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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
52/64

焦燥 ──発見──

 







 幾分も行かないうちに、q2からストップがかかる。

 斑目はその場で足を止めるとq2を地面に下ろした。

「で、悠くんはどこにいるの?」

『此方だ』

 q2がケーブルの腕を伸ばし、瓦礫の壁の一部を指さす。

「いや、そこただの壁じゃん」

『否定。これは当機が創り出したものだ。当機のマスターの生存率を上げるため、防壁を創った』

「キミそんなことまでできるの?万能過ぎない?」

 斑目は軽口を叩きながら壁に空いた僅かな隙間を見つけ奥を覗き込んだ。

「あー、暗くてよく見えないね。r0呼んで壊させるか…?」

『却下。この場所が崩壊する可能性がある』

「確かに。じゃあどうするかな…」

『此方に貴公でも入れる穴がある』

「まって、本気…?」

 q2が示したのは崩れかけている壁の一部。

 大人ひとりなら辛うじてくぐり抜けることができそうな、今にも崩れそうな穴だった。

『ここ以外に貴公が通れる場所はない』

「…まじかぁ」



 *



 斑目がq2に急かされながら恐る恐る穴をくぐりぬけると、予想通り低い天井のせいで身を屈めた状態でいることを余儀なくされた。

 壁の中はあまり広いとは言えず、大人二人がギリギリ入れる程度のスペースしかない。

 斑目は口にペンライトを咥えながら、悠の姿を探した。

 はたして、悠はすぐに見つかった。

 狭い空間で身を縮こませながら、ホコリを被っている姿は、斑目の目にはまるで死んでいるように見えた。

 慌てて悠の傍に近づき呼吸を確認すると、悠は弱く深い息をしながらしっかりと生の鼓動を打っていた。

 斑目はほうと安心したように息を吐くと、悠の体に手を伸ばした。

 悠の体に降りかかっていたホコリを手で落としながら、脇を抱え慎重に壁の中から引っ張り出す。

 斑目が穴から悠を出し怪の有無を確認をしていると、穴の外で待機していたq2が悠の傍に寄ってきた。

『外傷は当機が修復している最中の為気にしなくて良い。内蔵の負傷及び霊力の枯渇が激しく、しばらく安静にする場所が必要』

「はいはい、わかりましたよ。きみって本当に優秀な包魂機だね」

 斑目は悠を背負うとq2を掴み、元来た道を辿りながら地上へと戻るため歩き始めた。



 *



 斑目がr0の広げた穴付近まで戻ると、荒崎とr0に悠を地上まで持ち上げるのを手伝わせようと声をかけた。

「おーい、そこにいる?」

 間延びした声を出しながら穴を見上げると、ひょっこりとr0が顔を出す。

「あれ?お前だけ?荒崎どこ行ったのよ…」

 斑目がため息をついて、r0に指示を出そうとしたその時、上から何かが走ってくる音が聞こえてきた。

「戻ったのか!?」

「荒崎いたの?帰ったのかと思ったわ」

「俺が神無さんのこと置いて帰るわけないだろ!」

「へぇ、随分とゆうくんに入れ込んでるね。お前にしては珍しいじゃん」

「あんたには関係ない。…それよりも、神無さんは無事なのか?あんた変なことしてないよな!」

「なんもしてないっての。これから悠くんのこと上にあげるからお前も手伝えよ」

 斑目は悠の体を持ち上げると穴の外にいる荒崎に悠の体を渡し、荒崎が悠をしっかりと引き上げたことを確認してから、自分はq2を抱えたままr0の力を借りて穴の外へと出た。

「さて、これからどうしようか…」

 無事に地上に出てきた斑目は、r0を撫でながら悠を抱えている荒崎の方を見る。

「お前さぁ、悠くんの調整師が誰か知ってる?」

「なんであんたにそんなこと教えなきゃいけねぇんだよ」

「悠くんのためだけど?この子、体の中今ぐっちゃぐちゃだから、急いで調整してもらわないと不味いかもよ?」

「は!?それを早く言えよ!」

 荒崎は慌ててj9を呼び寄せると、ふと何かに気づいたのか、まるで苦虫を噛み潰したような表情で、無理矢理捻り出すように声を出した。

「…俺じゃあ神無さんのことを抱えて走れねぇ。あんたに任せてもいいか?」

「おーけー、道案内は頼んだからね」



 *



 荒崎の案内のもと、斑目は悠を背負い夜の街を駆ける。

 ついさっき、悠が指揮体を破壊したことで蟲型の機械魔獣の動きは無くなっているが、r0とj9には保険として周囲の警戒をするように指示を出した。

 斑目は荒崎の背を追いかけながら、できるだけ悠の体に振動が行かないよう注意しながら走る。

 しばらく荒崎の後について行くと、しんと静まりかえっている繁華街へと辿り着いた。

 人気の無い道を進みながら、さらに裏路地へと入っていく。

 荒崎は路地にある扉のひとつに手をかけると、中に入っていった。

 斑目は荒崎の後に続き扉をくぐると、中には先に入っていた荒崎の他にもう1人、人がいた。

「神樹さん…あの、」

「…荒崎くん。説明、してもらっても?」

 中にいた人物は、斑目よりも少し若いぐらいの赤毛の女。

 女は敵意むき出しで斑目を睨みつけながら、荒崎にむかいにっこりと微笑んだ。



 *



「…なるほどねぇ、あいつが例の指揮体倒した時に、負傷して動けなくなったから、そこのに連れてきてもらった、と」

「はい…」

 荒崎はまるで、判決を待つ囚人のように身を縮こませながら、神樹に説明をしていた。

「ほーん。それでキミはアイツを運んでくるのに、わざわざお国の狗に頼んだわけ?」

「いえ、その…」

「まだ隠してることあんなら、さっさと白状しな?」

 今ならまだ許してやるよ、と微笑んでいるが全く目が笑っていない神樹を前に、荒崎は情けない声をあげた。

「あー、少しいいかい?」

「良くないから口挟むな。黙ってろ」

「…随分熱烈な歓迎だねぇ」

 神樹は斑目の方を見ることも無く、斑目の言葉を一蹴する。

 斑目はため息を着くと、腕を組んで壁にもたれ掛かる。

 神樹は工房に足を入れた斑目から、素早く悠のことを回収すると、個室へと連れて行き霊力の調整を行っていた。

 神樹は悠の調整が終わるとすぐに個室から出てきて、荒崎に怒りを込めた声を出し、現在に至る。

(…随分と嫌われたものだね)

 斑目は、どうにか神樹に話を聞いてもらおうと頭を捻る。

 なにか、神樹の信用を得られるようなものがあればと、記憶の中を探る。

 どうするか、と考えひとつ浮かんだのは、悠との契約について説明すれば神樹は話を聞いてくれるかもしれない、ということだった。

 斑目は荒崎に鋭い視線を向けている神樹に、もう一度声をかけた。

「あー、1回でいいから話聞いてくれませんかね、神樹さん?」

「…それをきいたらあんたは黙ってここから出ていってくれるのか?それなら聞いてやるよ」

「俺が悠くんの協力者であるということ、です。それを聞いてから俺の事を信用できるか否か決めてもらえますか?」

 その言葉に神樹は顔を上げると、斑目の方を胡散臭そうに見る。

「…聞くだけ聞いてやるよ」



 *



 神樹が悠のいる個室に荒崎を追いやってから、斑目は悠との取引、m9のこと、国が隠しているものについて、斑目が知っているものを全て吐き出すと、神樹は両手で顔を覆い隠した。

「…あんたの言っていることが事実なら、あのバカとあんたは共犯者、ってことになるけど私の解釈間違ってる?」

「その認識であってますよ。俺は彼と協力関係にある。どちらかがヘマして国に俺たちがやろうとしていることがバレたら2人揃って終わり、ってこと」

「…あんたは、国に忠誠を誓ってるんじゃないの?というか、あんたがアイツに協力するリスクが高すぎるだろ。よく協力関係築こうと思ったね、馬鹿なの?」

「それはまあ、俺は彼のことを一方的に信用してたので」

「国の狗があいつの事を良いように話すとは思えないけど」

 神樹は最初の時に比べると、多少トゲの取れた表情で斑目に話しかける。

 悠はフリーの調律師として、独自の縄張りを持っている。国に所属している調律師が悠の縄張りを狙って襲撃を仕掛けてきたのは1度や2度では済まない。

 悠は襲撃されるたび、相手の調律師を迎撃する際に、過剰なまでのダメージを与えていた。

 ただ負傷させるだけなら、どこにでもある縄張り争いの一つとして処理されただろうが、悠は襲撃してきた調律師を、再起不能になるまで徹底的に追い詰めていた。さらに最悪の場合は、命すら奪うことから、国の調律師からは接触禁止とまで言われている。

 これらのことを踏まえても、国の調律師である斑目が悠のことを好意的に見ていたとは、神樹には信じられなかった。







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