処置
神樹はドアに掛かっている南京錠を開き、ドアを開くと荒崎と斑目を中へ入るように促した。
神樹の後に続いてドアをくぐると、そこには下へと向かう階段があり、神樹が迷うことなく階段を下っていった。
荒崎は神樹の後に続いて下に降りていくと、何やら薄青色の光が見えてくる。
荒崎の後に着いてきている斑目はやけに静かで、どこか不穏な空気を出していた。
荒崎はそんな斑目の様子に不安になり、ちらりと斑目を見ると、斑目と目が合わないうちにササッと視線を逸らした。
階段を一番下まで降りると、薄青色の光はより一層強く辺りを照らしている。
きょろきょろと周囲を見回すと、いくつかドアがあり、部屋が複数あることがわかった。
神樹はそのいくつもあるドアの中から、ひとつのドアに近づくと扉を開き、荒崎と斑目を手招きする。
「早くこいよ。別にあんたたちのことをとって食おうってわけじゃないんだから」
神樹に急かされながら中に入ると、そこは薄青色の光で満たされている空間だった。
荒崎がその光景に思わずぽかんとしていると、神樹に肩を叩かれる。
「ぼうっとしてる場合じゃないから。ほら早く、奥に進んでよ」
荒崎は我に返ると、慌てて足を動かし始める。
斑目も大人しく神樹に言われるがままに奥へと進みはじめた。
*
部屋の中は思っていたよりも広く、まるで迷路のように棚が置かれていた。
棚の中には様々な鉱石や鮮やかな色をした液体等のよく分からないものでぎっしりと埋まっている。
荒崎がそれらを不思議そうに見ながら先に進んでいると、不意に先頭を歩いていた神樹が動きを止めた。
「んじゃ、そろそろあいつのいる所に着くけど、あまり騒ぐなよ。──特に荒崎くん」
名指しで注意された荒崎は、こくこくと頷いて神樹に返事をした。
「うん、わかったならいいよ。…あいつも起きてたらいいんだけど、8割がた寝てるからなぁ」
神樹が棚に手を触れると、触れた棚が横に移動をした。
そうしてできた空間に入っていく神樹を追いかけて、荒崎と斑目も後につづく。
その空間には奥の方に大きめのベッドがひとつと、椅子とテーブルのセットが置いてあった。
そして、そこも薄青色の光で満たされていてどこか不思議な感覚になる。
「こっち、あまり音立てないようにしてくれよ」
神樹は荒崎と斑目を奥にあるベッドへと誘導する。
2人は神樹の後についてベッドへと近づいていくと、ベッドの真ん中に毛布で作られた山があった。
神樹が迷うことなく毛布を剥ぎ取ると、中には悠が丸くなって眠っていた。
「神無さん…」
「やっぱり寝てたか。まあ、もしかしたら起きるかもしれないし、ここでちょっと待ってる?」
「はい。そうします」
「ねぇ…、1つ聞きたいんですけど、いいですか?」
「…なに」
辺りを観察していた斑目が神樹に向かい口を開くと、神樹は嫌そうな顔をしながらも斑目の問いに耳を傾ける。
「悠くんの包魂機、どこにあるの?」
「…なんで?」
「いえ、ただ気になっただけですよ。この部屋の近くに包魂機のいる気配がしないので」
「ちゃんと近くにいるし、あんたが気にするようなことは無いよ」
「それならいいんですけどね…」
「…q2に会いたいなら後で会わせてやるよ」
斑目と神樹の話の意味が分からず、荒崎は不思議そうにしていたが、興味が無くなったのかベッドの近くにあった椅子に腰を下ろした。
*
神樹が斑目に悠の包魂機と会わせると言い、斑目を連れて部屋を出ると、部屋の中はしんと静まりかえっていた。
荒崎は眠り続けている悠をじっとみていたが、悠は身動きひとつせず本当に生きているのかが不安になる。
しばらくの間ぼうっとしながら、そうしていたがふと気になる事を見つけ立ち上がると、部屋の中にある棚に近づき中を覗き込んだ。
棚の中には斑目が上の工房で物色していた薄青色の液体で満たされた小瓶がいくつも入っている。
「…これ、なんなんだろうな」
『さあな?なんかヤベぇもんじゃねえのか?あいつが持ってるってことはよぉ』
「なんか、斑目もこれのこと知ってそうだったよな」
『そうだったか?あいついつもわけわかんねぇからな』
j9は荒崎の肩に乗りながら、荒崎と同じように小瓶をじっと凝視している。
『…これよぉ、なんか、すっげえ弱いけど霊力を感じる』
「霊力…?」
『なんつーか、この瓶で霊力を感知しずらくしてるみてぇ』
j9が首をくるくると傾げながら訝しげに荒崎を見た。
「霊力、か…」
荒崎はもう少しよく見てみようと、小瓶に手を伸ばした時、背後で何かが動く気配を感じた。
その気配に慌てて後ろを振り返ると、悠が体を起こし片手で頭を抱えていた。
「神無さん!」
荒崎が悠に駆け寄ると、悠はまだぼうっとしているのか、視線がフラフラと動き焦点が定まらないようだった。
「神無さん、俺の事分かりますか…?」
「…………」
悠は荒崎の問いかけに答えず、不思議そうに荒崎のことを見るばかりで要領を得ない。
そうしてしばらく、荒崎と悠の間には無言の時間ができたが、やがて、ぽつりと悠が口を開いた。
「……おまえ」
「はい、なんですか!?」
「おまえは、なんで、ここにいるんだ…」
「神無さんに会いに来たんですよ!」
「…物好きだな。こんな、何も…無い、真っ暗なところに、くるなん…て」
悠は荒崎と話しながらも、徐々にうつらうつらと船をこぎ始める。
「神無さん…?」
「馬鹿な、やつ…」
それっきり、悠は目を閉じてしまい、言葉を発することは無かった。
荒崎はそんな悠の様子に慌てながらも、とりあえず悠を横にしようと、悠の体に手をかけた。
その時、ちょうど神樹と斑目が帰ってきたようで後ろから声が聞こえてくる。
「──あんたの心配するような事態じゃなかっただろ?」
「そうですね、もう少しあなたのことを信用するべきでした。…あらら、荒崎、お前何してんの?悠くんの寝込みでも襲ってた?」
「おそうっ…!?違うっての!!」
荒崎は慌てて斑目の言葉を否定して、悠をベッドへと寝かせる。
斑目はそんな荒崎の様子を見ながら口を押えたが、笑っているのが隠しきれていない。
そんな2人の様子を見ていた神樹は呆れたように斑目をみた。
「あんたさぁ、年下の子供いじめて楽しいか?」
「はは…、これは随分と手厳しい。まあ、楽しからやってるんですけどね」
ヘラヘラとしている斑目をジト目で見ながら、神樹は荒崎へと視線を移す。
「もしかしてさ、あいつ起きてた?」
「あ、はい。少しだけですけど…」
神樹は悠の眠っているベッドへと近づくと、悠の首筋に手を伸ばす。
「…まあ、大丈夫か。こいつなんか言ってた?」
「少し、話しました」
「そう…か」
「あの、神樹さん。ここにある小瓶の中身なんですけど…」
「気になる?」
「それは、まあ…、気になりますよ」
神樹は1番近くの棚においてあった小瓶を手に取ると、手の中でその瓶を転がす。
「これね、まあ、大したもんじゃないんだけど、実体を持たせるのは難しかったんだよな」
「実体を持たせる?」
「そう。まあ、そこの優男君はこれの正体気づいてるんじゃない?」
そう言って、斑目をみた神樹は、どこかイタズラの成功した子供のような顔をしていた。
そんな神樹に指名された斑目は、居心地悪そうに神樹から視線を逸らす。
「合ってるか、分かりませんけど…。これ、────霊力ですよね?」
「おお、さすが!大正解だ。正解者には君のそのポケットに隠してある小瓶を差し上げよう」
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