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異ろんな世界へ行く  作者: 本郷隼人
一章  剣と魔法のファンタジー世界へ
36/39

35.灰霧のチカラ

 その不気味で且つ気色悪さを感じさせる笑い声が、あたり一体に響き渡った。


「こ、これは一体……」


 禍々しいツノ、獣の様な鋭い爪、コウモリの羽……極め付けは黒く長い髪に紫色の肌。

 まさしく悪魔の様な見た目になったレオナルドさんに俺は、いや、この場にいる誰もが困惑する。


 そして、そんなレオナルドさんの周りには今も尚あの灰色の霧が纏っている事に、俺は更に困惑している。


「あぁ!本当に清々しい気分だなぁ!元の世界ではこんな気持ちになったことなんてなかった!生まれて初めてだよ!やっぱり異世界って最ッッッ高だっ!!」


 嬉しそうにそう言いながら、レオナルドさんは地面に落ちていた2本の剣を拾い上げた後、素早く腰の鞘に収めた。

 その顔が本当に嬉しそうで楽しそうで……それがこの場所の雰囲気に合っておらず、不気味な印象を与えた。


「おいおい……なんなんだアイツは!?なんであんな見た目になってんだよ!?」


「それだけじゃねぇ。アイツのオーラ、気迫、殺意、佇まい。……さっきとは段違いに凄まじくなっているぜ。アイツ」


 チャリンコさんの言葉に続き、ゲンツキさんが冷静に相手の分析を図った。そして、


「な、なぜじゃ…………このワシが鑑定出来ないじゃと!?」


「鑑定……が……で、出来ない……?」


 シスターさんがそう聞くが、ビリンスさんはそれに答えるわけでもなくただ驚きを露わにする。


「そんなバカな……ワシが鑑定の出来ない奴は、この長い人生、いつ何時もいなかったというのに……」


「嘘でしょ!?さっきは余裕で鑑定出来てたじゃないですか!?あの姿といい、あの霧といい……ホントにどうなっちゃったのよアイツは……!?」


 どうやらビリンスさんでも鑑定が出来なかった様で、カタリナさんも驚きと苛立ちを見せた。


 本当にどういう事だ?あんなに簡単に人の事が分かったビリンスさんでも、今のレオナルドさんは無理なのかよ?これもレオナルドさんが言った『灰霧のチカラ』ってやつのせいなのか?


 クソッ、一体なんなんだよ!どうなってるんだよマジで!!


「ツキノ!これは一体……」


 俺は無力化トリガーを握りしめているツキノに説明を求める。ツキノは俯き、真剣な表情のまま呟いた。


「分からない。けど……もしかしたら、灰霧と何か関係があるのかもしれない」


「やっぱり、あの霧が何か?」


「うん。推測だけど、レオナルドさんが言った"灰霧のチカラ"って言う力の影響でああなった……多分そんな気がする」


「灰霧の……チカラ……」


 やっぱり今さっき言ってた『灰霧のチカラ』っていうのが関係しているのか?でも、だからってあんな悪魔みたいな姿に…………


「…………いや、ごめん。今はそんな説明をしてる場合じゃ無かったね」


 俺が思考を巡らそうとすると、ツキノの低い声がそれを遮った。


「そうそう。そういう事だよツキノちゃん。僕も早く君達をブチ殺したいからさぁ…………僕の楽しい異世界ライフを邪魔しようとする君達をさぁ!」


 そうだ。こんなこと考えてる場合じゃない。

 今は目の前にいる、この冷徹で殺意が剥き出しの眼差しを向けてくるレオナルドさんを…………犯人である山本浩介を止めなければ。


 俺はいつでも動ける様に直剣を右手に出して構えた。ツキノも無力化トリガーを胸ポケットにしまい、代わりに拳銃を右手に出現させる。


「うわー、なになに?ヒビノ君とツキノちゃん。戦う気満々じゃ………」





「「地神流――樹木落としッ!!!!」」


 素早く走り出していたハスラーさんとクラリスさんが挟み撃ちでレオナルドさんを狙う。

 ハスラーさんの大剣が首をクラリスさんのハンマーが側頭部を目掛け凄まじい勢いで振られた。

 大剣とハンマーはハサミの如くレオナルドさんの左右から同時に直撃する。


「ハスラーさん、クラリスさん!!」


 突然の事に俺は驚きを声に出した。

 ゴンッ!!!と金属音の様な音が鳴る。その音は草原に響き渡り、相当な威力なのが分かる。当然、そんな威力の大剣で首を斬られたので頭が胴体から離れ、その頭もハンマーのせいでペシャンコになり、そして血飛沫が……………


「おいおい……マジかよッ……!?」


「刃が〜……通らねぇ〜……ッッ!!」


 あんなに高速で振られた大剣とハンマーが、レオナルドさんの頭と首の位置でピタリと止まっていた!

 ハスラーさんとクラリスさんが腕を震わしている。相当な力を入れているのだろう。

 が、等のレオナルドさんは何事も起きていないかの様にその場に立ち、2人を煽る様にポリポリと頭を掻き始めた。


「ハァ……まだ、喋ってる途中なんだけど」


 次の瞬間、レオナルドさんが2人の武器を素手で掴み、そして自分の頭から強引に離す。


「ウソッ……だろッ……!!」


「チクショウがぁ〜……なんつう馬鹿力してんだぁ〜……!!」


 レオナルドさんは2人の力をもろともせず、武器をごと2人を持ち上げる。そして身体を目一杯反らし、


「おいしょっと」


「「……………!?」」


 2人は宙に舞った。そう、思いっきり近くの小岩にぶん投げたのだ。


「「グハァ……!!」」


 ドゴンッ!!!!2人が小岩に直撃し、小岩は粉々に、跡形も無く粉砕。土埃が派手に舞う。


 …………ヤバい。2人が血反吐を吐いているのが見えた。俺は咄嗟にツキノの名前を叫ぶ。


「ツキノ!早く2人を!」


「うん!」


 俺がツキノに回復を頼むと、ツキノは拳銃を手元から消し、慌てながらも2人の元に全力で駆け寄る。


「ハァ………いやいや、させないよ?」


 レオナルドさんがツキノの方を向き、そして手を伸ばし、翳した。


「こっちのセリフだ!」


 何かやる気だ。そう感づいた俺は手元の直剣を消し、入れ替える様に拳銃を出現させながら、両手で構える。


 照準をレオナルドさんに合わせ、トリガーを引いて光の弾を何発か打つ。


 しかし高速で放たれた光の球体は、一本の剣を右手で素早く抜いたレオナルドさんが華麗な剣捌きで全て弾いてしまう。その剣捌きはとても高速で、その速さはさっきの俺との攻防で見せた剣撃を凌駕していた。


「「「「中級魔法!!」」」」


「「「空神流!!」」」


 それでも、俺の攻撃に気を取られて魔女っ子4人組が魔法。そして剣を構えたゲンツキさん、チャリンコさん、そしてククリナイフを構えたカタリナさんから繰り出される技は弾けないはずだ。


「フレア・アロー!」

「フロウズン・アロー!」

「ボルテクス・アロー!」

「ウィンディア・アロー!」


 火、氷、雷、風……4人それぞれがマナの属性の矢を杖の先から放ち、


「「「空飛(からとび)!!」」」


 ゲンツキさん、チャリンコさん、カタリナさんのが同時に武器を振り下ろし、刃の形をした空気の歪みが生じた。例えるならそう、ワンピの36ポンド砲だ。

 そしてその刃の形をした斬撃は真っ直ぐとレオナルドさんに飛んでいく。


 4本の魔法の矢と、3つの空気の斬撃。それらは全てレオナルドさんに向かっていき、そして同時に直撃した。


「……………」


 しかし、レオナルドさんには何事もなかったかの様にその場に立っている。かすり傷一つ付いていない。本当に、全く。


「や、やっぱり効いてない……」


「なんなの!なんで攻撃が通じないのよ!」


 魔女っ子4人組のグレッチェンとスピネコがそうぼやく。それを聞いて、レオナルドさんが急に笑い出した。


「ハハハハハッ、当たり前だよ。普通の攻撃が今の僕に効く訳ない。灰霧の特性を持った僕にはね」


「ッ!?灰霧の特性………!?」


 今そう言ったのか?

 今のレオナルドさんに普通の攻撃が通じず、それが灰霧の特性っていう事はつまり…………。


「さてと。それじゃあ凄いもの見せて上げるよ」


 レオナルドさんがふざけた口ぶりでそう呟くと、この場から少し離れた位置に避難していたシスターさんとビリンスさんの方を見て、ニヤリと笑った。

 レオナルドさんに見られて狼狽えた2人。それを見て更に口角を上げるレオナルドさんは、2人に向けて剣先を翳す。


 さっき、駆け出したツキノに何かをしようとした様に。腕ではなく今度は剣先を翳した。




「合体魔法」


 ……………そう、レオナルドさんが唱えた。


「ヤバっ……!」


 レオナルドさんが魔法を使おうとしているのことに気づいた俺は咄嗟に2人の元へと全力で駆け出した。


「うおおおおお!!!」


「な、なんじゃ……!?」


「え、え……!?ヒビノさん……!?」


 全速力で駆け、そのままの勢いで2人に飛びつき、間一髪()()の脅威から守る。俺は2人を抱き抱えた状態で、そのまま地面をザザーッと滑った。


 そして、()()とは、


「スパークキャプチャー」


 そう。レオナルドさんは先程魔女っ子4人組が自分に使った捕縛用の魔法を使ったのだ。

 ()()というのは光の縄が出てくる魔法陣で、振り返ってみると丁度シスターさんとビリンスさんが今いた場所の地面には、光り輝く魔法陣が浮かび上がっていた。

 そして今、『スパークキャプチャー』と唱えた瞬間、魔法陣から光の縄が何本も飛び出してきたのだ。


 もし少しでも2人に飛びつくのが遅かったら…………あっ、危ねぇ。マジで間一髪だった。


「おい!3人とも大丈夫か!?」


 ゲンツキさんとチャリンコさん、クラリスさん、魔女っ子4人組がコチラに駆けつける。

 俺とシスターさん、ビリンスさんの前に護るように立ち、依然として余裕な態度のレオナルドさんに武器を向けた。


「アイツ、スパークキャプチャーを1人で唱えるなんて………」

「合体魔法だし、とゆうか上級魔法よ!?なんで1人で瞬時に発動出来るのよ!?」

「しかも、二つの対象に同時に発動なんて私達でも…………いや、この世界で出来る魔術師なんていないわよ?アイツ戦士なんじゃないの?」

「ハハハ……まさにツキノちゃんが言った通り、()()()()()()だね。コレ、まさかの魔王復活なんじゃないの?」


 魔女っ子4人組が口々に驚きを呟く。余裕を見せようと冗談めかす様に言っているが、それが逆に何処となく余裕が無い印象を与える。

 どうやら今のレオナルドさんの行動は、常人ではあり得ないらしい。

 いや、そりゃそうだ。あの悪魔の様な姿で常人というのは無理がある。


 その姿といい、さっきの剣捌きの速さといい、今の魔法といい、どう考えても今のレオナルドさんは異常だ。確実に変身前より強くなっている。

 それに通常の攻撃が全くもって効いていない。まるで灰霧のソレ…………"灰霧の特性"と同じだ。


 …………もしかしてこれが、さっき言っていた灰霧のチカラなのか?


「ハハ、流石ヒビノ君だね。じゃあ次はこれ、止められるかな?」


 またしてもレオナルドさんがニヤリと笑ったかと思えば、真っ直ぐ剣先をこちらに向けてきた。また何かする気だ。


「剣先にマナが集まって…………皆んな逃げて!」


 グレッチェンが慌ててそう叫んだが、そんな余裕はなかった。


「最上魔法、シャドウ・ディ・メタオール」


 その瞬間、レオナルドさんの剣先からドス黒く、図太く、そして禍々しいエネルギーが真っ直ぐ、まさしくビーム如くこちらに向かって来た。


 させるかよ。頭がその一言で埋め尽くされたと同時に、俺はズボンの右ポケットからココロのディバイスを抜き取りながら、皆んなのまえに立った。そしてディバイスを胸に翳し、目一杯、全力で心を込め、唱える。


「――ライト――」


 光のエネルギーが真っ直ぐ、ビームの様に飛んでいき、そして禍々しいエネルギーとがぶつかり合う。


 ドゴンッ!!!と、激突時に凄まじい轟音が鳴り響き、激しい突風が辺りに広がった。


 光のエネルギーと禍々しい……闇のエネルギーとのぶつかり合い、例えるなら押し相撲が展開されている。


「……ッ!」


 だけどダメだ、全く押し返せない。ぶつかり合った場所で停滞しているだけだ。


「………クソッ!」


 フルパワーで撃ってるのに、光のエネルギーは衝突した場所から押し返さないで停滞している。

 レオナルドさんの魔法は、俺の"ライト"と同じ威力ってことか?

 ダメだ、このままじゃココロのチカラが尽きて押され始めてしま…………


「こっちです」


「……!?」



 バンッ!!!



 その時、レオナルドさんの横を取ったツキノが拳銃を撃ったのが見えた。ココロのチカラを溜め込んだ光の弾は、凄まじい速さでレオナルドさんの横っ腹に直撃する!


「……ッ」


 レオナルドさんは吹っ飛んでいき、それに伴い闇のエネルギーは消え、"ライト"はそのまま真っ直ぐに飛んでいった。


「……ヒビノ君、皆さん!大丈夫ですか!」


 ツキノは側に倒れていたハスラーさんとクラリスさんを両脇に抱え、全速力でこちらに駆けつけてくれた。


「こっちはなんとか………それより、ハスラーさんとクラリスさんは?」


「大丈夫、気絶してるだけ。命に別状はないよ」


「そっか。なら良かった」


 俺とツキノがそう会話を交わすと、シスターさんが気絶してる2人を見て驚く。


「す……凄い……さっきまで生命反応が……弱まっていたのに……どうして……?」


「説明はまた今度。今は全員、街の中に避難してください。レオナルドさんは私とヒビノ君で抑えます。ヒビノ君、戦えそう?」


「ああ、問題ない。まだまだいける」


「分かった」


 ツキノは気絶した2人をそっと地面に置き、レオナルドさんが吹っ飛ばされた方角に目を向ける。俺もそれに釣られる形でそちらに視線を向け、激しい砂埃が舞っているのを確認する。


 その砂埃の中から、人影が立っているのが見えた。どうやらレオナルドさんはピンピンしているみたいだな。俺はディバイスをポッケにしまい、右手に直剣を出す。ツキノもライフルを出現させた。


「ちょっ、ちょっと!?2人だけで戦う気なの!?」


「大丈夫だぜカタリナの姉貴。ヒビノとツキノならチョチョイのチョイだぜ」


「でも……」


「チャリンコの言う通りですぜ。昨日のオーガ戦みたく、2人の攻撃だけは効果あるみたいだし、なら攻撃が通じない俺達は足手まといだ。早くハスラーさんとクラリスの姉貴抱えてトンズラしましょうぜ」


「確かにそうだけど………」


「今は2人に任せて、私達は早く騎士団とかを呼びましょ?それにアタシ、死にたくないし」

「賛成」

「確かに」

「私も死にとうない」


「そうことじゃ。気絶した2人を連れて走るぞ!」


「………もう!分かりましたよ!ヒビノ君、ツキノちゃん!絶対生きて帰ってきてよね!!」


 背後からそんな声が聞こえたので、振り返らずに「ええ、必ず」と返信をした。ツキノも「了解です」と返信をした。


 …………そしてその後、足早に駆けていく足音が聞こえた。





「ヒビノさん………ツキノさん………絶対………絶対生きてくださいッ!!!!!」



 遠くからシスターさんの心からの叫び声が聞こえた。ので、俺とツキノはチラリと後ろを振り返り、ゆっくりと頷いた。


 再び前を向く。

 砂埃が晴れたと同時に、余裕の表情でいるレオナルドさんの姿がクッキリと見えた。


「痛てて…………いや〜。逃げられちゃったな〜」


 ゆっくりと俺達に歩み寄り、一定の距離を歩いたところでピタリと立ち止まる。


「いや、見逃したんですよね?それに貴方、私の攻撃もわざと受けましたね?」


「…………ハハハ、ツキノちゃんにはお見通しか。流石、僕を下に見てるだけはあるね〜」


「…………」


 おちょくるレオナルドさんにツキノは静かに睨みつけている。

 俺もレオナルドさんがわざと見逃したことは、少し感づいていた。でも一体どうして。


「今から3つだけ、質問に答えてもらいます」


 一旦黙ったツキノがまた喋り出した。ツキノは睨みつけながら、銃口をレオナルドさんに向ける。

 俺もツキノに続いて、左手に拳銃を出して構えた。


「ハァ……質問するのがホントに好きだよねー。学校の先生かな?まあいいや、答えてあげるよ」


 おちゃらけたレオナルドさん。こんな殺伐とした空気と状況でも余裕な態度に、まさしく"強者"の印象を受けた。


 ツキノが冷徹な声音で質問を開始する。


「…………まず始めに。アナタは学校でイジメを受けていた山本浩介という人物で合っていますね?」


「ああ、そうだよ。君達と同じ奈多高校に通っていた山本浩介は僕で合ってるよ。容姿とオタク趣味のせいでいじめられた山本浩介本人だ。認めるよ」


 だろうな。それはもう分かりきっている事だ。

 ツキノが質問を続ける。


「…………なんで他の皆さんを見逃したんですか?それに私の攻撃も………」


「アハハハ。恥ずかしい話、君の攻撃は単純にダメージが通らないと思ってただけだよ。でも、まぁそうだよね。灰霧は何故か君達2人の攻撃は通じるんだよね。なんでだろう?」


「…………見逃したのはどういう理由ですか?」


「あぁ。実のところ、あの人達は殺す気が失せたんだよ。ただ単に君達2人だけと戦いたいなぁ、って思って」


 俺達と?どういう事だ?

 疑問はツキノも思ったらしく、理由を問いただした。


「…………それはどういう事ですか?」


「いやね。あの冒険者達じゃ今の僕の足元にも及ばないじゃん?それだと張り合いないし、ただ無双して終わっちゃう。つまんないし、それじゃあただのイキリなろう主人公で気持ち悪いじゃん?」


 イキリ……なろう主人公?何を言ってるんだ?意味が分からない。ふざけてんのか?


「でもさ。君達は違う。ちゃんと強い。ちゃんと僕に攻撃が通じる」


「…………それで?アナタは何が言いたいんですか?」


 ツキノが苛立ち混りの声を発すると、()()()()は首を傾げて笑う。


「アレ?分からない感じ?僕は異世界ライフを邪魔するウザくて憎たらしい君達と戦って、最ッッ高にカッコいい無双をしたい!圧倒的な力の差を確認したい!ラノベみたいな俺TUEEEEをしてみたいんだ!それをする為にはあの雑魚冒険者達は邪魔。まぁ、うざくて殺したい気持ちはあるけど、もうどうでも良くなったから見逃した。それだけ」


 …………………は?なんだ?よく分かんないけどつまり………つまりこの人は、カッコつけたいから見逃したのか?


「ラノベとか無双とか訳が分からない事ばっかり…………ふざけてるんですか?」


 俺が思わず不満を溢すと、山本浩介は「ん?訳がわからない?」少し悩む素振りを見せ、閃いたといった顔をするや否や、握りしめた右手を左手の掌にポンっと叩きつけた。 


「…あっ、そっか!ヒビノ君とツキノちゃんはオタクじゃないのか!あぁなるほどね。ごめんごめん!それじゃあ理解出来る訳ないよね。失敬失敬!配慮が足りなかったよ」


「「…………ッ」」


 その素振りが本当にムカつく。そのおちゃらけた雰囲気と表情もだ。どう見てもふざけてるとしか思えない。が、今は怒りを爆発させる時じゃないのは分かっている。


 ツキノが質問を続ける。


「…………話を戻します。貴方のその力、『灰霧のチカラ』と言いましたね?その見た目といい強さといい、一体なんなんですか?」


「ハハハハハ!そんなの答える訳ないじゃん!…………と思ったけど、良いよ。教えてあげるよ」


「…………余裕なんですね」


「まあね。こんな凄い力、僕も説明したいし、それに教えても君達ぐらい今の僕じゃ倒せちゃうからさっ」


「「………………」」


「あれ?無視?まあいいや。……………()()()()()()()()この『灰霧のチカラ』ていうのは、簡単に言えばチート能力だよ。このチカラのおかげで、今の僕は君達の攻撃以外は全く聞かない。そう、"灰霧の特性"と同じだ」


 やっぱりか。今の山本浩介には灰霧みたいに、ココロのチカラ以外の攻撃が通じないのか。

 でも、『さっき手に入れた』っていうのはどういう事だ…………?


 これは俺の推測だったんだけど、その"灰霧のチカラ"とやらは追い詰められたから発動した奥の手というか、隠し持っていた力というか、最後の手段的なものだと思ってた。けどそういう事じゃないのか?


「それにこのチカラの凄い所は、この世界の全属性、全魔法が無限に使える様になって、しかも身体能力も相当底上げされるんだよ!いや〜、まさしく異世界転移って感じだね〜」


「それが…………灰霧のチカラ…………」


 ツキノが言った通り、まさになんでもアリだな。


 そして、ツキノの質問が終わり、


「さてさてさ〜て〜、それじゃあそろそろ戦おうよ。流石に話ばっかりじゃ飽きるし。それに……………君達をぶち殺して、無双して、異世界世界を満喫したいからね」


 山本浩介がもう片方の剣を抜いた。二本の剣をバッテンにクロスさせ、腰を低くした。




 ……………戦闘準備に入ったようだ。


「……ッ。来るよヒビノ君」


「よし、気合い入れてくぞ」


 俺もすぐに腰を屈め、すぐに動ける体制に入る。ツキノも「そうだね」と真剣な声音で返答し、ライフルを再度ビシッと構えた。


「………ねぇ、ヒビノ君」


「……?」


 そんな中、俺の名前を呼ぶツキノ。そして…………





「絶対勝とうね」


 そう言ってくれたツキノに俺は少し驚いた後、すぐにを上げながら「オーケー」と、心を込めて返答した。



 また、勇気づけられたな。




「ハハハハハハハハ!それじゃあ行くよ!2人とも!そして僕の異世界ライフの踏み台にナレッッ!!!」



 ……………犯人、山本浩介との戦いの火蓋が切られた。

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