前準備
翌日、布団から動くのが億劫でしばらく携帯をいじりながらごろごろしていたが、このままだとダメになる気がして夕方頃に部屋から出ることにした。
荒崎からは携帯に、【夜には合流する】とメールが
来ていたため、少し早いが悠は一人で狩りに行く準備を始めた。
敵の指揮体は糸の性質や、配下の機械魔獣が蟲型であることから恐らく蜘蛛の能力を持っていると考えられる。
悠一人で倒すことが難しいことはすでにわかっているため、どうにかして指揮体を表に引きずり出し、こちらのペースに持っていくために必要なことを考える。
蜘蛛は暗くジメジメとした場所や、身を隠す場所が多くある所に生息する習性がある。
前回の探索で意図的に作られているような、そういった場所をいくつか見つけておいた悠は、携帯のマップにピンを打ちながら、効率的に回れるルートを考えていると、ふとあることに気づいた。
ピンを打った場所が円形になっており、とある建物を囲むようになっているのだ。
中央の建物は、10年以上も前に破棄された遊園施設。
今では人気もなく寂れた場所になっているが、ここに何かあるような気がしてならない。
色を変えたピンをその場所に打つと、悠は1度手を止めた。
まるで遊園施設を隠すように、わざとそういう場所が作られているように感じる。
そこまで考えて、ひとつの仮説が浮かび上がった。
中央の遊園施設を守るために、自身で作った場所を囮として使っている、と。
もしくは──
悠は目を細め、腕を組むとq2に声をかけた。
「…q2」
『呼応──用件は?』
「これ、お前ならどう見る?」
悠はq2に、マップに打ったピンを見せる。
『作為的。罠のようにも見える』
「だよな…」
『中央の建築物に何かある可能性もあるが──』
「嵌めようとしてる可能性もある…か」
『どのように動く?』
「罠だとしても中央の建物が気になるな。なら、そうだな、こっちから飛び込んでいくか…」
『推奨できない。身動きが取れなくなる可能性』
「なら周りの隠れ蓑から当たるか?」
q2は、もし表情があれば恐らく苦虫を噛み潰したような顔をしているであろう声音で提案を出す。
『──同意。中央へ直接攻め込んだ場合周囲から反撃の可能性がある』
「…なら、今日は指揮体の討伐に向けて仕込みをする」
『了承。多少の手伝いなら当機にも可能』
悠はq2の意見と自身の考えをすり合わせると、今日は周辺の隠れ家に仕込みをしかけ、翌日に指揮体を破壊することに決めてその場から腰をあげる。
いつものカバンを背負い、q2に中に入ってもらうと外に出るためドアノブに手をかけた。
*
「…確実に指揮体を破壊するためにどうすべきか」
『焦らず油断せずに立ち回るしかないだろう』
「それは分かってる」
悠はq2と適当な話をしながら目的の場所に向かっていた。
荒崎には一応連絡を入れたが返信が無いため、今日は悠一人で動くことになりそうだと、q2にボヤく。
q2はそんな悠に対して、思うことがあるのか口を閉ざした。
特に急ぐ必要も無いため、フラフラと歩いていると予定より少し遅くに、最初の目的地に到着した。
「q2」
『了解。創造開始──完了』
q2がその場で作りだしたリモコン爆弾を手に取ると徘徊している機械魔獣に気づかれないよう慎重に動きながら、周囲の機械魔獣をまとめて始末できるように間隔をあけながら、ひとつの目的地に合計3個の爆弾を設置する。
他の場所にも同じように爆弾を設置していくと、数時間かけて目的地の全てに爆弾を仕掛け終えた。。
爆弾を設置した場所は全部で8箇所。悠は設置漏れが無いか確認すると深く息を吐いた。
「あとは、明日q2が爆弾を操作して爆発させれば中央に集中できるか…」
『中央部の遊園施設に何も無い可能性も──』
「分かってる。けどまあ、周辺のどれかが本拠地の可能性もあるが、その可能性は低いだろ」
*
爆弾の設置が終わったあと、安全地帯まで移動してから携帯を確認する。
荒崎からは相変わらず返信が来ておらず、悠は首を傾げた。
「あいつ、何やってんだ…?」
『不明。あれ等の思考は読めない』
「…お前にも分からないことってあるんだな」
『疑問。貴殿は当機を万能検索機とでも思っているのか?』
「そういう意味じゃない」
q2との問答を終えると、悠は携帯をポケットにしまい、夜が明けてきている空を見上げた。
ぼうっとその光景を見ながら、次の夜について考える。
「…上手くいくと思うか?」
『不明。成功確率は5割ほど』
「結構高い確率だな」
悠はケラケラと笑いながら、顔を出しはじめた陽の光を感じると息を吐きながら目を閉じた。
*
夜明けを見届けてから家に戻ると、荒崎はまだ戻っておらず一体何をしているんだと、若干の不信感が募る。
衝動のまま携帯をリビングのテーブルの上にほおり投げると、浴室へ向かう。
服を脱ぎシャワーを浴びるとすぐに浴室から出た。
頭をガシガシと拭きながらリビングに戻り、机に投げた携帯をq2に取ってもらうとそれをポケットへ押し込みキッチンへ向かう。
冷蔵庫から水を取りだし喉に流し込むと、ようやく一息つけた。
やれるだけの事はやった。後は、明日の夜仕掛けが上手く動くのを祈るだけだ。
水を冷蔵庫へ戻し、部屋にもどる。その途中でタオルを洗濯機にほおり投げると、q2と話をしながら部屋の扉を開いた。
「明日、夕方まで寝るから」
『了解。…アレから連絡が来た時はどうする』
「あー…、内容確認して重要だったら起こしてくれ」
『承知した』
悠は布団にダイブし部屋のエアコンのスイッチを入れる。リモコンをベッドベットに置くとすぐに涼しい風が部屋を冷やしはじめ、真夏の暑さから開放された。
「…今日も暑かった」
『同意。今日の最高気温は例年を上回っていた』
「だよなぁ…。せめてもう少し涼しければ──」
『貴殿の装備は暑苦しいからな』
「お前が作ったやつじゃん、あれ。俺の意見ガン無視したのお前だよな?」
『記録にない』
q2はフイとそっぽを向くと、話すことはもうないとでも言うように机の定位置に言ってしまった。
悠はそんなq2を呆れるように見ると、ため息を零す。
生地の薄い布団を頭から被り、視界からの情報を全てシャットアウトすると目を閉じ、明日に備えて体調を整えようと眠りについた。
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