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神のいない世界  作者: ウニ
契約
20/64

共犯

来週はお休みします。

すみません。

更新再開は8月24日になります。

 





 悠はたった今男が言った言葉を自分の内で反芻しながらも、混乱していた。

「…なぜ、お前が俺の父のことを知っている」

「調べたからさ、君との交渉に使うために」

 悠はたった今あげた腰を改めて椅子に下ろすと男を問いつめる。

「…何を知った」

「それを答えることは今できないなぁ。君の答え次第さ」

 男は自分の手元にある冷めてしまった料理に手をつける。口を動かしながらも男は悠の様子を伺っていることが分かり、悠は顔を顰めた。



 *



 悠の父親はかつては悠と同じ調律師だった。悠にとって父親は唯一の肉親であり最も尊敬している人物だった。国に所属していた父は任務の為家にいることは少なかったが、それでも父が悠のために時間を捻出してくれていたことは幼いながらに理解していた。

 父の周囲には父を慕うものが多くいた。父は誰からも好かれる人物で穏やかで優しく、だが時に厳しい父は職場でも多くの人に信頼されていたらしい。悠はそんな父のことを誇りに思っていたし、この世で最も大好きな人だった。

 だがある日、悠の父は任務に失敗し命を落としたという知らせだけが届けられた。そのため、悠は父がいつどこでどのように死んだのかは分からなかった。

 さらに父の遺体すら悠の下には帰ってこなかった。

 父の葬儀は空っぽの棺で行われたのだ。

 そして、その父の死やその後の国の対応が悠の心を歪めた原因だということは言わずもがなの事だろう。

 悠は父とは違う道を歩むことに決めた。国に所属せず自分1人で戦うことを選択したのだ。

 父のように他者との連携を行わず、自分以外の誰も信じず、ただひたすらに機械魔獣を狩り続ける。

 そういう孤独の道を選んだはずだった。

 


 *



 悠が改めて男を見ると、男は相変わらず大量に残っている料理と奮闘していた。

「…あんたが俺に接触してきたのは荒崎のことがあったからか?」

「ぅん?バレた?」

 男はあっけらかんとしながら、あっさりと事実を告げる。

「以前の君なら出会った瞬間即殺すって感じだったらしいけど、荒崎がくっついてから穏やかになったって聞いて今ならいけると思ったんだよね」

 悠は大きなため息を吐くと、男をジト目で睨む。

「あんた、そんなギャンブルで俺に接触したのか…」

「まあね、けど結果として君とこうやって話せてるし俺としてはオールオッケー」

 悠自身でも荒崎と行動するようになってからは自分が甘くなっていたことは理解していたが、そこに入り込もうとする人間が居ることは想定外だった。

 悠は諦めたように机に突っ伏すと下から見上げるように男に返事を返した。

「…分かった、ここでもたつくのも面倒だしあんたと手を組もう」

「本当に!?やったぜ、それじゃあ…」

「続きは今度にしてくれ。明日は朝から予定があるんだよ」

 悠は時計を指さしながら男の言葉を遮った。

「ありゃ、もうこんな時間か?分かった。続きはまた今度改めて」

 男はスピードを上げて料理を口に押し込むと、伝票を手に取りサイフを出した。

「今後の密会も俺持ちでやるから君は変に気負わず応じてくれると嬉しい」

「善処はする」

 悠はカバンを背負うと男の後ろについて店を出た。

「さて、それじゃあ連絡先を交換してくれるかい?」

「…メアドでいいか?」

「アレやってないの?メッセージアプリ」

「煩わしいから消した」

「荒崎か!アイツうるさいもんなぁ」

 悠は男と連絡先を交換すると、初めて男の名前が分かった。

斑目 咲也(まだらめ さくや)?」

「そうそう。それ俺の名前ね、覚えておいてくれよ?ゆーくん」

「やめろ、気持ち悪い」

 悠は顔を歪めながら斑目の足を踏みつけた。

「うわぁー、すっごい嫌そう…って、痛った!ちょ、ほんと痛いから、ごめんなさいね!?」

 斑目は解放された足をさすりながら泣き真似をすると、ジト目になりながら悠を責めるように見る。

「酷くない?俺たち共犯者なのにこの扱い…」

「死ね」

「口悪いねキミ!?」

 斑目は体を起こすと悠の肩に触れる。

「まあ、これからよろしく頼むぜ?相棒?」

「不愉快極まりないな…」

 悠は斑目の手を払い、まるでウジ虫でも見るかのように顔をゆがめると、斑目は振り払われた手を見ながらぽつりと呟く。

「…なんか君に罵られるのクセになってきた」

「…………」

「その目やめてくれ!自分でも変な扉開きかけてるの自覚してるから!」



 *



 悠は斑目とその場で別れようとしたのだが、家まで送ると無理やり着いてこられた。何とか途中で男を撒くことに成功して一人で家に入る。

「今日は厄日だ…」

 悠は家に入ると置きっぱなしにしておいた毛布を頭から被り、横になった。

『寝るのか』

 自身でカバンから這い出てきたq2が咎めるように悠のそばに寄る。

「もう何もしたくない、疲れた、ねる。1時間早く起こしてくれ」

 q2にそう告げるとそのまま瞼を閉じる。

 そうして、布団にくるまりながら悠は一瞬で眠りに落ちた。







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