試験
斑目を荒崎の家に押し込んだ翌日、悠はあくびを噛み殺しながら朝早くから学校の廊下を歩いていた。
今週の中頃から始まるテストの勉強をするために、いつもより30分早く家を出たため学校にはまだ誰も来ておらず静謐な空気が流れていた。
悠は教室には向かわず図書室へと歩みを進める。この時間なら誰も使っていない学習スペースを一人で使うことができるからだ。ついでに放課後に学習スペースを使うための予約をしてしまおうと、図書室の外にある予約票を手に取りドアを開いた。
図書室の中にはまだ誰も来ておらず悠は目的の場所につくと、荷物を置いて腰を下ろした。
今の時刻は7時30分少し前、ホームルームまで1時間ほど余裕がある。
悠はカバンから勉強道具を取り出すと、先に予約票に必要事項を記入し勉強に取り掛かった。
*
ホームルーム5分前の鐘が鳴った。悠は鐘の音を聞くとカバンに荷物を入れ、教室に行く準備を始める。その時、丁度図書室に入ってきた司書教諭に予約票を渡し、早足で教室へ向かうとホームルームの開始ギリギリに教室に到着することができた。
悠の到着に気づいた荒崎が何か話しかけようとしてくるが、それを視線で押しとどめると自身の席に着席した。
ホームルームは朝の挨拶が終わると基本的に担任の雑談で終わるため、悠はその隙にカバンから荷物を取り出し机に整理した。
授業はテスト前のため、これまでの復習やテスト範囲の説明などでいつもより早く終わる。
昼過ぎに授業が終わると生徒たちがバラバラと教室から出ていき、あっという間に教室の中から人が少なくなった。
悠は座りっぱなしで縮こまった体を伸ばし、予約しておいた学習スペースに行こうと立ち上がると、朝からそわそわとしていた荒崎が悠に声をかけ予定を訪ねてきた。
「神無さん!このあと何か予定ありますか?」
「図書室行く」
「じゃあ、俺も行きます!」
「お前うるさいから来るな。…そうだ、後でいいから斑目のことどうしたか連絡入れてくれ」
「わかりました!」
悠は勢いづいて返事をした荒崎を置いて図書室へ向かうと、学生証を司書教諭に見せ学習スペースに向かい朝と同じ場所に座った。
朝とは違い、学習スペースは悠以外の生徒も何人か利用しており、悠はなるべく音を立てないようテキストや筆記用具をカバンから取り出しシャーペンを握るとテキストを開いた。
*
しばらくテキストやプリントを使いながら勉強をしていたが、目が疲れてきたのと集中力が切れてきたため休憩をとった。
その時スマホのメールを確認すると、荒崎からメッセージが届いていた。
メールの内容を確認すると、荒崎の家に置いてきた斑目のことが書いてあった。
どうやら斑目は、朝方に荒崎の家から抜け出したらしい。
悠はそこで、荒崎に連絡を頼んだことを思い出すと一言お礼だけ打ち込み、スマホの電源を消した。
目の疲れを取るために目をつぶり、目頭を押さえながら荒崎からのメッセージについて考える。
悠としては、こちらに害がなければ放っておいてもいいと思うが、待ち伏せのようなことを何度もされるとさすがにウザったい。
次に斑目と会う時に釘を打っておこうと決意すると目を開き、改めてテキストと向き合い手を動かし始めた。
*
──テスト最終日、荒崎はテストが終わるとまるでこの世の終わりのような顔をして惚けていた。
悠はそんな荒崎のことを見て憐れむような顔をしたが、荒崎のテストの結果が言うまでもなく赤点確定なのは荒崎がテスト前に一切の勉強しなかったことによる本人の自業自得の為、沈んでいる荒崎気にすることなく帰り支度を始めた。
悠自身もここ最近はまとまって勉強する時間が取れなかったが、機械魔獣を狩る合間を縫って勉強をしていたためそれなりの点数は取れるだろうと当たりをつける。
悠はこの後斑目と会うことを考え、少し図書室で時間を潰そうと腰を上げた。
「あ、神無さん。帰るんですか?」
「まだ帰らない」
荒崎は悠が立ち上がるのを見るといそいそと帰り支度を始める、
「そうなんですか?俺、実はこの後用事があるんで神無さんと一緒にいることができないんですよね…」
「…へぇ」
荒崎がくっついてこないということは悠にとって好都合なため、特に何かを言うことも無く悠は廊下で名残惜しそうな荒崎と別れた。
*
悠は荒崎と別れたあと、図書室に向かい、久しぶりに落ち着いて本を読むことができた。
斑目との約束は夕方からのため、それまでは図書室で読みたかった本を読み進めた。
約束の時間が近づき、悠は読み途中だった本をカウンターで借りると図書室を出る。
そうして、下の階に降りようと階段に向かうと、その途中で同じクラスの男子何人かと鉢合わせたが、悠は特に気にせず通り抜けようとした所に声をかけられ、仕方なく応じた。
「…急いでるんだけど」
「少し付き合えよ」
悠は周りを囲むようにしてきた彼らを見ると、小さく舌打ちする。
無視して通り過ぎてもいいが、ここで彼らを突破し無事に学校から出られたとしても、後日面倒なことが起きそうだと判断し彼らについて行くことにした。
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