表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神のいない世界  作者: ウニ
変化
13/64

疑念

できるだけ毎週月・水・金の午前7時に更新しようと思います。

 








 悠が部屋の中に消えたあと、神樹は改めて悠が連れてきた荒崎をみる。

(こいつがねぇ…)

 神樹にはどうしても悠が荒崎がつるむ理由がよくわからなかったため、少し荒崎と話をすることにした。

「さて、えーっと、君は何くんだ?」

「はい!荒崎 堅といいます!よろしくお願いします!」

「いい返事だなぁ!まあ、私に任せときな。さて、早速だが荒崎くん、君の相棒について教えてくれよ?」

 神樹は、荒崎からj9の形状や能力について聞き出すと、回収できた部品と核を受け取り作業に取り掛かった。

 抱魂機を直すことはそこまで難しいことではない。抱魂機は調律師によって魂を吹き込まれたものであり、元はただの機械と変わらないからだ。

 神樹は荒崎から提供された情報をもとに抱魂機の姿を作っていく。

 荒崎はソワソワとしながら、神樹の様子を伺っていた。

「…ところで、話は変わるんだが荒崎くん」

「なんすか?」

「君は国の調律師だろう?なのに、どうしてアイツといるんだ?」

 神樹の言葉に荒崎は虚をつかれたような顔をした。

「それは…」

「国の命令かい?猟犬くん」

「それは違う!」

 荒崎は神樹の言葉を強く否定すると、口を開く。

「俺は、自分の意思であの人の…神無さんについて行くって決めたんです。国は関係ありません。そもそも、国の所属はもう辞めました」

「そう簡単に国の所属から離れられるとは思わないんだよなぁ」

「俺は、元々出来損ないだったのでこのまま国に所属していても良くて解雇、悪くて処分になっていたと思います」

「そいつは…、随分と酷い話だね」

 国に所属している調律師にはノルマがあるが、それをクリア出来なければ、荒崎が言ったように処分される。

 神樹は処分という言葉の本当の意味を知っているだけに顔を顰めた。

「…だけど、それでも不思議なんだよなぁ。なんで君はアイツを選んだの?」

「そんなに不思議ですか?」

「ああ、不思議だよ。何せあいつは頭の固い頑固な変わり者だ。なまじ本人の戦闘能力も包魂機の能力もあるから並大抵の奴じゃあいつの隣には立てん。しかも冷酷で必要とあらば人殺しもする。…あんたがあいつにのめり込む理由が分からんのよね」

 神樹が作業台に視線を移しながら告げる。

 神樹は本当に不思議だったのだ。国の命令でもなく自分の意思で神無の傍にありたいと望んでいる荒崎のことが。

 荒崎は神樹の顔を真剣な眼差しで捉えると、ゆっくりと口を開いた。

「…あの人は、命の恩人なんです。俺が始めてあの人と会った時本来なら殺されてもおかしくなかった。けれど、あの人は俺を殺さなかった。2回目にあの人と会った時に、俺はあの人を殺すつもりで戦いを挑んで負けた。そしてその時もあの人は俺を助けてくれた。本来なら処分されていた俺をあの人は2度も救ってくれたんだ。…あの人に、神無さんについて行く理由はそれだけでは足りませんか?」

「あんたは…」

 神樹は荒崎の話を聞いて愕然とした。

(他人を気にしないあいつがそこまでするなんてね…)

 きっと、いつもの悠ならば初回の遭遇で荒崎のことを殺していただろう。けれど、実際はそうはならずに悠は荒崎のことを2度も見逃した。

 それはつまり…

(あいつも変わってきたってことかな)

 神樹が悠の変化に感動していると、荒崎が不安そうに声をかける。

「俺みたいのが神無さんの近くにいるのはやっぱりまずいですかね?」

「…え?!いやいやいや、そんなことないって!むしろいい刺激になってると思うからこれからもどんどん迫ってくれて構わない!」

「それなら良かったです!」

 神樹は改めて作業に集中すると、j9のパーツを組み立て始めた。



 *



 神樹の作業が終わったのは、既に日も落ちて暗くなってからだった。

 目覚めた悠が伸びをして時間を確認すると、時計の針は7を少し過ぎたところを指している。

 悠が部屋から出ると、騒がしい声が聞こえてくる。

「前より強そうに見えるぞ!」

『いい感じだ!前の体より動かしやすくて、速く飛べるぜぇ!』

 そこには、荒崎と相方の抱魂機が騒いでいる姿があった。

「…直ったのか」

「あ!神無さん!」

 悠に気づいた荒崎が駆け寄る。

『よお!久しぶりだな、堅物野郎!』

「やめろj9!神無さんのおかげで直ったんだぞ!」

『ガラクタのままでいたいのなら初めからそう言うべきだ』

『ぶっ殺すぞお前!』

「やめろ、うるさい」

  悠がq2を下げると、j9も渋々としながらも口を閉じる。

「…機能面に問題は無いのか?」

「はい!もう完全に復活しました!むしろ前よりいいぐらいです!」

「まあ、この私がやったんだし当然だよなぁ」

 神樹が胸を張りながら口を開く!

「あんたもなんか不調があればすぐに言えよ?直してやるから」

『当機に不調はない』

「俺も今はまだ大丈夫だ。何かあったら頼む」

「任せろ!死ななきゃなんでも直してやるよ」

 悠は荒崎に視線を戻す。

「問題ないなら行くぞ」

「分かりました…!」

 荒崎は悠の言葉に返事をすると、j9を伴い外へと飛び出した。

 悠はため息をつくと荒崎の後を追いかけ外に出た。







評価、コメントお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ