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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
53/64

接触禁止

 







「…まあ、俺も最初は悠くんのことヤバい子だと思っていたんですけど、ね」

 斑目は神樹の疑問に答えるため、口を開いた。

「悠くんが殺害した調律師って、基本的に良くない噂があるヤツらばかりだったんですよね。彼に再起不能にさせられた人員も、素行に問題があったり、人格的に問題があったりと、俺たちにとっても迷惑な人間だということが、調べていくうちにわかったんですよ。つまり──」

「アイツがあんたらにとって面倒な人間を消してくれる存在だから重宝するってこと?ふざけてんのか?」

「いやいや、違いますよ!そうじゃなくてですね…」

 神樹に睨まれながらも、斑目は説明を続けようと睨んでくる神樹の視線を正面から受ける。

「彼…、悠くんって優しいんですよね。根っこの部分にしっかりと硬い自分の意思があって、他人のために戦える強い子、っていうのが俺から見た悠くんの印象です」

「…それで?」

「実際に俺自身の目で見て、戦って、話した結果、悠くんは信用に足る人物であることが分かったので、共同戦線を組んでもらえるように悠くんに頼みました」

「あんた自身の部下と組むのはダメだったのか?」

「信用できなかったので」

「自分の部下なのに?」

 斑目は神樹の言葉に苦笑すると、荒崎に視線を向けた。

「俺の部下、あんなのばっかりなんですよねぇ…」

 神樹は斑目の視線と短い説明で理解できたらしく、どこか憐れむように斑目を見た。

「…あんたも苦労してんのね」

「わかっていただけたようで何よりです」

「けど、一番大事なことがまだ分からない」

「…俺が国に楯突く理由、ですよね」

 斑目が何を目的として、何を理由に国に逆らおうとしているのか、神樹にはまだ分からなかった。

 そこの部分がはっきりしない限り、神樹は斑目のことを信用できないと、視線を鋭くし斑目に先を話すよう促した。

「まあ、本当に、些細なこと、なんですけど…」

「うん」

「俺の部下が、ちょっとしたヘマをして負傷したんです。その部下は腕を怪我して、しばらくは前線に出ることが難しいって、言われてたんですけど…。ある時その部下に対して、何故か上層部から辞令が送られてきたんです。その内容が、血の牢獄(ブラッド・プリズン)への異動…つまり、事実上の死の宣告、だったんです」

「…なんでまた、そんなことになったんだ?」

 血の牢獄はまともな神経をしていたら絶対に近寄らない、日本国内において最も危険な場所だ。

 そこに送られる人間は、大抵が死刑囚などの死ぬことが確定している者や、国家反逆罪などの極悪犯罪を犯した者ばかりだ。

 そのため、余程悪行の限りを尽くさない限り血の牢獄に送り込まれることはない、と一般には言われている。

 神樹は首をかしげて、斑目の言葉の続きを待った。

「…生贄にされたんですよ」

「生贄…?何に対して?」

「牢獄の主、ですよ。定期的に戦いが困難になった調律師を送り込んで主に食わせているんです。そうすることで主が牢獄から出てくることを阻止している、らしいです。…主が調律師を喰らうことで、牢獄から出てこない理由までは分かりませんけど」

「…胸糞悪い話だな」

「本当に、そう思います。牢獄送りになった俺の部下は、結局戻ってくることはありませんでした。俺はその事で国に疑問を抱いて、独自のルートで色々調べました。そうしたら、出るわ出るわ、国が隠していた悪行の数々が!それを知って、俺は国に仕えることを辞めました。──これが、俺が国をぶっ壊そうとする理由です。納得して貰えましたか?」

 斑目の話は事実かどうかはともかく、斑目が国に恨みを抱くのには十分な理由に思える。

 それでも神樹はまだ、斑目のことを無条件で信用することはできなかった。

 もし斑目が嘘をついて、こちらを欺いていたら全ておしまいだ。

 神樹は選択を間違えないよう慎重に考えをまとめていく。

 そして、神樹が斑目を信用する代わりにある交換条件を口にした。



 *



 荒崎は神樹によって悠の部屋に追いやられたあと、しかたなく、悠が眠っているベッドの横にあるパイプ椅子に休眠中のj9を抱えて、音を立てないように腰掛けた。

 悠は荒崎が横にきても目を覚ますことなく、まるで死んでいるのかのように眠り続けている。

 q2も悠の傍にある棚の上に置かれていたが、反応を示すことなく微動だにしない。

「…神無さん」

 荒崎は小さな声で悠の名前を呼びながら恐る恐る悠の腕に触れた。腕にのばした指先に僅かだが温もりを感じる。

 それでも、悠が生きているのか不安が消えず、悠にかかっていた毛布を少しずらすと、ゆっくりと上下する胸を確認して、ようやく荒崎は悠が生きていると安心することができた。

 はがした毛布を直しながら、荒崎は自身の無力感に苛まれる。

 自分がもっと早く悠の下へ駆け付けることが出来ていたら、こんなことにはならなかったのではないか、と。

 荒崎は今回の指揮体と戦闘を行う少し前に、斑目に頼み込み、霊力を使いこなせるように訓練を行っていた。

 訓練の成果は芳しいものではなかったが、自身ではなく他の物質に霊力を溜め込むことは可能になった。

 今回の戦闘で使用した銃はその訓練の賜物だったが、威力の調整が難しいことと、照準を合わせることが今の荒崎には困難だったため、湊川を撤退させることに手間取ってしまった。

 これからも霊力の訓練は続けていくが、今すぐに悠の力になれないことが歯がゆい。

 今回も、本当なら初撃でおわりにするよていだったが、思いのほか湊川に度胸があったことと、荒崎自身の訓練不足によって、戦闘を終わらせるのに時間がかかってしまった。

 強くなりたいと願っても簡単に力が手に入るなんてことはありえない。

 荒崎は強く拳を握りこんで、決意を新たにした。

「──神無さん、俺、絶対に強くなります。そしたら……」

 自身の決意を口にする荒崎の声は、眠り続けている悠の耳に届くことはなかった。



 *



 斑目との話が終わった神樹は、疲れたように椅子の背にぐっともたれかかった。

 斑目も張り詰めていた空気が軽くなったことで、ようやく一息つくことができたようだった。

 神樹はしばらくそうしていたが、おもむろに立ち上がると悠の眠っている部屋へ、様子を見に向かった。

 部屋のドアを中にいる荒崎に気づかれないように小さく開くと、荒崎がパイプ椅子に座りながらうたた寝をしていた。

 悠はまだ当然の事ながら、目覚めていなかったため、神樹は音を立てないよう部屋に入ると悠の脈を見る。

 規則正しく脈を刻んでいることを確認すると、次にq2へと手を伸ばした。

 q2も消耗が激しいようで、しばらくは霊力の補充のため起動しないだろうと予想を立てる。

 機体に残っている残存霊力を確認すると、通常時の半分以下の霊力しかまだ補充できていない。

 神樹は腕を組みながらすこし思案すると、改めて悠に視線を移した。

 そうして、悠の額に手を乗せると霊力の流れを把握しながら、悠からq2に霊力が流れやすくなるように調整していく。

 悠の体に流れている霊力は「過剰暴走」を行ったことによって、霊力の流れがめちゃくちゃに乱れ、悠の体を内側から傷つけていた。

 それを整え正しい形に戻すことで、乱れていた霊力は落ち着きを取り戻し、今はゆっくりと悠の体内を巡っている。

 神樹は霊力の流れを妨害しないよう細心の注意をはらいながら、悠とq2を繋ぐ霊力の経路を拡げ、q2に流れていく霊力が僅かに増えるよう調整していく。

 通常、調律師の霊力を整える際には包魂機に流れていく霊力を少なくし、調律師自身の体内を巡る霊力を増やすが、悠とq2の場合は真逆のことをした方が回復が早くなる。

 というのも、q2が悠の肉体を回復する術を持っているため、調律師である悠の回復を行うよりq2を直した方が早く復帰できる。

 神樹は霊力の流れに集中すると、少しでも早く悠とq2を回復させるため、しばらくその場に留まり霊力の調整を続けた。












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