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神のいない世界  作者: ウニ
全ての始まり
8/64

闇夜

 






 男と出会ったその日、悠は昨日男と遭遇したビル…ではなくそこを見ることができる、少し離れた場所にあるビルのフェンスの上に座っていた。

「あいつ来ると思うか?」

『肯定 あの手の人物は基本的に何も考えずに来る』

「まあ、今日片をつける事ができるって考えればいいか」

 悠は武装すらせずに男がくるのを見張っていた。

 何せ、男が告げたのは場所のみで時間は一切言わなかったからだ。

『敵対者の反応を感知』

「…やっとか、q2」

『j9と呼ばれた抱魂機が先行してこちらに向かってきている』

「しばらく様子を見る」

『了解』

 悠はフェンスから降りると、相手から死角になる場所に身を潜めた。

 そうして、しばらくするとj9と呼ばれていた鳥型の抱魂機が現れた。

『おいおい!あいつらまだ来てないのかよ!待ち伏せして蜂の巣にしてやれるじゃん!』

 j9が騒ぎながらビルの上を旋回しはじめたのを確認すると、悠はq2に目配せをする。

『了承 ──遠距離攻撃武器展開』

 そうすると、悠の手にはライフル銃が現れる。

「こういった類のものはあんまり得意じゃないんだが…」

 悠はライフル銃を構えると、j9に照準を合わせ引き金に指をかける。

『目標にこちらを察知した気配はない』

「………」

 悠が引き金を引くと同時に鈍い音が辺りに広がる。

 そうして、風を切りながら飛ぶ弾丸はj9に命中した。

『…いっ!なんだこれ!どっから撃ってきやがったんだぁ!?』

 胴体部分を狙ったのだが、弾は翼に当たったらしく飛行が上手く行えないようだった。

「…やっぱりこれ系はお前に任せるわ」

『当たっただけ以前より進歩している』

「うるさい。それよりも、あいつの主人はどこだ」

  『まもなくこちらに到着する』

 それを聞くと、悠はライフル銃を手放す。

「いくぞ」

 悠は物陰から出ると闇に紛れながらビルへと向かいはじめた。



 *



 悠がビルへと着くと既に、男がその場にいた。

 先程狙撃したj9も男の頭の上に居座っている。

「やっと来たのか!お前が遅ぇから俺のj9が狙撃されただろうが!」

「いや、それやったの俺なんだが」

「…は?!」

 悠は呆れたように目を細めると、男はまるで何を言っているのか分からないと言いたげな目で悠を見た。

「なんというか、お前本当に頭悪いんだな」

「うるせー!不意打ちなんて卑怯だろ!?」

「お前が馬鹿正直すぎるだけだろ…」

 男が騒げば騒ぐほど悠は冷めていく自分を自覚した。

「…さっさと終わらせるか」

『同意 これ以上の会話は無意味。──近接攻撃装備及び武器を展開』

「舐めやがって!──j9!やれ!」

『おうよ!舐められたまんまで終われるかってんだ!』

 


 *



「j9!あいつのすかした顔面に鉛玉ぶち込んでやれ!」

『任せろマスター!やつの頭をぶち抜いて風通し良くしてやるよ!』

 j9は悠に向けて無数の弾丸を放つ。

 悠はそれを避けながら、相手の出方を伺うと眉をしかめた。

「…昨日より威力が上がってるな」

『防御強化より避ける方が確実だろう』

 悠はあらゆる方向から打ち込まれる弾丸を、身をひねりながら避ける。

『ちょこまか動き回るなよ!当たらないだろ!』

  j9は弾丸を打ちながら悠を追いかける。

 だが、悠はj9の打つ弾丸を全て回避し斬り落とすとj9から距離をとった。

「j9!でかいのぶち込んでやれ!」

『了解だ、マスター!』

 弾丸が当たらないことに焦れたのか、男がj9に指示を出す。

 すると、j9の胴から大きな砲台が飛び出す。

『これで終いだ!曲芸師!』

「…遅せぇよ」

『は?』

 悠はj9が砲台を出す一瞬の硬直を見逃さず、そこに身を滑らせた。

「失せろ、鶏野郎」

 悠は呆然としているj9の首を撥ね飛ばした。

 j9が力なくその場から墜落する。

 男は唖然としながらその様子を見ていた。

「次はお前だ」

 悠のその言葉に男は我に返ると、足を縺れさせると尻もちをつきながら後ずさる。

「ま、まて!もうこの場所からは手を引く!だから見逃してくれ!」

「…………」

 悠が無言で男に近づくと、男は怯えたように身を竦ませた。

「頼むよ!虫がいいことを言っていることはわかってる!まだ死ぬ訳にはいかねぇんだ!や、やめろ!来るなって!」

  男の言葉に返事をすることなく、悠は歩を進め男の前に立つ。

「いやだ…!やめてくれ、やめろォォ!」

 悠が刀を振り下ろす。

「……っ!?…………あれ?」

 悠の振り下ろした刀は男の体ではなくその下のコンクリートの床に突き刺ささっていた。

「…失せろ」

 悠はそれだけを男に告げると背を向け、隣のビルへと飛び移り姿を消した。

「…………」

 男はそんな悠の後ろ姿を呆然としながら見送くると、拳を強く握りしめ、何かを決意したように顔を上げた。



 *



『あれで良かったのか』

「人殺しはしたくないって言っただろ」

『貴殿が良いのならそれで構わないが』

 悠は夜闇を駆けながらq2の言葉に耳を傾ける。

「あれだけすれば、あの馬鹿でもさすがに身の程が分かるだろ」

『…ああいった人間は何をするか分からない』

 q2は悠の判断に不服そうに言葉を紡ぐ。

「まあ、また襲撃されたらその時考えればいいだろ」

 q2はまだ何か言いたげだったが、それ以上言葉を発することは無かった。

 





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