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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
35/64

休息

 







 真夏の炎天下、通学路を歩きながら荒崎は隣を歩く悠をちらりと見る。

 なにせ悠はこの暑い中、長袖のパーカーを着て、フードを頭からすっぽりと被っている。

 パーカーは薄手のものとはいえ、この時期にそんな格好をしている悠の体調が心配になりながらも、荒崎は黙々と歩いていく悠の後を着いて行く。

「…あの、暑くないんですか?」

「暑い、正直脱ぎたい」

「え…」

「…髪の色、目立つんだよ。変なのに絡まれると面倒だろ」

「あぁ…なるほど」

 悠の髪色は黒色だが毛先に向けて色素が薄くなっており、青くグラデーションがかかっている様に見える。

 荒崎はそれを綺麗だと思っているが、悠の髪色を見て難癖をつけてくる人間がいるということも分かっている。

 それでも、顔を隠してしまうのは勿体ないと少し思ってしまう。

 悠はそんなことを考えている荒崎のことなど気にもせず、額の汗を拭いフードを深く被り直すとこの暑さから少しでも早く解放されるために足を動かした。



 *



 学校に到着すると、荒崎は職員玄関で事情を説明し施錠してもらった扉から教室へ向かった。

 荒崎が戻ってくるまでの間、悠は玄関前にある柱の日陰に入り柱に寄りかかるとカバンからスマホを取り出し、神樹からなにか連絡が来ているか確認したが特にこれといった連絡は入っていなかった。

 やることが無くなった悠は、手持ち無沙汰にスマホを手の中で回しながらしばらく待っていると、荒崎がバタバタと階段を降りてきた音が聞こえる。

 悠はスマホを回していた手を止めると、玄関の方へと視線を向けた。

 荒崎が無事に課題を回収できたあとは、当初の予定通り、学校近くのファストフード展へ入り食事をした。

 行きと同じく徒歩で家まで帰っていると、ふと悠の顔つきが変わる。

 悠の変化に気づいた荒崎は怪訝そうに悠の顔を覗き込んだ。

「どうかしましたか?」

「ん…」

 荒崎の質問に答えることなく、悠は周囲の様子を探っているようだったが、ある地点まで歩くとふっと気を抜いた。

「神無さん?」

「…いや、なんでもない」

 悠はまるで何も無かったとでも言わんばかりに応えると、それ以降は特に何も言わずに歩き続けた。

 荒崎もそんな悠の様子を不思議そうに見ていたが、悠が何も無いと言っているのなら本当に大したことでは無いのだろうと、悠の後に続いて歩を早めた。

 悠と荒崎がその場所から離れてしばらくすると、一つの人影が現れる。

  その人物は2人が消えた方向をじっと見つめていた。



 *



 悠は家に着くと、夏休みの間に出された課題を終わらせようと自室の机に向かい、簡単に片付けられる数学や英語の課題に手をつけ始めた。手を動かしているとあっという間に時間が経ち、気がつけば、外はだいぶ暗くなっていた。

 悠は一旦手を止めると、その場で背中を伸ばす。

 時間は既に8時を過ぎていて、今から作るのは面倒だとストックしておいたカップ麺を出すことにする。

 リビングに向かうと机に突っ伏している荒崎をみつけたが、特に気に振ることなくキッチンの戸棚へと向かい扉を開いた。

 カップ麺を物色していると背後に荒崎が立っている気配がした。

「おまえ、なににする?」

「…辛いやつで」

「ん、わかった」

 悠は自分の分と荒崎のカップ麺を棚から取り出すと、お湯を沸かし始める。

 その隙にカップ麺を開けてお湯が湧くのを待っていると、荒崎が何か言いたげにチラチラと悠をみていた。

「なに」

「その、えーっと…ですね」

 視線がうざったくなった悠が荒崎に尋ねるが、歯切れの悪い返事が帰ってくる。

 ちょうどお湯が沸いたようで、悠はカップ麺の中にお湯を入れると蓋を閉めてひとつを荒崎に渡した。

「これ」

「あ、ありがとうございます」

 机にカップ麺を置くとタイマーで時間を測る。

 三分が経ち蓋を開けると、あっという間に完成だ。

 悠が麺をすすりながら、こんなに簡単に食べられるものを作った人物に心の中で感謝していると、荒崎が覚悟を決めたように口を開いた。

「お願いがあるんです!」

「うん」

 カップ麺の割に具材の完成度が高いなぁ、と思いながら荒崎の言葉に相槌をうつと、箸で具をつつきながらカップ麺に向けていた視線を荒崎に移す。

「課題が全然分からないので手伝ってください!」

「いいけど」

「本当ですか!?」

「俺もそこまで頭がいいわけじゃないから、どこまで手伝えるか分からないけどな」

「神無さんに手伝って貰えるだけで十分です!」

 悠はカップの底に沈んでいた麺と具をつまむと口に運び、カップを持ち上げスープをひと口飲み込む。

 食べ終わると、満腹になった余韻に浸りながらカップ麺を片付け席に戻る。

 満腹になったことで眠気が襲ってきたが、頭を振りながら眠気を追い払った。

「…課題、明日からでいいか?」

「はい!お願いします!」

 明日の午前から課題を始める約束をすると、悠はシャワーを浴びるため立ち上がった。

「じゃあまた明日な」

「はい!」

 


 *



 次の日、予定通り午前中から課題を始めていたが、悠は若干面倒に思い始めてきていた。

「…神無さん、これは」

「さっき教えただろ」

「ぅぐ…!で、でもなんか意味わかんない数字が増えてるんですけど!」

 悠は何度も荒崎にやり方を教えていたが、一向に荒崎の課題が進まない。

 公式をノートに書かせ、数字を当てはめるだけだと教えているのにどうしても分からないようで、悠も途方に暮れてしまった。

「もう俺にはどうしようもできない…」

「え…!そんな、諦めないでくださいよ!」

「むり」

 悠が机に突っ伏して唸ると、荒崎が慌てたように背中をさすってくる。

「俺には無理だ…」

「もう1回お願いします!俺頑張るんで!」

「いやだ」

 荒崎に揺さぶられながら、悠は遠い目をする。

 まさかこんなにも、荒崎に勉強を教えることに苦戦するとは思っていなかった。

  悠が唸りながら机にへばりついていると、スマホが音を立てる。

 スマホを手に取りメールを確認すると、悠は上体を起こした。

「息抜きする」

「え…」

「出かける準備しろ」







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