまで通り、加減は無しだな」
――――ガチで手加減はしない。ぶちのめしてやる。
「ぶっ殺すッッッ!!!!!」
そして、殺意を力一杯叫び、山本浩介がこっちに向かって走り出してきた。
………きっと、これで決着が着く。もし山本浩介にトドメを刺せられなければ、俺達は負ける。でももし、ツキノがバルチックショットを当てられれば、こっちにも勝機がある。
さしずめ、これが最終ラウンドと言ったところか。
「じゃあ、行ってくる」
ツキノにそう告げ、俺は剣を握りしめ、地面を思いっきり蹴って、山本浩介に向かって走り出す。
今の疲弊しきって、全力で走れていない山本浩介を見るに、ある程度身体が動く今の俺ならなんとか闘える筈だ。
………今が山本浩介を倒せるチャンスなんだ。動いてくれよ、俺の身体。
俺と山本浩介はお互いに距離を詰め、そしてある地点で激突、斬り合いが始まる。
「死ねぇぇぇええ!!!」
走る勢いと共に、山本浩介が右手の剣を突き刺してくる。
だが、流石に疲弊している様でその速度はさっきより速くはない。
「っ!!!」
俺は身体を捻り、クルリと一回りして回避する。そして回った勢いで山本浩介の左側へと移動して、横一閃に斬りかかる。
が、山本浩介も流石の反応速度だ。左手の剣でそれを受け止める。
俺はすかさず、左手に拳銃を出現させて、土手っ腹目掛けて1発放った。
「クッ!!」
だが、至近距離で撃ったのにも関わらず、山本浩介もクルリと身を捻って避けやがった。
そのまま山本浩介は勢いよく一回転して、今さっきの俺の様に、右手の剣で横一閃を決め込んでくる。
俺は間一髪しゃがんで避けた後、ガラ空きの脚元にスライディングする様に左脚で回し蹴りをする。
「ぐぉッ!?」
見事にクリティカルヒット。よろめいき、コケそうになる山本浩介に、すかさず俺は拳銃の弾をブッパなった!
「ぁあ………ッッ!!」
そして光の弾は山本浩介の右側の横腹に、これも見事にクリティカルヒット。声にならない叫びをあげ、山本浩介は吹っ飛んで行く。
だが、一瞬の事なので拳銃にはココロのチカラを余り込められていないし、そもそもツキノと同様、俺もココロのチカラが余り残っていない。
アレを使う為にも温存しているので、当然これでは山本浩介を倒せていない。
「………殺……す、殺す、殺す殺す殺す殺す殺すッ!!!!」
吹っ飛ばされた山本浩介が、すぐさま立ち上がった。推測通り、なんともないらしい。
ああもう。クソッ、やっぱり倒せないか。どんだけしぶといんだよ!
「空神流――空飛!!!」
山本浩介は両手の剣をクロスさせ、X字の斬撃を飛ばしてきた。俺はすぐに左側に飛んでそれを回避し、山本浩介の懐へと走り出した。
「ハァァァアア!!」
左手の拳銃を消し、剣の間合いに入ったところで剣の柄を両手でギュっと握り、上から思いっきり振り下ろす。
剣道でいう『面』を打ち込んたが、山本浩介は両手の剣をクロスして、それを受け止める。
そのままグッと力を入れて押し切ろうとする俺だが、山本浩介も負けじと剣に力を入れ、押し合い状態となる。
が、山本浩介の力の方が俺よりも少し強い。
「ぐぉおおぁあ!!」
一気に押し切り、そのまま吹き飛ばそうとする山本浩介に、俺は無理せずその勢いで後ろに飛んで距離を取った。
しかし、山本浩介は姿勢を低くし、地面を蹴って一気に距離を詰め込んでくる。
「ッッッ!!!!」
山本浩介は両手の剣で、斜め上から斬りかかる。俺はすぐに受け止め、振り払い、一閃を斬り込む。
しかし、山本浩介もすぐにそれを避けて、反撃をしてくる。
何連撃もの山本浩介の猛攻を、俺は身を避け、受け止め、凌ぎつつ、どうにかして反撃を繰り出すが、それもまた山本浩介は避けて、往なして、斬りかかってくる。
そうして、怒涛の剣撃ラッシュの中、剣を交えた事で俺は理解する。実感する。
山本浩介は疲弊してはいるものの、攻撃を避けられない程ではない。バルチックショットを撃っても、絶対に避けられる。
それに、さっきから一撃一撃の重みも十分ある。速さも先程までではないにしても、十分に速い。
まるで最後の特攻といった感じで、自分の傷ついた体も気にせず、猛連撃を繰り出してくる。
クソッ、体力ありすぎだ。まさしくチート級だ。これじゃあ、着々とダメージを与えて弱らせて、ツキノに撃ってもらうという事も出来なさそうだな……。
それならやっぱり、どうにかして隙を作るしかない。
「死ねぇ!死んじまえぇ!!」
「ッ!!」
山本浩介の猛攻がどんどん激しくなっていく。が、俺も負けじと剣撃の速度を上げていく。
「オラァああ!!」
「グッ……!」
しかし、山本浩介の剣の方が上手だ。段々と俺の身体にかすり傷が増えていく。
「クソッ、しぶといんだよ………ああもいい!!!だったら、これで、終わりにしてやるッッ!!!」
俺との剣撃ラッシュで痺れを切らしたらしい山本浩介は、そう言った突然、俺から距離を取り、そして、姿勢を低くし剣を構えた。
「!?」
あの構えは………来るぞ。俺をさっき吹っ飛ばした技が。剣技が。
「地神流――樹木落とし!!!!!」
山本浩介が思いっきり地面を蹴って、まるで戦闘機の速度でこっちに向かってくる。
やっぱりヤバいな、これは、速すぎる。さっきと同じで避けれそうでにも無い。でも………
………俺は、負けてはいれない。ここで倒れる訳にはいけない。
――その想いが、『心』が、俺のココロのチカラを高めてくれる。
「オラッッッ!!」
俺は剣を両手に持つ。
そして地面を思いっきり、足が地面にめり込むぐらい踏んで、踏み込んで、山本浩介の剣技を迎え撃つ。
ズドーーーーーーン!!!!!
剣と剣がぶつかり合い、激しい衝撃音が鳴り響く。
俺はこの威力に吹っ飛ばされない様に、力一杯踏ん張った。
ズザザザザーーーっと、後ろに後退していき、そのせいで足をめり込ませた地面が一直線に抉れていく。そして、
「なっ………!?」
そして踏ん張りきった!山本浩介の剣技を受けきったのだ!
だがしかし、それでも山本浩介の攻撃はここで終わらない。
「クソッ、クソクソクソクソ!!!!」
山本浩介は左手の剣で俺の剣を押さえつけながら、右手の剣で俺を突き刺そうとする。
「なっ………!?」
「死ねぇ!!クソ雑魚が!!!!」
俺の心臓目掛け、まさに弾丸の様な速度の突きが俺を襲う。だけど、
………ここで死んでなんかいられないんだよ!!!!!!!
俺は瞬時に左手を剣の柄から離し、その突きを、剣を、素手で掴んだ!
「ッッ………!!!!」
「…………!?」
俺は思いっきり剣を掴み、引き抜けさせないようにする。
「なっ!?離せ!!この、クソがッ!!!」
思いっきり握りしめている為、左手からは血が噴き出している。
めちゃくちゃ、痛い、けど、絶対に、離さねぇ…………。
「なんだコレ、抜けない!クソッ………離せ!!」
離すもんかよ、絶対に。そして……
……来たぞツキノ、チャンスが!!!
「ツキノぉぉぉぉ!!!!!」
「…………ッ!」
俺は腹の底から、大きな声で叫ぶ。
「うお!?」
「オラッ!!!」
そして左手に握っている剣を引っ張り、こっちに身体をよろめかしす。
そして、よろめいた山本浩介を俺は空高く蹴り飛ばした!
「グハァ………!!!」
左手の剣を離した山本浩介は、かろうじて右手の剣を握りながら宙に舞う。
空中に蹴り飛ばされ、痛みにもがく暇もない山本浩介には、当然、『隙』が生まれた。
…………ここだ!
「…………………撃てぇぇぇえええええ!!!!」
俺は限界まで声を荒げて叫ぶ。しかしそんな中でも、俺にはツキノのクールな声が聞こえた。
「バルチックショット」
銀色に輝く光の球体が、凄まじい速度と威力で向かっていく。
そして、それは山本浩介に直撃して、山本浩介を倒して……………
「ぐぉりゃあぁーッッ!!!!!!!!」
いや、そうはいかない。山本浩介は空中でも瞬時に身体を捻り、右手の剣でそれを受け流す。
「グッ……!」
しかし、流石の山本浩介も、バルチックショットの威力に右手の剣を離してしまう。
あられもない方向へと飛んで行くバルチックショットと剣。そして丸腰で宙を舞う山本浩介を見て、俺は確信する。
……………これで、終わりだと。
あぁ、計画通りだ。多分バルチックショットだけでは倒せないだろう、このめちゃくちゃにしぶとい山本浩介を、俺がトドメを刺す事が。
俺はすぐさま左手に握りしめている剣を捨て、右手の剣を消し、そしてズボンの右ポケットから『ココロのディバイス』を取り出し、胸に翳す。
「やめろ……やめろッッッ!!!!」
山本浩介が、『撃つな』という様に叫ぶ。が、俺はやめない。やめてやらない。
「ヒビノ君ッ…………!」
ツキノが、『撃って』という様に俺の名前を叫ぶ。
ああ、撃ってやるさ。心を込めてな。
これで、これで終わり。いや……………
「王手だッ………!!!!!」
そして、俺は"ココロ"を込めて叫んだ。
「――ライト――」
今までと比べ物にならない光のエネルギーが、まるでレールガンの様に、山本浩介を目掛けて飛んでいく。
「ぐはぁあああああああああああああああ!!!!」
そして、直撃した。山本浩介は激しい叫びを上げ、勢い良く吹っ飛んで行く。
放物線を描きながら、そして身に纏った灰色の霧を噴き出しながら。
「グハァ…………」
ドスンッ。地面に落ちた瞬間、山本浩介に纏っていた灰の霧は弾ける様に、本人が見えなくなるぐらい霧が噴き出す。
そして、霧が全て消えていく。
霧が晴れ、地面に倒れ込んでいる本人の姿が見える。どうやら今度こそ"気絶"しているみたいだ。
しかしその姿は太っていて、身長も縮んでいる。しかも奈多高校の制服だった。
サブローの言っていた特徴からして、アレが山本浩介の本来の姿なのか、つまり本来の姿に戻ったという事か。
…………という事は、つまり、そういう事だ。
「……………」
疲れ果て、その場にへたり込む俺の元へ、無言でツキノが、やってくる。
………あぁ、そう、つまり、俺とツキノは、
「ヒビノ君」
「あぁ、やっと倒せたな、ツキノ」
「うん」
コクリと頷くツキノを見て、俺は実感する。そう、俺とツキノは、
――この戦いに勝ったのだった。
あと3、4話で一章は終わりです。多分ですが。




