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神のいない世界  作者: ウニ
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25/64

説教

もう9月ですね。

1年が終わりそうで悲しいです。

 






 斑目との密会をした次の日、悠はいつも通り学校に向かった。

 教室に入ると、何故か教室に来ていた生徒達がざわつく。

 悠は小首を傾げながら今日は何かあったかと思い出そうとすると、荒崎がものすごい勢いで悠に走りよってきた。

「神無さん!体は大丈夫なんですか!?昨日突き落とされたって聞いて…!」

 荒崎のその言葉でようやく昨日のことを思い出す。正直、その後に斑目と話したことの衝撃が大きく学校で起きたことをすっかり忘れていた。

「大丈夫だから、少し静かにしろ。耳が痛い」

 悠は荒崎を押しやりながら、自分の席に荷物を置く。

 そうしていつも通りのルーティンを終わらせると、改めて体ごと荒崎の方を向くと口を開く。

「…あの程度でどうにかなるほどやわな体じゃない。それに、q2がいる」

 悠は小声で周りに聞こえないように、荒崎に話しかける。

 荒崎はそれでも納得できないのか心配そうに悠を見た。

「でも、痛いもんは痛いじゃないですか…。俺心配なんですよ。神無さんいつも1人でなんでもできるからって、誰にも頼らないじゃないですか」

 悠はため息をつくと、呆れたように荒崎の顔を見る。

「俺たちみたいなのはいつ死んでもおかしくない。こんなことでいちいち動揺するな」

「いつか死ぬのはわかってますよ、俺だって。でもわざわざ危ないことをする必要は無い、って俺は言ってるんです…!」

「…自分から面倒事に首を突っ込んだことは無い」

「知ってますよ!神無さんが面倒くさがりなのも、そのくせ他人を放っておけない人だってことも知ってます!」

 荒崎は鼻息も荒く興奮しながら悠に詰め寄る。

「いいですか?俺は神無さんがそういう優しい人だからついて行こうって決めたんです!でも、誰にでも手を差し伸べるくせに自分のことは後回しでほおり投げるのは良くないと思ってます!」

「…俺は優しくない」

 悠はむっとしながら荒崎に言い返すが、荒崎の勢いに押され気味になる。

「神無さんが自覚してなくても、あなたは優しいんですよ!ってか、そうじゃなくて…!」

 荒崎は頭を掻き毟ると机に手を付き立ち上がる。

「わかりました。これからは神無さんの面倒は俺が見ます!いいですか!?いいですよね!はい、決定!解散!」

 荒崎が一方的に悠にマシンガンのように言葉を投げつける。 そんな荒崎のことを、悠はポカンとしながら見た。

「いや、困るんだけど…」

「俺、今回は折れませんから。神無さん、夏休みになったら俺の家に泊まってもらいます!俺が徹底的に神無さんのお世話してやりますよ!」

「え、ヤダ」

「なんでですか!?」

「狭いし汚いから」

「それについては考えがあるので問題ないです!」

 荒崎は自信ありげに言うと、悠は呆れを隠さずに首を降った。



 *



 放課後になると、悠は担任の教師に呼び出された。

 悠は面倒に思いながらも職員室に向かう。

 その前にも荒崎との一悶着があったのだが、割愛する。

 職員室で担任の名前を告げると、直ぐに職員室から担任が出てきた。

 生徒指導室へ連れていかれると、昨日のことについて説明を求められた。

「…つまり、お前はあいつらになんもしてないんだな?体も大丈夫なのか?相当な高さから落ちたって聞いたが」

「何もしていません。体は本当に大丈夫です。運が良かったみたいで」

「無事ならまあいいんだがな。アイツらに関しては、まあ、そうだろうな。けどな、お前のその態度と格好にも少しは問題があるだろ?」

 担任は顔を顰めながら悠の顔を指さす。

「お前のそれ、入学した時からずっと被ってるけど校則違反だからな?」

「そうなんですか」

「はぁ、何度も注意しただろ?お前はなんでフードを外したくないんだ?なにか理由でもあるのか?」

「…まあ、一応」

 悠が学校でもフードを外さない理由ならある。

 目立ちたくないからだ。

 悠の髪は頭頂部は黒いのだが下に行くにつれ、母親譲りの青色へと変化している。

 昔、小学校で注意されたり同級生に指摘されたことでこの髪色がおかしいのだと気づいた。それからは、日常生活では常にフードを被るようにしている。

 悠はどう説明するか思案していると、担任が大きなため息をついた。

「あのなぁ、理由があるならせめて担任の俺だけにでも説明してくれ。そうすりゃ俺も、お前のこと注意しなくてすむし」

「…わかりました」

 悠は諦めたように、フードに手をかけると頭から外す。

 担任は悠の頭髪を驚いたようにみた。

「…これが理由です、もう十分でしょう?帰っていいですか?」

「いや、お前これ染めてんだろ?黒く染め直せば済む話だろうが」

 悠は何度も言われたその言葉に、不快そうに顔を顰める。

「…地毛なんで。そもそも、染めるお金無いし染めるのは無理です」

 悠のその言葉に担任がうなりながら頭を抱えた。

「いや、お前。それは無理があるだろ…。それ地毛だったら他の奴らも地毛になるわ。来週で夏休みに入るけど、月曜日までに黒く染め直してこい」

「…………」

 担任は取り付くしまもなく、期限を突きつけると悠を部屋から追い出した。



 *



 どうするかと、悠が考えながら歩いていると昨日の男子達と遭遇した。

 彼らは保護者に連れられ先程まで悠がいた生徒指導室へと入っていく。

 悠はどうでも良さそうにその様子を眺めていると、後ろから声をかけられた。

「神無さん!話し、終わったんですね。今日はどこか行きますか?」

「荒崎…」

 振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべる荒崎がいた。

「何か問題でもありましたか?」

「なにも」

 荒崎は疑わしげに、悠の顔をじっと見ると何かに気がついたように口を開く。

「…フード、取ったんですね」

「…それが?」

「やっぱりなんか言われたんですよね。何言われたんですか?」

 荒崎が悠に詰寄る。

 悠は少しずつ後退していったが、すぐ背中に壁がついた。

「近い、離れろ」

「神無さんが答えてくれたら離れます」

「おまえ、おかしくなったのか?」

 荒崎を何か得体の知れないもののように、気味悪げに悠が顔を背ける。

「神無さんが1人で突っ走りすぎるからですよ。本当に心配なだけなんです」

 荒崎はどこか苦しげな様子で悠のことを見た。

 そんな荒崎の姿に、悠はなんとなくこちらが悪いことをしている様な気分にさせられる。

「…わかった、後で言う。今はどいてくれ」

 悠が荒崎の腕をつかみ押しやろうと力を入れると、荒崎はそれ以上の力で悠のことを壁に押し付けた。

「おい…!」

 思わず悠が大きな声を出すと、荒崎がハッとしたように手を離した。

「あ、す、すみません!わざとじゃないんです!その、思わず、反射で…!」

「…行くぞ」

 悠は慌てる荒崎を見ることなく、下の階に降りる階段へと向かった。

 その後ろからは、しばらくすると慌てたように悠のことを追いかける荒崎の足音が響いていた。







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