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神のいない世界  作者: ウニ
変化
16/64

休息








 男が撤退したあと、悠は荒崎と神樹の元に戻ることにした。

「おやぁ、随分疲れたみたいだね。…もしかして、怪我した?」

 神樹の元に着いた瞬間、悠の様子で何かを察したのか神樹が悠をシャワールームに押し込んだ。

「ほら、行った行った!着替えはいつものとこにあるからそれ使いな。シャワー浴びたらそのまま寝ちまえ。荒崎くんは私が面倒見ておくから気にするなよ」

 悠は神樹に押されるようにシャワールームに入るとポケットに入れておいたモノの存在を思い出す。

「q2、これを…」

『了解、調整屋に渡しておく』

「あとは任せた」

 悠がパーツを渡すと、q2はシャワールームから出ていった。

 q2が出ていったあと、悠は自身の服に手をかけると一気に上着を脱いだ。

 着ていた服は装備のおかげで破れてはいなかったが、血で汚れていた。

 悠が自身の背に触れると乾いた血が手につく。

 それを見て悠は顔を顰めると、舌打ちをひとつ打つ。服を全て脱ぎまとめて洗濯カゴに入れカーテンを閉め、シャワーを手に取るとノズルをひねり熱いお湯を勢いよく頭から被った。





「さて、荒崎くん?何が起こったか教えてくれよ」

 悠がシャワーを浴びている間、神樹は荒崎から事情を聞くため椅子に座らせた。

「何から話せばいいのか…」

「じゃあ、私から質問しよう。まず…」

『調整屋、これを貴方に』

 神樹が荒崎から話を聞こうとすると、q2がシャワールームの方から現れ神樹にパーツを渡した。

「…これは?」

『交戦した指揮体のパーツだ。貴方に調べて欲しい』

「指揮体と殺りあったのか?」

 神樹はq2からパーツを受け取ると、作業台の上に置いた。

「神無さんが1人で倒したんで俺は何も分からないですけど…」

「あいつがそこら辺にいる指揮体と戦ってあそこまでの怪我するわけないし、他になんかいただろ?」

「国の…」

「ああ、なるほど。OK、把握した」

 荒崎の一言で全てを察すると、神樹は苦虫を噛み潰したよう顔をする。

「その、神無さんって…」

「あいつ、国の調律師大嫌いなんだよ。たがらあんたをまともな状態で生かしておいて、その上傍に置いているのが理解できなくてね」

「どうしてそんなに国が嫌いなんですか…?」

「まあ、あいつにも色々あるからね」

 その時扉の開く音がすると、ラフな服装に着替えた悠がシャワールームから出てきた。

「シャワー借りたぞ」

「はいよ。じゃあ、ベッドに行け」

「…神樹」

「そんな目で見るなって、あんたが寝てから調整しに行ってやるよ。ついでに洗濯もしといてやるし」

 悠の抗議を気にもとめず、神樹は悠をベッドのある部屋に押し込んだ。

「まあ、今日はゆっくり休みなよ。明日は休みなんだろ?昼前に起こしてやるからさ」

「……わかった」

 悠はまだ何か言いたげに神樹を見るが、諦めたようにベッドに横になった。

「じゃあね、おやすみ」

 神樹は悠がベッドに入ったことを確認すると、部屋のドアを閉じ外へと出た。

 悠は神樹の気配が部屋から遠ざかるまで部屋の扉を見ていたが、今更神樹のことを気にしても仕方ないと思い直し、息を深く吐いて目を閉じた。





 神樹が悠をベッドに押し込んで作業台の方に戻ると、荒崎の抱魂機、j9(ジャック)q2(キュウツー)が言い争っているのが聞こえる。

『お前なんなんだァ!口先ばっかの頭でっかちがよォ!』

『デタラメに弾を撒き散らす貴殿よりはマシだろう』

『はっはぁ!よく言ったなこの戦力0のポンコツめ!』

『…考えることもせず無闇矢鱈に突っ込んでいくだけの鳥頭は黙っていた方がいい。その方がまだ利口に見えるぞ』

『このやろう…!』

「落ち着けよ!ここで暴れるなって…!」

 荒崎は二機の争いを止めようとしているが、二機とも荒崎の言うことを聞かずお互いしか見えていないようだった。

「はいはい!そこまで!ガキじゃあるまいしいい加減にしろ!」

 神樹が間に入り二機の言い争いを止めると、荒崎がほっとしたように神樹をみた。

『俺は悪くねぇよ!こいつが変な理屈こねて突っかかって来るのが悪ぃだろぉ!?』

『貴殿はもう黙っていた方が良い。頭の悪さをこれ以上露呈するのはやめるべきでは?』

『てめぇ…!』

「どっちもどっちだから、いい加減黙れ!これ以上騒ぐと改造するぞ!」

 神樹のその一言で二機がピタリと大人しくなる。

「神樹さんすっげぇ…」

「はぁ、あんたも自分の抱魂機の制御ぐらいちゃんとしなさいよ」

「す、すみません…」

 荒崎は肩を落とすとj9を掴みカバンに押し込む。そのあと神樹が悠を押し込んだ部屋を心配そうに見た。

「神無さんは大丈夫なんですか?さっき、背中バッサリやられてたんですけど…」

「ん?ああ、それは問題ないだろ。q2が治しただろうし」

「神無さんの抱魂機って、能力何個もあるんですか?」

「なんで?」

 荒崎は静かに空を漂っているq2を見上げる。

「その、武器や装備を作ったりそれの強化もできますし、治癒までできるって普通の抱魂機じゃできないですよね?」

「ふむ…。まあ、その理由を私は知ってるし教えることも出来なくはないが…。さすがの私でも本人がいない所で弱点を大っぴらに話すことは出来ないな」

「そうですよね…。後で直接聞きます!」

「…そうかぁ、頑張れよ?」

「はい!」

 神樹はおそらく無理だろうと思いながらも、荒崎にはそれ告げずに頷いた。

「さてと、それじゃああんたもシャワー浴びて休みな。あいつが入った部屋の隣が空いてるし。多分あいつ用の替え服がまだあったはず」

「え、俺もいいんすか?」

「構わないよ。服の場所だけ教えるからあとは好きに使ってくれ」

 神樹は荒崎をシャワールームに案内すると、戸棚を開き服を引っ張り出す。

「ほら、これ。多分サイズは大丈夫だろ?まあ、無理でもそれしかないから何とかしてくれ」

「ありがとうございます!」

「うん。じゃあシャワー浴びたら着替えて部屋入って寝なよ?私はあいつの調整してるから」

 神樹は荒崎をシャワールームに置いて出ると、q2を見た。

「これからあんたのご主人様を調整するから付き合ってくれよ?」

『了解した』

 神樹はq2を伴い悠が眠っている部屋のドアに手をかけた。






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