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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
61/64

当日

活動報告の方でも書きましたが、今年の更新は12月9日で最後にさせてもらいます。

来年どうなるかはわかりませんが、12月31日に番外編を一本更新しようと考えているのでよろしくお願いします。

 








 目を覚ましてスマホの時計を確認すると、斑目が指定した時間まではまだ余裕がある。

 悠は大きく口を開けてあくびをするとその場で体を伸ばす。

  結局昨日は、一日中眠って体力を回復させることに専念していた。

 悠は気だるそうにベッドから足を下ろすと、しばらくそうしてぼうっとしていたが、やがて軽く頭を振って立ち上がる。

 定位置で待機していたq2をちらりと見ると、一声かけてから部屋を出た。

 リビングに向かうと、荒崎が何やらバタバタと忙しそうに動いている。

「…なにしてんの」

「あ!おはようございます、神無さん!」

 荒崎は悠に気づくと相変わらず大きな声で返事をして、手に持っていたものをテーブルに置いた。

「メシ作ったんで、良かったらどうぞ!」

「え…怖。何作ったんだ?」

「変なもんじゃないですから!ただのチャーハンですよ!」

「チャーハン…?」

 悠はテーブルに近づいて、荒崎がチャーハンと言い張るものを凝視した。

「色、おかしくないか?え、なんで紫…。お前これ、何入れたらこうなるの?」

 悠は何度か瞬きをしてソレを見るが、何度見ても紫色の謎の物体に見える。

 実はまた寝ぼけていて、尚且つまだ疲労が残っているせいで目の前の物がおかしなものに見えているという希望にかけて、悠は慌てて洗面所の冷たい水で顔を洗ってから出直してきたが、紫の物体は紫色のままそこに鎮座している。

 悠は夢でも寝ぼけているわけでもなく、この光景が現実であるということを否応なく突きつけられる。

 無言になりながらも、席に着くがスブーンを手に取ったところで動きが止まった。

 紫色の明らかにヤバい色をしたこの謎の物体を口に入れるにはかなりの覚悟が必要だ。

『──危険物か?』

 悠より一足遅くリビングへと来たq2は、悠が相対しているものを見てそう呟く。

「チャーハンらしい」

『…当機の色彩判別機能は破損していたか?』

「神樹が全快したって言ってたぞ」

『この暗黒物質は生物が食べられるものでは無い』

「そもそもこの色はなんなんだよ…。この家に紫色の食べものなんかあったか…?」

 悠とq2が暗黒物質を前に唸っていると、荒崎が悠の前の席に座った。

「食べないんすか?なら俺貰っちゃいますけど」

「いや、まて。──荒崎、お前に聞きたいことがある」

「なんすか?」

「…米がなんで紫になってんだ?何を入れたらこんな色になる?」

 悠が荒崎を問い詰めるも、荒崎はキョトンとして悠のことを見てきた。

「普通にやっただけですよ?適当に色々入れてみただけですって!」

「具体的に、なにを、入れた?」

「あー、まず、米でしょう。それと卵、あとは…」

「お前はまたサプリとか入れたんじゃないの?」

「サプリ?…いや、まて。お前なんでここにいる」

 自然に会話に入ってきてスルーしそうになったが、なぜ当然のような顔をしてこいつは家の中にいるのかと、悠は引き気味になりながら侵入者である斑目に声をかけた。

「えー?なんかドアノブひねったらドア開いたから、入っていいのかと思ってさ」

 斑目は悠の首に腕を回して寄りかかると、目の前にある紫色の物体を、悠が持っていたスプーンでつつきはじめた。

「お前はなんでいつもそうやって不法侵入するんだよ!?」

「問題なくない?別に取って食おうってわけじゃないし」

「…この際お前がここにいるのは置いておくとして、だ。サプリ入れたってなんだ?」

 冗談だろう、と悠は顔を青ざめて斑目に問いかける。

 斑目が悠の心中を察するわけもなく、まるで当たり前のことを話すかのように、あっさりと真実を告げた。

「サプリだよ。よくスーパーに売ってるやつ。鉄分とかカルシウムとか効率的に取れるようにしてあるあれ」

「……なんでいれた?」

 悠が信じられないものを見るように荒崎を見ると、荒崎はキョトンとしながら首を傾げて不思議そうに悠を見た。

「料理に混ぜて摂取した方が大量に栄養を取れるじゃないっすか!」

「こいつ頭おかしいでしょ?だからキッチンに入れたらダメなんだよなぁ、このバカは」

「もう絶対に入れないわ」

 悠は目の前の暗黒物質を荒崎に押し付けるとテーブルから立ち上がる。

「お前、責任もって全部食えよ」

「え!神無さん食べないんすか?結構自信作だったんですけど…」

「サプリ入れなきゃ食べてもらえたかもなー。サプリがダメだったんだろうなぁ」

「はぁ?!お前に言われたくねぇよ!」

 騒ぎ始めたふたりをしり目に、悠はキッチンに入ると冷凍庫を開けた。

 ストックしておいた冷凍の米を取り出すと、電子レンジで温めて冷蔵庫に残っていた卵を上にのせる。

 それに醤油と鰹節をかけて完成した卵かけご飯を持ってテーブルに戻ると、やけに静かになった荒崎とそれをニヤニヤと笑いながら見ている斑目が目に入る。

「なにしてんだ…」

「えー?こいつが思ってた以上に馬鹿で面白いから見てるだけ」

 荒崎は苦虫を噛み潰したような顔をしてチャーハンを睨みつけている。

 そんな荒崎を気にすることも無く、悠は椅子に座ると持ってきたご飯をテーブルに置いてもそもそと食べはじめた。

  荒崎はしばらくそんな悠の様子を見ていたが、覚悟を決めたようにチャーハンの器を持つと、一気に口の中にかきこんだ。



 *



「まだ死んでんの?」

「…ゆらすなばか」

 案の定、チャーハンをかきこんだ荒崎は、あの後ダウンしてグロッキー状態になっている。

 斑目の運転する車に揺られ目的地に向かいながら、悠は荒崎のつくったものを食べるのはやめようと決意した。

「ほんとーに馬鹿だよなぁ、お前はさぁ。なんでいけると思ったわけ?」

「うるせー…」

 悠は2人のやり取りに入ることはなく、窓の外を流れていく景色をぼうっと見ていた。

  しばらくそうして外の景色を眺めていたが、30分ほどして目的地に着いたらしく車が止まる。

「…着いたのか?」

「一応ね、こっから少し歩くけど悠くん大丈夫?」

「多分、大丈夫だろ…」

 車のドアを開き外に出ると、そこは木々で囲まれている学校のような場所だった。

 斑目の話によると、建物自体は何年も前に放棄されているらしいが、定期的に手入れはされているようで、随分と綺麗な状態で残っていた。

「ここまであの女来れるのか?なんの情報もないのに?」

「ああ、その辺は俺が手回ししといたから問題なし!俺が流した情報だってバレないように細工してあの子の奏者に伝わるように仕込んどいたからね。悠くんが今日ここに来ることはあの子に伝わっていると思うよ、確実にね」

「ならいいけど…」

 ようやく落ち着いたのか、荒崎がふらつきながら車の中から出てくると、j9も荒崎の後に続いて車内から飛び出してきた。

『おお!ようやく外か!ずっと箱の中にいると息が詰まるぜ!!』

「お前呼吸してないじゃん」

『うるせぇ!気分の問題だよ!』

 斑目にからかわれながら、外を飛びまわるj9は未だに気分が悪そうな荒崎の事など気にもせず建物の方へ飛んでいった。

「おい、大丈夫か?」

「神無さん…!大丈夫っすよ!このぐらいなんともありません!」

 悠に声をかけられた荒崎は空元気を出しながら、アピールするも、顔が真っ青になっているため締まらない。

  悠はため息をついて、本当にこのメンバーで大丈夫なのかと不安になってきた。



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