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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
46/64

討伐 上

 






 夕方を少しすぎて空が赤くなってきた頃、悠は自室で一人、机に向かい座っていた。

 ぼうっとしながら藍原に貰ったリングを手でいじっていると、階下からドタバタと大きな音が聞こえる。

 今日の昼過ぎに荒崎が帰ってきてから、それ以降リビングで何かやっているようだった。

 q2は荒崎の様子を見るために、既に一機でリビングへ向かって行ったらしく、悠が目を覚ました時には部屋にいなかった。

 悠は手の中にあったリングを机の上に置くと、いつものカバンを手に持ちリビングへ向かうことにした。

 リビングに向かうと、案の定j9とq2が揉めており荒崎はそんな二機の間に入って口論を仲裁しようとしているようだった。

「落ち着けって!そんなに揉める必要ないだろ?な?」

『マスターは黙ってろ!今回こそはお前のその機体(からだ)ぶっ壊す!』

『理解不能。これ以上知能指数が低いことを自身の手で露呈するのはやめるべきでは?』

『本当に頭にくる奴だな!お前ぶっ壊してガラクタ置き場に捨ててやるよ…!』

 悠は呆れたように二機を見ると、仲裁していた荒崎が悠に気づき、助けを求めるように見てきた。

 荒崎のその様子に溜息をつきながら、悠はq2に近づき頭部を両手でがしりと掴む。

『──当機は』

「悪くないって言うんだろ。近づくと必ず言い合いになるんだから離れてろよ」

 q2を掴んでいた手を開き解放してやると、その間にj9の方も落ち着いたのか荒崎の頭の上に身を降ろしていた。

「なあ、今日なんだけどさ…」

「指揮体の討伐ですよね!同行します!」

「…q2に聞いたのか?」

 悠は荒崎に今夜指揮体を討伐することは言っていないはずだと首を傾げる。

『肯定。貴殿が寝ている間に当機が説明した』

「そうなんですよ。q2に教えてもらいました!」

「どう動くかも聞いたのか?」

「それはまだなんですけど…」

「じゃあ説明するから、そこ座れ。1度しか言わないから、ちゃんと話聞いておけよ」

 悠は荒崎をソファに座らせると、今夜の計画を伝えていく。

 前日に悠がq2と共に仕掛けておいた爆弾を起爆させたあと、荒崎には周辺に彷徨いている機械魔獣の破壊を任せる。

 悠は荒崎が機械魔獣の相手をしている隙に、指揮体の破壊を行う、という簡単なものだ。

 だが今回の標的である指揮体は、今まで破壊してきたどの個体よりも手強い相手になる。

 つまり、言うことは簡単だけれども実際計画どおりに動くのは難しいというのが現実だろう。

 悠の考えとしては、荒崎は陽動として機械魔獣の破壊はできずとも、注意を引ければそれで十分時間が稼げる。

 指揮体の破壊を担当する悠は、荒崎が敵の注意を引き付けているうちに、指揮体の討伐を行う。今回の指揮体は、最初から全力でいかなければ瞬時に殺害されると可能性がある。

 悠は深く息を吐くと、何度か指揮体との戦闘を頭の中でシュミレーションしていく。

 隣でそわそわとしている荒崎を、ちらりと横目で見ると声をかけた。

「…今夜中にケリをつける」

「はい!」

 悠は荒崎の返事に不安になりながらも、暗い夜になるのを待った。



 *



 空が濃い紫色に変化し夜になる少し前、悠は荒崎と共に遊園施設の全体が確認できる場所で待機していた。

 機械魔獣の活動時間は夜。夜になるまでは、機械魔獣は姿を隠していることから見つけにくい。

 そのため機械魔獣が姿を見せる活動時間を狙い討伐する。

 悠は夏の蒸し暑さに耐えながら、少しでも暑さを和らげようといつものフードを外すと、手で顔を扇ぎ、風を起こし少しでも暑さから逃れようと手を動かす。

 ふと荒崎に視線を移すと、荒崎の腰の辺りに拳銃のホルスターが付いていることに気づいた。

 今まではそんなものはつけていなかったはずだと、首を傾げ荒崎に話しかけようとした、ちょうどそのタイミングにj9が姿を現した。

『戻ったぜ!』

「なんかわかったか?」

 偵察に出していたj9は、戻ってくるなり口を開くと問いかける荒崎を無視し、何が楽しいのかケタケタと笑う。

「おい!何があったんだよ」

 荒崎が苛立ちながら声を荒らげると、ようやくj9がまともな言葉を口にした。

『マスターの後輩が居たんだよ!ありゃあ、相当キテるな』

「…また、あの女か」

 悠は眉をひそめると荒崎の後輩、湊川(みなかわ) ありすについて記憶を呼び起こす。

 猫型の包魂機を従えている、思い込みの激しいタイプの人間だったことを思い出した。

 また何か変なことを誰かに吹き込まれでもしたのかと、悠は嫌そうな顔を隠すこともせずに嫌悪を露わにする。

 もしこちらの邪魔をすることが目的なら、指揮体の破壊よりも先に湊川を排除しなければならない。

 どうするか考えていると、荒崎がおずおずと自信なさげに悠へと声をかけた。

「あの、」

「なに」

「あいつが…湊川がここに現れた時には、俺が対応をしても良いですか?」

「できるのか?」

「やります!絶対に神無さんの邪魔はさせません!」

 荒崎はグッと手を握り、その顔に覚悟を顕にしながら悠をみる。

 悠は荒崎の提案を聞くと、どうするべきか少しの間考えると答えを出した。

「…あの女はお前に任せる」

「はい!」

「ただし、情を見せるな。俺たちの敵になると思ったらその瞬間に殺せ。俺は何度も同じヤツを見逃してやるほどお人好しじゃない」

「…わかりました!」

 荒崎は悠の言葉に表情を一瞬固くしたが、その後しっかりと頷いた。

 悠は携帯を取り出し時間を確認すると、空を見上げた。

 既に陽は落ちて辺りは暗く、人影も消えてしんとした空気が流れはじめている。

「…そろそろ始めるぞ」

「はい…!」

 悠は戦装束へと姿を変えると、q2に指示を出しカウントを開始させる。

『確認。60秒後、一斉に起爆を行う』

「ああ、頼む。…荒崎」

「はい!」

「お前は今から持ち場に向かえ。派手に動いて敵を陽動してこい」

「わかりました!!」

『行くぞ、マスター!』

 荒崎がj9と共に持ち場に向かい、その場から消えると、悠は呼吸を整えるために深呼吸をする。

「…さて、やるぞ」

『肯定。必ず成功させる。──爆破まで後3、2、1、』

「…ぜろ」

 大きな爆発音とともに赤色が悠の視界に写りこむ。

 それを合図に、悠は遊園施設へとまっすぐ駆け出した。


 







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