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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
34/64

機体

 






 悠は自身の倒した戦車型の指揮体の前に立つと、q2に戦車の情報を読み取るよう指示を出し、q2が読み込みをしている間に、荒崎に頼み倉庫内に運び込ませたもう一機の指揮体を調べることにした。

「…これ、j9に似てるような気がするな」

「確かに言われてみれば、似てるような…?」

 違和感を感じた悠は指揮体のパーツを手で動かし色々と見ていったが、違和感の正体が掴めないまま首を傾げた。

「…j9、ちょっとこいつの横に来てみてくれ」

『おう、まかせろ!』

 j9が指揮体のそばに降り立つと、悠はj9に翼を広げさせたり、体の同じ部分についているパーツを見比べたたりして相違点を探しはじめる。

 そうして、色々と調べているうちにあることが判明した。

「ここのパーツ、同じだな」

「確かに…。他のところにも同じようなパーツが使われていますね」

「お前のj9、ボディはどこで調達した?」

「国に支給されたものです」

「へぇ、国からの支給…ね」

 荒崎から得た情報で違和感の正体が判明したが、

 それと同時に国に対して不信感が生まれてくる。

 悠の予想が正しければ、この指揮体は恐らく…

「神無さん?」

「…なんでもない」

 荒崎が声をかけてきたことで、一旦考えることを中断し、そろそろ読み込みが終わっただろうとq2の元へ向かう。

 q2は指揮体の上に降り立ち、データを纏めているようだった。

「終わったか?」

『全て読み込んだ。データは後ほど神樹の元で開示する』

「了解。…じゃあ、持っていけそうな部品見繕うから運ぶの手伝ってくれ」

 悠は後ろを振り返り荒崎に声をかけると、悠自身はさっさと指揮体の部品を物色しはじめた。

「あ、わかりました!カバン持ってきたんで使ってください!」

  「助かる。こっち、持ってきてくれ」

 悠は荒崎が持ってきたカバンに、神樹が喜びそうな機械のパーツをどんどん詰めていく。

 その他にも、この指揮体についての情報を得られそうな特徴的な物等も取り外すと、全てカバンの中に押し込んだ。

「こんなもんか…」

「もう良いんですか?」

「これ以上持っていくのは面倒だろ。お前がいるからいつもの2倍運べるし」

 カバンを閉める前にq2を1番上に乗せ蓋を閉じる。そうして肩にカバンをかけると、肩紐の位置を調整し持ちやすいように何度か腕を振る。

 荒崎も悠と同じようにカバンを手に取ると、その中にj9を紛れ込ませるように押し込んだ。

 なにやらj9が呻くような声を出したが、荒崎は気にすることなくカバンを背負った。

「じゃあ、神樹さんのところまで戻りましょうか」

 荒崎が駅の方へ足を向け歩き始めた。

 悠も荒崎に続いてその場から歩き始めたが、ふと指揮体の姿を見ようと振り返る。

 そこには、相も変わらず沈黙している機械が横たわっていた。

 悠はその姿をじっと見ていたが、ふいと顔を背けると荒崎の後を追いかけた。

 


 *



 悠と荒崎が倉庫から出てしばらく経ってから、倉庫の中で指揮体の瞳が赤く点滅し始める。

『…デー、た送信…完、リョ…う…。t4か、らp8…へ、全…データデ、りーと、まで…5秒前』

 小さな爆発音が響くと、そのあとは永遠の沈黙が支配した。




 *



「随分と豊作だったな!」

 悠と荒崎が持ってきたパーツを神樹に渡すと、神樹はそれらを全て作業台の上にぶちまけた。

「わかっているだろうが…」

「ああ!ちゃんと仕事はやらせてもらう。まあ、3日後ぐらいにまた来てくれ。それと、これ今回のパーツの報酬」

 神樹が差し出した茶封筒を受け取ると、悠は自身のカバンにそれを押し込み工房を後にした。

 悠に続いて外に出てきた荒崎は大きく伸びをする。

「部品重かったですね」

「まあ、鉄の塊だしな」

 家に戻る帰り道、昨日今日で疲労が溜まっていた2人は、道の途中にあるコンビニで夕飯にするカップ麺を買い帰宅した。

 帰宅してすぐに風呂に入ると、悠は襲ってきた眠気に耐えられず、荒崎に二、三言葉をかけると買ってきたカップ麺を食べることなく自身の寝室に向かいベッドに横になり、あっという間に眠りに落ちていった。



 *



 翌朝、悠が空腹感から目を覚ますと朝の8時だった。

 洗面所に向かい顔を洗いリビングへ向かうと、荒崎はまだ起きていないのか明かりがついていなかった。

 照明のスイッチを欠伸をしながら探し、電源を入れる。

 冷蔵庫を開けると、卵とベーコンを見つけフライパンにほおりこむ。

 食パンを探し出しトースターで焼くと、焼いたベーコンと卵を上に乗せる。そのあとで飲み物を準備していると、荒崎が起きてきた。

「おはよう、ございます…。いい匂いっすね」

「顔洗ってこい。もうすぐで飯できるぞ」

「…はい」

 荒崎が洗面所へ向かったのを見届けると、キッチンの棚からティーパックが入った箱を引っ張り出すと、コップにティーパックを入れ、沸かしておいたお湯を流し込む。

 そのままテーブルに置くと、パンの乗ったお皿も運びテーブルの上に設置した。

 洗面所から戻ってきた荒崎をテーブルに追いやると、悠も席に着いた。

 荒崎と共に手を合わせると、パンをひと口かじる。ベーコンの脂がパンに染み込みいい塩梅になっている。一度パンをお皿に戻し半分にちぎると、パンの上に乗っていた目玉焼きの黄身を割る。そうして、割った黄身を絡めながらパンを食べるとベーコンのしょっぱさとの相性が良く、あっという間に食べ終わった。

 コップからティーパックを取り出し、赤い液体を飲み込むと、若干渋さがある。少し放置しすぎたと反省しながらチビチビと紅茶を飲んでいると、荒崎がじっと見ていることに気づく。

「…なに」

「いや、その…」

 歯切れの悪い荒崎を不思議に思いながらも、それ以上追求することなく紅茶を飲みきると席を立ち、食器を流しに置くと、荒崎が洗い物ぐらいはやると言うので、悠はリビングの窓際に腰を下ろすと、日光浴をしながら外を眺めた。

 今日を合わせた3日間は神樹の結果待ちになる。

 今回狩った指揮体のパーツは荒崎がいた事でいつもより多く採取できたことと、いつもより高く引き取って貰えたこともあり、夜の狩りも暫くは休むことにした。

 悠はぼうっとしながら日光の温かさの下でうつらうつらとしていたが、いつの間にか眠ってしまっていたらしく、真夏の太陽で熱された熱さで目を覚ますと窓にもたれかかっていた頭を持ち上げる。

 荒崎の姿を探すが、リビングにはいないらしく目を擦りながら固まった体を解すため伸びをするとその場から立ち上がった。

 丁度昼時の時間になっていたため、何か出前でも頼もうとスマホを手に取る。

 スマホを操作しながらどれにするか選んでいると、ドタバタと走る音が聞こえてくる。

 荒崎がまた騒いでいるのかと無視していると、リビングに足音の主である荒崎が飛び込んできた。

「神無さん!まずいことになりました…!」

  「…なにが」

 悠は目に止まったハンバーガー店のメニュー見ながら返事を返す。

 期間限定商品があったため、それの値段を見ながら財布と相談する。

(まあ、たまには少し贅沢してもいいか)

 悠は自分の中で勝手に納得すると、荒崎に視線を向けた。

「またなんかやらかしたのか?」

「俺がいつもなんかやばいことやってるみたいな言い方やめてくださいよ!…ってそうじゃなくて」

 荒崎は咳払いをしながら、真面目な顔を作ると改めて同じことを言う。

「まずいことになりました!」

「それはもう分かった。何やらかしたんだ」

「夏休みの課題を全部学校に置いてきてしまって…」

「…お前、課題とかちゃんとやるんだ」

 悠は荒崎が学校の課題を気にしていたことに驚くと、立ち上がる。

「今ならまだ暗くなる前に学校に着く」

「え、今から行ってくれるんですか!?」

「まあ、やることないし。…外出るついでになんか食うか」

 喜んでいる荒崎を横目に出前を頼もうと思っていたスマホの画面を消し財布と共にリュックにいれようとしたが、それらを入れる前にq2を入れなおすと、その上から他の荷物を乗せた。

「ほら、行くぞ」

「はい!」

 荒崎がj9をカバンに押し込み終わったのを確認すると、悠は玄関に向かった。






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