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神のいない世界  作者: ウニ
変化
12/64

敵対

 





 荒崎が指揮体の追跡をはじめたあと、悠は藍原に荒崎の事を適当に誤魔化しながら街を散策していた。

 正午を過ぎた頃、藍原の提案でカフェに入ることになった。

「荒崎くん、どこ行ってんだろうね。神無くん連絡してみてよ」

 藍原はアイスティーに口をつけながらジト目で悠を見る。

「無理だな」

「なんで?」

「俺は荒崎の連絡先を知らない」

 悠がそう言うと、藍原は驚いたように目を丸くした。

「あんなにいつもくっついてるのに、お互いの連絡先知らないの?」

「…教えたくないしな」

「荒崎くんが可哀想に思えてきた…」

 悠がその言葉に反論しようと口を開くと、そのタイミングで頼んだ食事が運ばれてきた。

「神無くん、ほんとに何も食べなくていいの?」

「ああ、大丈夫」

 悠は不特定多数の人間が多いこの場所で、何かを食べる気にはなれずホットコーヒーだけを頼んでいた。

「まあ、大丈夫ならいいけど」

 藍原は頼んだホットサンドを口に運ぶと、口元を綻ばせる。

 悠はそれを見ながら手元のコーヒカップを持ち上げた。

「そういえば…」

「なに?」

「この街の周辺って、国の調律師の人はいないって聞くけど機械魔獣に殺されたって人も少ないよね?なんでなんだろ…」

「さあな」

 悠は適当に誤魔化そうと真っ黒なコーヒーを飲み込む。

「自分の住んでる町のことなのに関心低くない?」

「お前こそ調律師のことが怖くないのか?あんな奴らいないのはいいことだろ」

 調律師は基本的に嫌われ者だ。自分たちの力を誇示するためだけに神を殺した存在、人外の存在である包魂機を周りに侍らせ力を使い不幸を振りまくとまで言われている。

 悠自身、あまり調律師の歴史は知らないが少なくとも神を殺したのが調律師では無いことと不幸をばらまいていないということだけは断言できるが、それを一般の人間が知らないのは仕方の無いことだと言うことも知っていた。

 悠は藍原の調律師に対する態度が他の人間とは少し異なっているのが不思議に思えた。

「怖いとか怖くないっていうのは実際に会ってみないと分からなくない?だって本当にその人たちが悪い人たちなら、私たちみたいな一般の人間のために機械魔獣なんて言う恐ろしいモノと戦ってくれないと思うの」

「へぇ…」

 悠は藍原の言葉に不思議な気持ちになりながら、それを誤魔化すようにコーヒーを流し込んだ。




 それからしばらくして、藍原が食事を終えると席を立った。

「あ、荒崎くんだ」

「…何やってんだあいつ」

 カフェを出ると、近くのベンチに座っている荒崎を見つけた。

「荒崎くんどこ行ってたの」

 藍原が率先して駆け寄ると、荒崎は顔を上げた。

「…神無さん、すみません。失敗しました」

「…そうか」

「なにが?」

 1人だけ事情を知らない藍原が不思議そうに悠と荒崎を見たが、悠は話題を変えるために藍原に散策の提案をした。

「…いや、なんでもない。せっかく合流できたんだし、これからは3人で行動しよう」

「神無さん………!」

 荒崎が尊敬の眼差しで悠を見つめると、悠はその視線を嫌そうに大きなため息をついた。

「本当に合流できて良かった。15時には元の駅で点呼が行われるから…それまで散策しよっか」

 藍原のその意見に頷くと、悠はちらりと荒崎を見やる。

 荒崎は何が嬉しいのか、ニコニコとしながら悠の後ろにくっついてきた。

(また面倒くさくなりそうな予感がする…)



 *



 しばらくブラブラしていると、あっという間に時間が来る。

 駅に戻り教師が点呼を取り終わるとそのまま解散となったため、悠はその足で神樹の元へ向かった。

 後ろには当然のように荒崎が着いてきていた。

「…おまえ、抱魂機やられたんだろ」

 荒崎に悠が問いかけると、荒崎は悔しそうに顔をゆがめる。

「はい…。あ、でも!核は回収したんで大丈夫です!」

 抱魂機はその中心部に魂を埋め込む核があり、それさえ無事なら何度でも蘇ることができる。

「でも、1から作り直すとなると時間がかなりかかりますね…。調整師もいませんし」

 荒崎は落ち込んだように肩を下ろした。

 そんな荒崎を横目に、悠は視線を前に移す。

「…今、核は持ってるんだよな」

「はい!それはもちろん!」

「なら、何とかなるかもしれない」

「本当ですか!?」

 荒崎は悠に勢いよく迫ると、悠の手を握った。

「神無さんは本当にすごい人ですね!本当に尊敬します!」

「いや、やるのは俺じゃないし…」

 悠は荒崎の手を振り払うと歩みを早くした。



 *



「こりゃあ驚いた!あんたが他人をここに連れてくるとはねぇ」

「…必要だからな」

「神無さん、この人は?」

 答えようとした悠を神樹が遮ると勝手に自己紹介をはじめた。

「私はこの地区の調整屋、神樹 クルリだよ。まあ、今はこいつの専属みたいになってるけど」

  「フリーの調整屋なんてほんとにいたんですね…!」

 調整師は基本的に国に確保されてしまっている。

 調律師よりも数が少なく希少な存在だからだ。

 だからこそ荒崎もかなり驚いたのだろう、目を見開いたまま固まっていた。

 荒崎が驚いていることを気にせず悠が神樹に話しかけた。

「調整屋、頼めるか?」

「こいつの調整だろ?いいよ、あんたが連れてきた人間だし」

 その言葉を聞くと、悠はドアの空いている部屋に向かう。

「それの調整が終わるまで寝る。終わったら起こしてくれ」

「はいよ、任せときな」

 悠は部屋に入りドアを閉めると、カバンの中にいたq2を出し自由にさせる。その後で部屋の中にポツンと置かれているベッドに横になり目を閉じた。






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