事態
荒崎が悠を探し始めたころ、悠はちょうど機械魔獣を全て倒しきったところだった。
指揮体の足止めをしている荒崎と連絡を取るため、スマホから電話をかけたが繋がらず、悠は不審に思いながら首を傾げた。
「あいつ、失敗したのか?」
『その可能性はゼロではない。だが現時点で貴殿が指揮体と遭遇していないということは…』
「途中までは上手くいってた、ってことか」
悠は意識を集中し周囲を探ると、悠のいる方向に向かって飛行してくる機械の存在を認知した。
「…2機、近づいてきてるな。一機は多分j9だ」
『ならば、もう一機は指揮体だろう』
悠は武器を握り直し、飛翔してくる機械に向かって走り出す。
走り始めてすぐに、機械の姿が視界に入る。
こちらに向かい飛んでくる機械は恐らく指揮体だろう。
その指揮体の後ろからはj9がボロボロになりながらも追いかけてきていた。
悠それを確認するとは刀を構え、自身に突っ込んできた指揮体の翼を狙い、タイミングを合わせ刃を振るう。
『────!?』
指揮体は突っ込んできた勢いのまま止まることができずに、悠の振るう刀によって翼が斬り落とされる。
指揮体はそのまま壁に追突し動きをとめたが、悠は油断なく指揮体を警戒しながら、後ろから追いかけてきていたj9を回収した。
「おい、大丈夫か」
『霊力空っぽで損傷が不味いこと以外は大丈夫だ!』
「それは大丈夫じゃないって言うんだが?…何があった」
悠が問いかけると、j9は悠に抱えられたまま羽をじたばたと動かした。
『あいつ、急に強くなったんだよ!』
「急に?」
『そうだ!途中までは俺が勝ってたんだぜ?だのに!急に出力が上がったんだよ!しかも俺が開けた穴がもう直ってやがる!』
その時、指揮体が起き上がり翼を震わせはじめた。金属音が辺りに広がると、指揮体の身体に変化が起き始める。
「どうなってる…」
指揮体の身体に付けられていた傷がみるみるうちに修復されていく。
悠は唖然としながらそれを見ていたが、ひとつの可能性にたどり着いた。
「こいつだけじゃなかったのか」
『どういうことだ?』
『もう一機指揮体がいる』
『まじかよ!』
「恐らく、この指揮体を補助している別の指揮体が付近にいる」
悠が気配を探知できないということは、ステルス機の可能性が高い。しかも、他の機械魔獣の修復ができるということは自身の再生能力も相当に高いだろう。
悠は舌打ちしながら周囲の気配を探るが、もう一機の気配は一向に見つからない。
そうこうしているうちに、完璧に修復された指揮体は獰猛に赤く光る瞳で悠を見ると威圧するように翼を広げた。
「…j9、お前は荒崎と合流しろ。霊力が回復するまで待機しておけ」
『お前はどうすんだよ』
「q2ともう一機を探す。回復が終わり次第探索に加わってくれ」
『…まあ、お前が言うなら従うけどよ。──死ぬなよ』
「人間はそんな簡単に死なない」
その瞬間、悠は刀を一閃すると、指揮体から放たれた羽を刀で斬り落とす。
「行け!」
『後任せたからな!』
j9は指揮体とは逆の方向に飛び去ると、悠はそれを追おうとした指揮体に向かい刃を向けた。
「悪いな。そっちは通行止めだ」
指揮体は苛立ったように闇雲に羽を撃ち出すが、悠はそれらを避け、刀で斬ると指揮体の正面に立ち、q2に指示を出した。
「もう一機を探せ」
『了解。こちらは索敵に集中する』
「できるだけ早く見つけろ」
『分かっている』
q2が隠れている指揮体の索敵を開始するのを見届けると、悠は指揮体に刀の切先を向ける。
「──破壊する」
指揮体が悠に向かい無数の羽を撃ち出すが、悠は危なげなくそれらを躱すと指揮体へと肉薄し斬りあげる。
(弱すぎる…)
指揮体は羽を撃ち出すばかりで、悠は傷さえ負わずに戦闘を行うことができている。
だが、この程度の相手ならば、荒崎が負けたことに説明がつかない。
悠は嫌な予感を感じると、指揮体から距離を取った。
その時、指揮体の体表の色が変わる。
鈍い銀色に覆われていた身体は黒く変色し、羽を撃ち出していた翼は歪な形へと変化する。
(なにが…)
指揮体の変化によって不意をつかれた悠に一瞬の隙が生じる。
指揮体はその隙を逃さず、ものすごい勢いで悠へと突進してくる。
「しま…っ!」
悠は刀で防御しようと動いたが、指揮体は先程までとは違い、圧倒的な力で悠を後方へと吹き飛ばした。
「…っつ」
後方にあった壁まで吹き飛ばされると、悠は思わず息が詰まり、一瞬呼吸が止まる。
悠が血を吐きながら、指揮体の動きを探ろうと体を起こすと、指揮体の追撃から逃れるためにその場から後ろに飛ぶ。
ちょうど、そのタイミングでq2の索敵が完了した。
『もう一機の場所が判明した』
「…案内、しろ」
『肉体の、内部の損傷が酷い。休息が必要だ』
「いま、治せる所…まで、やって…くれ」
『…了解した』
痛む体を動かし足に力を込める。
目の前の指揮体に視線を合わせると、大きく息を吐いた。
もう一機の指揮体のもとへ行くためには、目の前にいる指揮体をどうにかしなければならない。
悠は息を荒くしながら刀を握りなおすと、呼吸を整えようと深呼吸をした。
指揮体は悠の周りを飛びながら、突撃の機会を伺っている。
「…いま、だ!」
悠が声を上げた瞬間、指揮体が悠に向かい羽を撃ち出しながら突撃してきた。
悠は指揮体の姿を捉えると、刀を振るい翼を斬り落とすことに成功したが、指揮体の攻撃によって右腕が切り裂かれた。
「q2…!」
『了解。近接攻撃武具創造開始──完了』
それを気にする素振りを見せることなく、q2が創り出した槍を手に取ると指揮体の身体に突き刺し地面に縫い合わせる。
指揮体は槍から抜け出そうと藻掻いていたが、ようやく動きを止めた。
それを見届けると、悠はq2の案内のもと走り出す。
「あの、指揮体…留めておくことが、できて15分…ぐらい、だ…」
『もう一機はこの付近にいる。10分で解決すること提唱する』
「無茶、言うな…お前も」
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