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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
38/64

不和

 








 女の包魂機が繰り出す攻撃を避けながら、悠はどうしてこうなったと自問自答するが、何度考えても荒崎のせいだという結論しかでこない。

 女の包魂機の爪が頬を掠め傷をつける。

 悠はそれを気にすることなく後ろに下がると、背にコンクリートの壁が当たった。

 それを見越していたのか、包魂機が真っ直ぐ悠へ突っ込んでくる。

 自身に噛み付こうとする包魂機をちらりと見ると、悠は足に力を込めて飛び上がる。

 q2を掴み空中に一瞬浮かび上がると、女が驚いたように悠を見ていた。

 悠は片手に刀を掴むと女の包魂機目掛けて切っ先を突き立てる。

 包魂機は慌てたように後ろに下がろうとするが、悠の刃が一歩早くその刃を通した。

 包魂機は刃から逃れようともがくが、刃は地面まで刺さり串刺しの状態になっているため、逃げることは困難な状態だ。

 悠はもがいている包魂機を一瞥し、女に視線を戻した。

「俺はあんたに縄張りから出ていってほしいだけだ。今なら見逃してやる、さっさと失せろ」

「なんであんたの言うことを聞かなければならないのよ!そんなのお断りよ!」

 女は後ろに手を回すと、その手には拳銃が握られていた。

 銃口を悠へ向けると、引き金に手をかける。

「あんたが悪いのよ…!さっさとくたばりなさい!!」

 女が指先に力を込めると弾丸が発射された。

 悠はそれを小太刀で斬り落とし女に肉薄すると、女の片手を掴み後ろにまわし固定する。さらに首元に小太刀の切っ先を押し当てた。

「なぁ、降参してくんない?」

「嫌よ…!」

 女はめちゃくちゃに体を動かしながら、悠の拘束を解こうと暴れる。

 だが、そう簡単に逃げられるはずもなく、女は無駄に体力を消費しただけになった。

 息を荒らげながら、憎々しげに悠を睨めつける女をどうするかと考えるが、どう動いてもいい結果になる気がしない。

 考えることが面倒になってきた悠は、いっそ殺してしまうかと、小太刀を持つ手に力を込める。

 そんな悠の考えを察したのか、女は動きをピタリと止めた。

「あんた、本気で私を殺す気なの…?」

「お前がもう少し利口だったらこんなことしなくて済んだんだけどな」

「っつ…!分かってるの!?私は国に所属してる調律師なのよ?その私を殺せば、あなたどうなるか分かっているの!?」

「バレなきゃいいんだよ」

「あんた…!」

 女は初めて怯えを含んだ表情をしながら、悠が持つ小太刀をみる。

「冗談よね…?」

「ふはっ…、まさか!冗談?…傑作だよ」

 悠は手に力を込めると小太刀を小さく横にずらす。

 女の首からは赤い筋が伸び、服に赤黒いシミを作る。

「やめ、やめてよ…!」

「なんで?」

「…え」

「なんでお前は本気で俺の事殺す気できたのに俺がお前を殺したらいけないんだ?」

 女は悠の言葉に呆然とすると、手足をめちゃくちゃに動かしはじめる。

「離してよ!はなせ…!」

「お前には、覚悟がない。誰か人を殺すのなら、自分も誰かに殺される覚悟をもて」

 そう言うと、悠は小太刀を一閃させた。

 女は一瞬身体を震わせるとその場にくずおれた。



 *



 悠が家に戻ると、案の定荒崎と斑目が言い争いをしていた。

 言い争いと言うよりは荒崎が一方的にやられているだけだったが。

 悠は気づかれないように自室に行きパーカーを脱ぐと、リビングに向かった。

 相変わらず口論は続いていたが、2人が悠に気づくとピタリと口論は収まった。

「神無さん!お疲れ様です!」

「悠くんおかえりー。どうだった?」

「…これからは、自分の尻拭いは自分でやってくれ」

 悠が疲れたようにソファへダイブすると、荒崎が慌てながら傍によってきた。

「斑目がまた変なもん持ち込んだんですか!?しばきましょうか!?」

「…今回の原因お前だよ」

「はい?」

「…だから、お前の後輩が襲ってきたんだよ」

 荒崎が驚いたよう目を丸くする。

 悠はそんな荒崎へ、さらに追い打ちをかけるよに言葉を放つ。

「お前の知り合いに、猫型の包魂機を従えてる女っていたか?」

「…あ、ひとりいます!確か、」

湊川(みなかわ) ありさちゃんでしょ」

「知ってるのか?」

 荒崎が答える前に斑目が口を挟んできた。

 悠はすいと視線を斑目に移すと、続きを促す。

「まあ、ねぇ…。あの子も荒崎と同じで割と頭がポンコツなんだけど、任務の成功率はそこそこ高かったから覚えてるよ」

「…国の調律師ってあんなのばかりなのか?」

 悠がジト目になりながら斑目に質問すると、斑目は首を振りながら否定した。

「そんなことないんだけどねぇ。けどまぁ、悠くんが遭遇した調律師がたまたまバカ2人と俺だけだから、今否定しても信じらんないでしょ」

「まあな。…というか、自分でおかしいって自覚あるなら直せよ」

「俺みたいのがいないと新しい子が萎縮しちゃうじゃんよ。んで、話戻すけどさ、悠くんはありさちゃんのこと、どうした?」

 斑目は視線を鋭くし、悠に問いかける。

 悠はそんな斑目の質問に対して、つまらなそうな顔をしながら口を開いた。

「殺してはいない。ただ脅かして気絶させただけだ」

「へぇ、悠くんにしては随分優しいやり方だ。荒崎の前に悠くんの縄張り奪いにきた調律師の事は、バラバラに分解してダンボール箱に入れて捨てたっていうのに、どういう心境の変化だい?」

「…アレの性格知ってて聞いてきてるのか?だとすれば、お前は随分と心が広いんだな。神父にでも転職した方がいい」

 悠は斑目の挑発に乗ることなく、斑目からの質問を切り捨てると、ホッチキスでまとめられた資料を取り出した。

「…俺と荒崎が破壊した機械魔獣の調査結果だ」

「へぇ、ちょっと貸して」

 斑目はさっきまでのピンとした気配を消して、悠が取り出した資料に手を伸ばし読み込みはじめる。

 そうして、しばらくして資料を読み終わると、深く息を吐いた。

「これ、元の所有者探れるかもしれない」

「本当か?」

「まあね。戦車の包魂機なんてそもそも絶対数が少ないし、こっちの鳥型の方も、モデルが分かればすぐに調べられる」

 斑目は、包魂機の所有者がわかり次第連絡すると言うと、資料を悠に戻した。

 その後で斑目も、自身のカバンからファイルを取り出す。

 それを悠に手渡すと、目を細めて中の書類を読むように促した。

 ファイルから書類を取り出し、内容に目を通すと、そこにはm9(ミク)についての情報が事細かに記されていた。

 悠はじっくりと書類に目を通すと、斑目にファイルごと書類を返した。

「今までm9が現れた場所だが、国が所有している施設がある所に出現しているな」

「そうなんだよね。…だから、国のお偉いさん方もm9のことを無視できなくなってきてるんだけど」

「m9がそういう場所に現れる理由、お前は知ってるんだろ」

「そうだね、知ってるよ」

「さっさと話せ」

 悠が斑目を急かすと、斑目は口角を上げさも面白そうに口を開いた。

「──機械炉だよ。この国で最も重要な設備のひとつさ」







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