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神のいない世界  作者: ウニ
全ての始まり
9/64

前途多難

 





 調律師の男と戦闘をしてから1週間。悠は特に変わりなく日常をすごしていた。

  そして、学校に転校生が来る日になった。

 悠はぼうっとしながら転校生が教室に入るのを見ていたが転校生の姿が見えた瞬間、目を見開き思わずその人物を二度見した。

「今日からクラスの一員になる、荒崎だ。…ほら、自己紹介しろ」

「荒崎 堅だ。よろしく頼む」

 転校生、荒崎は昨日悠が見逃した調律師だった。荒崎は悠に気づくと小さく頭を下げた。

 悠は荒崎の様子を不審に思いながらも、気にせず目を逸らした。

「じゃあ、荒崎は神無の後ろの席な」

「…わかった」

 教師に指示されたように荒崎は悠の後ろの席に座ると、じっと神無に視線をおくった。

 悠が荒崎の視線に耐えているとホームルームが終わったらしく、教室内は少しざわつきながらも一限の授業が始まった。

 昼休みになると、悠は荒崎に何か言われる前にカバンを持って教室から飛び出した。

 階段を二段飛ばしで駆け上がり、屋上の手前の踊り場に腰を下ろした。

「…q2」

『昨日言った通りだったろう』

「いや、ほんとに。なんでいるんだアイツ」

 悠は天を仰ぎながら呻き声を出した。

 そこに、こちらに向かってくる足音が聞こえる。

「よお、昨日ぶりだな」

「…誰だっけ?」

「またかよ!…まあ、いいけどよ」

 案の定、足音の主は荒崎だった。

 悠は荒崎と関わりたくなかったが、こうなったら仕方がないと腹を括る。

 荒崎は不機嫌な顔を隠しもしない悠の隣に、無言で腰を下ろした。

「…なんでいんの?」

「一応仕事だったんだけどよォ、誰かさんに邪魔されちまったからなぁ」

「お前国の調律師だったのか?」

 悠は驚いたように荒崎をみた。

 国の調律師というのは揃いも揃って堅物だというイメージだったが、荒崎は全くそのイメージに当てはまらない。

「そうだったけどなぁ、昨日でやめた」

「ふーん、国の犬って辞められんだ」

 悠は興味なさげに相槌をうった。

「まあ、俺は国に忠義を尽くしてたわけじゃないしな。でだ…」

「なに…」

 荒崎は立ち上がると俺に向かって頭を下げた。

「俺をお前の弟子にしてくれ!」

「いやだけど」

 悠は荒崎の言葉を考えることすらせずに断るが、荒崎は悪い笑みを顔に浮かばせる。

「ふは!断られるのは分かってたぜ、お前が嫌がってもくっついていくから気にするな!」

「いや、勘弁してくれよ」

 身を乗り出してくる荒崎から悠は離れるように身を引くが後ろは壁なため、これ以上下がることができないことを思い出し顔が青ざめる。

「神無、いや神無さん!これからよろしくお願いします!!」

「本当に無理…」

 悠は両手で顔を覆うと荒崎を諦めさせる方法を考えはじめた。



 *



 悠は荒崎から逃げると昼休みが終わる15分ほど前に教室に戻ることができた。

 自分の机に着席し一息ついていると、荒崎がその五分後に教室へ戻ってきた。

 クラスメイトが荒崎に話しかけようと近づくが、荒崎はそんな彼らに目もくれず悠の元へと来た。

「神無さん!」

「…もうやめてくれ」

 悠は頭を抱えると荒崎を視界から追い出そうとした。

「これどうぞ!昼飯食べてませんよね!」

 そう言って、荒崎は悠に購買で売っている惣菜パンを差し出した。

 悠はちらりとそれを見ると、まるでしっぽを振っている犬のように悠の反応を待っている荒崎が見える。

「…まあ、ありがとう。一応受け取っておく」

 悠は荒崎からパンを受け取ると、カバンに入れようとしたのだが。

「今食べないんですか?!」

「いや、もう昼休み終わるし」

 そもそも、悠は人前で食事をしない。

  (貰ったパンは夜食にしよう)

 そう心の中で決めていると、荒崎が真剣な顔で悠のことを見ていた。

「…盲点でした。次はもっと早く…いや、1番に買ってきます」

「…パシリみたいなことしなくていいし、俺の事はほっといてくれ…」

 周りのクラスメイトの視線が痛い。

 これから自分が他人にどう見られるのかを想像すると、悠は深くため息をはいた。






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