第一章 1.運命の出会い
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、
「はッ」
目覚まし時計の音が聞こえ、俺は目が覚めた。
「なんだったんだ…今の…」
どうやら、夢を見ていたらしい。俺はアイギスと言う銀髪の少女と、あの病室で話をしていた。しかし何故、あんな夢を見ていたのだろうか。
俺は目覚まし時計のアラームの音を止めた。時間は7:01と記している。
「着替えないと…」
俺はベットから起き上がり、クローゼットの中から制服を取り出して着替える。
ワイシャツを着て、ズボンを履き、亜麻色のカーディガンを着て、リボンタイを結ぶ。
うちの高校……奈多高校の制服は、ネクタイではなく珍しく細幅の黒いリボンタイだ。男子生徒には不人気だが、俺は気に入っている。リボンタイが分からなかったら、調べると出てくるはずだ。
そうして着替え終えた俺は、自分の部屋から出て、2階から1階へと階段を降りる。
「おはようタカシ!ごはんできてるわよ!」
俺がリビングのドアから入ると、母さんが元気な声でそう言った。
「うん、おはよー」
俺はそう言った後、リビングの中央にある4人用のテーブルの方へ行き、イスに腰掛ける。目の前には、妹の歩夢もいて、朝ごはんのコーンスープを飲んでいる。
「おはよう歩夢」
「…………はよ……」
ウチの高校の制服を着ている歩夢は小声でそう言った。
ちなみにウチの高校は男女ともにブレザーだ。そして男女ともに、黒寄りの紺色をしている。なんだか見た目はスーツみたいにシュッとしていて、たまにサラリーマンと間違えられる。まあ俺はカーディガンを着ているからそんな事はないが。
そして歩夢と俺の関係は良くはない、いや悪いと言った方がいいか。何故だかは知らないが嫌われている。
「テレビ、つけるよ」
「勝手にすれば…」
やはり、そっけない態度を取られてしまう。別に怒りはないけど、こういう態度をとられると、けっこう悲しかったりする。昔は仲が良かったのだが、いつからか冷たくなってしまった。
俺は食パンをほうばりながら、リモコンでテレビをつける。
「現在、世界各地では突然意識不明の状態になってしまう、不明病と言う病気が流行っています。これは、突然、前触れもなく意識がなくなり、そのまま寝たきりの状態になってしまうという病気で…」
「怖いわね〜不明病って。そういえばパパの同僚の奥さんもなっちゃったみたいでね〜…」
テレビのニュースでアナウンサーがそう言っているのを聞いて、母さんも反応して話し始めた。
「なんかね。その同僚の人が家に帰ってきたら、奥さんが台所で倒れているのを見つけたんですって!それで救急車呼んで病院に運んだんだけどね。なんと、どこも悪くはなかったらしいのよ〜!なのに今もずっと寝たきりなんて、ホント不思議よねぇ〜」
という話を怪談話をするみたく楽しそうに話している母さんを見てるうちに、朝ごはんを食べ終えてしまった。
俺はテレビの時計を見る。まだ遅刻しそうな時間ではないが、行くことにした。
「そろそろ行くかな…」
「あらもう行くの?ちょっと早くない?」
「いや、たまには早く出ようかなって思ってさっ」
「そう…じゃあっ、いってらっしゃい!」
俺は肩掛けのスクールバックを持つ。
「うん!行ってきます!」
「あ!、そうだそうだ!」
「ん?どうしたの?」
母さんは、思い出したような顔をし、そしてその後、優しい笑みを浮かべてこう言った。
「2人とも、もう引っ越してきて3ヶ月経つけどこの街には慣れた?」
俺は家族と一緒に都会からここ、縦須賀市に父さんの転勤で引っ越してきたのだ。縦須賀市には港があり、昔から船での貿易や漁業が盛んらしい。
「うん、友達もできたし、充実してる」
俺は笑顔でそう言った。歩夢も不機嫌そうだが、こくんと頷いている。
「そう…ならよかった!」
母さんも満面の笑みでそう言った。
そして俺はリビングのドアを開けて、再度「行ってきます!」と言った後、玄関も開けて家を出た。
俺は学校に着き、上履きに履き替えて2-3の教室へと向かった。
俺と妹が通っている奈多高校は、ウチの最寄り駅、栗浜駅から4つ先の西縦須賀駅という所を降りて、そこから坂を15分ほど登ると着く、最高に立地が悪い所に立っている。
ちなみに偏差値は普通だ!いや、まあだからなんだと言う話だな………。
「おーすタカシ!元気してたか?」
「よっ、テッペイ、早いな!」
俺がクラスに入ると、同じクラスの原本鉄平が話しかけてきた。
テッペイは俺の友達の1人で、前髪をセンターパートで茶髪にし、ブレザーの下に黒いTシャツを着ている。身長は俺と同じか、少し小さいぐらいだ。ちなみにリボンタイはしていない。
俺はテッペイの席の近くの席に座る。
「ま、ぼちぼちってとこだな…テッペイは?」
「オレもぼちぼちってとこだよ…。春休みはまじでナーンも無かったしな。」
そう、今日は4月7日、昨日まで春休みだったのだ。
「はぁ、しかしこの学校、なんでクラス替えが無いんかな〜…」
奈多高校では進級の際のクラス替えがない。何故かは知らないが、多分「3年間仲のいい人と一緒にさせてあげたい!!」という先生たちの粋な計らいだと思っている。多分。
「な〜に話してるの?2人とも」
「お、トウコか!。ちーす」
俺とテッペイが話していると、1人の女子が近づいてきた。テッペイはその女子に挨拶をする。
立花塔子。テストは毎回学年1位、運動神経抜群、容姿端麗で、三拍子トントントンな、この学校の有名人だ。テッペイの噂話だと、俺が転校してきてからも3人はタチバナに告白し、撃沈したそうだ。すごい。
容姿はテッペイと同じ茶髪で、短い髪をポニテにしている。そしてワイシャツの上に赤いパーカーを着て、ファスナーを開けている。
言い忘れていたが、女子は黒いリボンタイではなく、紅色のリボンだ。
「おはよう!タチバナ」
俺はタチバナに挨拶をする。
「おはよーテッペイ、ヒビノ君。で、なんの話してたの?」
「いやな。タカシとさ〜、この学校クラス替え無いんかなって話してたんだよ」
「あ〜、そういえば無いわねこの学校。どうしてだろ?」
「まっ、十中八九嫌がらせだろうな。いや、やっぱ十中十九だな。賭けてもいい」
テッペイとタチバナは、小学校の時からの知り合いらしい。家も近所、幼馴染というやつだ。
「まあまあ、そんな事より2人とも!ビックニュースビックニュース!」
「ん?ビックニュース?んだよ一体?ついにこの高校にも食堂が出来てくれんのか?」
そうテッペイがタチバナに聞く。そうするとタチバナは満面の笑みを浮かべ、かつドヤ顔で言った。
「フフフッ………なんと!なんとなんと!またしてもアタシたちのクラスに転校生よ!しかも噂じゃ、結構な美少女だって!」
「おおマジで?ホントに中々ビックニュースじゃんか」
「でしょでしょ!ビックニュースでしょ!いや〜楽しみだわ〜」
"またしても"と言うのは、多分俺が転校して来たからだろう。
そして俺は今のタチバナの発言に待ったをかける。
「ん?ちょっと待ったタチバナ。テッペイはともかく、なんでタチバナも楽しみなんだ?普通、女子って男子の転校生の方が喜びそうだけど…」
「んー?いや〜、実はアタシ結構かわいい物に目がないんだよね〜」
「え、そうなのか?」
「あ、出たな。ホンっトにお前はかわいいものに目がないよな……」
「何よ、別に変じゃないでしょ。女子は誰だってかわいいモノが大好きなんだからっ」
と、タチバナは拳を握りしめ、目を輝かせながら言う。
「つか毎回疑問なんだけど、それって美少女も入んもんなんか……?なんか、ちょっと納得いかない自分がいんだけど」
テッペイは呆れながらツッコむが、俺はなんとなくではあるが納得はした。
確かによく女子が他の女子に可愛いとか言っているのはよく見るし。
しかし、転校してから3ヶ月、タチバナとは割と話していたが知らなかった。コイツ、かわいい物が好きなのか。
「とゆうかタチバナってカワイイものが好きなんだな。全然知らなかった」
「まあね。実際、そこら辺にカワイイ女子がいたら飛び付いて、体の隅々まで舐めに舐め回しちゃうんだからっ!!」
「「えっ………………」」
その瞬間、辺りに沈黙が張り詰める。
「…………あ、あれ?ちょっと、2人とも引いてない?う、嘘嘘。じょ、冗談だかんね?ハハハ……冗談冗談……」
「……いやいや、流石に冗談でも今のは引くっつーか……その前にお前の目がマジだっただつーか……。てか周り見ろ、俺ら以外も引いてんからな……」
そうテッペイに言われてタチバナは周りを見渡した。確かに女子は全員、驚きの目でタチバナを見ている。
「え、いや……え?う、ウソウソっ!!嘘だかんね皆んな!?舐め回したりとか、そんな事絶対にしてないかんね!?」
タチバナはそう必死に周りに言う、が、周りの視線は未だに集まっている。
「……わ、話題変えよっか……」
「うん…そうしよう……」
タチバナの意見にテッペイが乗る。
「いや〜しかし転校生っていうと、そいやタカシも転校生だよな?仲良くできんじゃね?」
テッペイがそう言った。そしてタチバナもそれに続ける。
「そうよね、ヒビノ君も転校生なわけだし、結構話が合うかもね」
「そうか?そうだといいけど…」
「いやいや、結構合いそうじゃね?しかもお前、割と顔良いし、こりゃワンチャンもあるって!」
「あ、そうかも。この際だし、ヒビノ君もリア充デビューしちゃいなよ!」
「ははっ。まあ、できたら良いな」
しかし、転校生か。転校生……転校生……、ん?
『貴方の学校に今日、1人の女子が転校してると思う』
ッッ。そういえば、夢で会ったアイギスという少女が、そんなことを言っていた様な………。
「ん?どうかしたかタカシ?急に目見開いて……」
「へ?あ、ああ、いや、なんでもない」
「ん?………そっか、なら良いんだけど…」
どういうことだ?あれは夢だろ?たまたまか?
俺の中に、そんな疑問が湧いて来た。
そしてチャイムが鳴り、クラス全員が各々1年のときの席に着いた後、先生が入って来た。
「はい、どうも皆さん、お久しぶりです。」
そう言って話し始めたのは、1年の時と同じ先生の内田先生だった。内田先生は若い先生で、美人だからそれなりに人気があるとテッペイが言っていた。
簡単に見た目を説明すると、ショートボブに、メガネを付け、女性モノのスーツを着ている。そんな感じの、例えるなら『研修で来ました』って感じの初々しさがある先生だ。年齢は知らないけど、見た目からして多分若いと思う。
「まあ私の自己紹介はいいわよね。よし、じゃあ入って来て!」
内田先生がそう言うと、教室の前のドアがガラガラとスライドした。
そして1人の女子が入って来た。
「じゃあ自己紹介をお願いします」
「……月野恵です」
そう、そっけない感じで彼女は答えた。
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