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神のいない世界  作者: ウニ
32/64

飛翔

 





 悠はq2の案内に従い走っていくと、ある倉庫の前にたどり着いた。

「ここか…」

『内部に反応がある』

 倉庫の周りは蔦が這い、長い間放置されていたことが分かる。

 悠は倉庫の正面口から入らず、裏に回りこみ別の入口を探すと、裏の外階段を上がったところに入口を見つけた。

 音を立てないよう階段を上り、入口の前に立つと小さくq2に合図を出す。

「…行くぞ」

『肉体の損傷がまだ癒えていない』

「わかってる。なるべく、早く…済ませるぞ」

 悠は倉庫に入る前に荒崎のことを思い出すと、槍で縫い止めておいた指揮体を見張るよう荒崎へと指示を出した。

 ドアノブに手をかけ、音を出さないよう慎重に扉を開き中へと身を滑り込ませる。

 倉庫の中は薄暗く、視界が制限された中で倉庫内を見渡すと中央にひとつ大きな鉄の塊があることが分かった。

「…あれか」

 悠がその物体から霊力を感じ取りq2に確認すると、声を出さず肯定される。

 悠は倉庫の下にいる指揮体を良く見るために、下に降りる前に身を隠しながら音を立てず、指揮体の全貌が見える場所を探しはじめた。



 *



 ちょうど指揮体の真横にある通路から外の光が差し込み、他の場所よりは指揮体の姿が見えやすそうなその場所には廃棄された資材が置いてあった。悠はその資材の陰に身を隠しながら暗がりに目を凝らし指揮体の姿を覗いた。

 その指揮体は一言で言えば、戦車だった。

 車輪はボロボロになっていて、機体も錆や泥汚れによってみすぼらしい見た目になっており、その場から動くことは難しそうだが、機体から発せられている僅かな赤い光だけが、この指揮体がまだ活動していることの照明だった。

 さらに指揮体を観察すると、この指揮体が周囲の霊力を吸収し自らの機体に溜め込み、溜め込んだ霊力を使い先程の指揮体へ送り込んでいることが霊力の流れから判明した。

 悠は息を殺すと、早急に階下にいる指揮体を破壊するために刀を握り物陰からそっと姿を現す。

 指揮体が悠に気がついた気配はなく、慎重に指揮体の正面にある通路に到着すると、悠は一息に柵を乗り越え指揮体に飛びかかった。

 指揮体は突然現れた悠に驚き抵抗するように身を震わせたが、悠が指揮体の真上から核を破壊したことで永遠に沈黙した。

「あと、は…」

『報告、先程の指揮体が拘束から脱出しこちらに向かってきている』

「…へぇ、好都合…だな」

  悠は息を荒くしながら倉庫から出ると、夜明けが近いのか空が明るくなりはじめていた。

『指揮体がこちらに到着するまで287秒』

「…結構、時間あるな」

『現在、貴殿の肉体は4割ほど治癒が完了している』

「おかげで、だいぶ…マシになった」

 息を整えようと、深呼吸をしながら倉庫の外壁にもたれ掛かり、握っている刀に視線を落とすと、もう一機の指揮体が現れるのをその場で待機した。



 *



 はたして、その時は訪れる。

 金属の翼で空を駆ける指揮体は、耳障りな音を立てながら倉庫にもたれ掛かる悠を見つけ近づくと、鉄の羽を撒き散らす。

 悠は横へ飛ぶことで羽を回避すると、事前にq2に作らせておいた小刀を指揮体へと投擲する。

 指揮体は慌てたようにそれを避けるが、指揮体の避ける場所を予測していた悠はその場所に時間をずらし小刀を投擲することで攻撃を命中させた。

「q2…!」

『了解』

 q2と共に、体勢を崩した指揮体に接近し空へと飛び上がる。

 悠1人では指揮体のいる場所まで届かなかったが、q2が悠を掴み空へと持ち上げることで、指揮体よりも少し高い位置まで飛翔すると、悠は自身の重みを利用し、刀を指揮体へ叩きつけるように振り下ろす。

「壊れろ!」

 悠が振り下ろした刀は指揮体を頭から胴までを真っ二つに切り割いた。

 供給源である戦車型の指揮体を破壊したことで、修復が不可能になった指揮体は恨めしげな駆動音を立てながら地に落ちた。

 悠はそれを見届けながら、地面ギリギリになって体勢を整えると受身を取り着地するが、足元がふらつきよろけてしまう。

 まだ倒れるわけにはいかないと、体に力を入れ動かすが視界が揺れ前のめりになる。

 このままでは倒れると、地面に衝突する衝撃に備え目を閉じるが、不意に後ろから体を支えられた。

 悠は自身を持ち上げた人物を確かめようとし、後ろを見ると、そこには泣きそうな顔をした荒崎がいた。

「っ…!神無さん、すみませんでした!俺が、俺が弱いばかりに…!」

 荒崎は悠の体を支えながら地面に横にすると謝罪を始める。

「俺がもっと強ければ、神無さんもこんなに怪我しなくて済んだのに…!」

 悠は謝り続ける荒崎に視線を合わせると、顔を歪めながら口を開いた。

「…お前の、せいじゃない。俺の、読みミスと、俺自身…が弱かっただけの、話だ」

「でも!」

「わかっ、た。じゃあ、後のこと…頼む。q2の指示聞いて、動け」

 荒崎にそれだけ言うと、悠は目を閉じた。

「神無さん!?」

 荒崎は慌てたように悠を揺すり起こそうとするが、q2が制止した。

『止めろ。眠りについただけだ』

「本当に…?」

『肯定。肉体の損傷は治したが血液の補充は不可能。貧血で意識を失っただけだ。貴殿の消耗も激しいのは理解の上だが調整師の元まで当機の主人を運べるか?』

「任せてください!」

『いや!落ち着けよマスター!あんただって怪我してんだから少し待て!』

『ならば、当機が貴殿の傷を治そう。それなら問題あるまい』

 荒崎はq2の提案に驚くと、信じられないものを見るようにq2を見た。

「他人の怪我もなおせるのか?」

『肯定。だが、あまり得意ではない。雑な修復になるが構わないか?』

「大丈夫だ!やってください!」

『了解。──身体のトレースを開始、損傷部位の確認─完了。これより貴殿の破損箇所を修復する』

 q2は一通り荒崎の体を調べると、負傷した部分の修復を開始した。

 q2の宣言通り、修復はあまり得意では無いのか時間がかかったが、荒崎はある程度回復したところで悠を背に乗せると、朝焼け色へと変化する空を見ながら小走りに調整師である神樹のもとへと向かった。






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