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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
49/64

 









 悠は指揮体と向かい合うと、一触即発の空気の中指揮体の隙を探りながら刀を構えた。

 指揮体は突然の襲撃者である悠への怒りを抑えきれないのか、先程から口元と思われる場所にある牙がカチカチと音を立てている。

 その様子を見ながら、悠は自身の体に霊力を巡らせていく。体内の霊力を手足に集中させることで身体能力の向上を図り、素早く万全の体制で動けるようにする。

 お互いに視線を逸らさず、相手の出方を伺うも互いにピクリとも動かず一切の隙を見せない。

 そうして、永遠にも感じられるほどの時間に耐えきれなくなったのか、先に動いたのは指揮体だった。

 指揮体は咆哮を上げながら悠に向かい、大量の糸を吐き出す。

 悠は糸を斬らずに身を捩りながら躱すと、指揮体へと近づき脚を切り落とそうと刃を振るう。

 だがそこまで想定していたのか、指揮体は高く飛び上がると天井へと張り付くと、悠の振るう刃から逃れた。

 指揮体は勝ち誇ったように眼下にいる悠に牙を鳴らすと、改めて大量の糸を吐き出し、絡め取ろうとしてくる。

 指揮体の吐き出す糸は粘性があり硬く鋭いため、迂闊に触れれば触れた場所が切り裂かれ、さらには触れた場所にへばりつき動きを阻害する。

 悠は上から降り注ぐ大量の糸を、ギリギリのタイミングで躱しながらq2に目配せすると、q2は悠の意図を組み、新たに創造した武器を悠の手元に出現させた。

『──推奨、歩脚部位の破壊及び停止』

「…俺が陽動して気を散らす、下に落とせ。同時進行で指揮体の解析を頼む」

『了解』

 悠は指揮体の注意を自分に引きつけるために、q2の作りだした拳銃を構えると、何発か指揮体へと撃ち込む。だが指揮体が1つの場所でじっとしている訳もなく、天井を動き回りながら悠へ攻撃を仕掛けてくる。

 指揮体からの攻撃を避けつつ、q2の存在に気が付かれないようわざと音を立てて動き回り、弾を牽制のために撃ちこむも防戦一方へ追い込まれる。

 さらに周囲にある指揮体が張り巡らせている糸が悠の体に傷をつけ、悠の体には着実にダメージが蓄積されていく。

 悠は傷から流れ出る血液に煩わしさを感じながら、血液が流れ出ている額の血を拭いとる。

 指揮体が空間に張っている。目に見えないほど細く透明な糸に小さく舌打ちをすると、持っていた拳銃を指揮体に向けてデタラメに弾を撃つ。

 けれども、指揮体は危なげなく悠の攻撃を避けながら、悠を挑発するように天井にぶら下がり、糸を吐きつつ天井を動き回る。

『砲撃ポイントへ到着。弾丸の装填完了──』

 ちょうどそのタイミングでq2の準備が完了した。あとは悠が上手いこと指揮体をq2の狙いやすい場所に誘導するだけだ。

 悠は弾の無くなった拳銃をその場で投げ捨てると、遮蔽物の少ない場所へと指揮体の攻撃を避けながら向かい、自身を囮にして指揮体が攻撃してきやすいようにわざと体から力を抜きその場に膝をつき俯く。

 その様子は外野から見ると、まるで戦意を喪失しているかのようで、指揮体は愉快そうに牙をガチガチと鳴らしながら悠にとどめを刺すべく、悠の真上へと移動し牙を向けた。

 もう少しで指揮体の牙が悠の首筋に刺さる、その時だった。砲撃の準備を整えていたq2が遠距離からの銃撃によって指揮体へと攻撃を加える。

 q2は何百もの弾丸を一気に放つと、銃撃によって怯んだ指揮体に攻撃の手をゆるめることなく弾丸の雨を浴びせる。

 指揮体は容赦のないq2の射撃に反応できずに、体制を崩して天井から落ちると、慌てて体制を整えようと足をばたつかせる。

 だが指揮体の体制が整うのを待つ訳もなく、悠は立ち上がると指揮体へと接近し、ナイフで前足を斬り落とすと反撃が来る前に後ろに下がり距離をとった。

 指揮体は憎々しげに悠とq2を睨むように、いくつもある目を蠢かせる。

 悠は手に持っていたナイフを手放し、腰に差してある刀に手をかけると、いつでも抜刀できるよう柄を握り、力を込めながら指揮体を睨みつけ、q2を傍に呼んだ。

「…解析できたか」

『肯定。だが──』

「良くない結果、か」

『──解析の結果、貴殿の勝率は3割ほど。それも』

「…力を使うことが絶対条件、か?」

『肯定。──さらに、この建物は耐久値が著しく下がっているため貴殿の力に耐えきれず、恐らくだが、崩落するだろう』

「…最悪だな」

 悠とq2が情報の交換をしていると、指揮体が怒りをあらわにしながら爪を振り回し、悠に飛びかかってきた。

 悠は単調なその攻撃を横に飛んでかわすと抜刀し、指揮体とのすれ違いざまに、足をさらに斬り落として着地する。

 今は指揮体の関節を狙う事で足を斬り落とし機動力を奪うことができているが、指揮体の身体は霊力を大量に蓄えていることもあり凄まじく硬いため、足以外の固く分厚い装甲で守られている関節部分を狙うことが難しい。

 迂闊に攻撃をすれば武器がダメになる。そのため、脆い場所を探りながら攻撃を与えていかなければならない。

 地道に戦っていれば、こちらが圧倒的に不利になっていく。

 q2の提案がこの状況を打破することができることは悠にも分かっている。けれど失敗すれば後が無くなる諸刃の剣だ。

 悠は怒り狂い地団駄を踏む指揮体を視界に入れると、一瞬だけ固く瞳を閉じて何かを決意したように目を開く。

「…しかたないか。──q2、やるぞ。サポートまかせた」

『了解。健闘を祈る』

 q2が悠との霊力のパスを通じて、悠の体内にある霊力を偏りのないように安定させながら全身に巡らせていく。

 悠はq2が整えた自身の内にある霊力を意識して、深く深呼吸をすると、瞳を閉じてゆっくりと口を開く。そうして、ぽつりと、一言。

「──過剰暴走(オーバーロード)

  その一言で、悠の世界は真っ白に弾け飛んだ。


 







 

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