序章
初投稿です。
よろしくお願いします。
父が死んだ。
そう言われたのはまだ物心がつく前のことだった。
父の遺品は知らない大人の人が全て持っていってしまい、 唯一残ったものは、ずっと抱きしめていた父からの誕生日プレゼントである機械仕掛けの絡繰だけだった。
幼いながらに父とはもう会えないのだと悟った事だけは覚えている。
*
この世界には、神がいない。ある日を境に神という存在が忽然と消滅したのだ。だがそれと同時期に現れたのが調律師という存在だ。
彼らは人の身でありながら肉体に霊力を宿し、その力を使い機械仕掛けの存在に魂を吹き込み包魂機と呼ばれる絡繰りを生み出す。そして一体のみとはいえ、自身の生みだした包魂機を意のままに操ることができる能力をもつ。
さらに、霊力によって肉体の強化を行うことで一般人よりも遥かに高い身体能力を持っている。
その力は国の軍事バランスさえ左右し、一騎当千の存在として人々に恐れられていた。
しかし調律師の生まれた時期や、彼らの能力をみた多くの人々は調律師のことを嘗て存在していた神を消し去った者達と考え忌み嫌われる存在とされた。
さらには、厄災と呼ばれる機械魔獣という謎の存在が闊歩するようになり、闇夜に紛れ人々を襲い始めた。そして、機械魔獣を破壊することができるのは調律師だけだった。
そのため、各国は調律師の確保を最重要とし他国に国内の調律師を奪われないために奔走した。
だが、この機械魔獣の出現により、一層調律師たちの肩身は狭くなった。
機械魔獣が現れ始めたのは、調律師が生まれてすぐだったからだ。
人々は調律師が厄災を連れてきたのだと、より一層調律師への当たりが強くなった。
日本国も当然その問題は浮上した。他の国よりも多くの調律師が国内に存在していたため、国内は混乱を極め収集をつけるのは困難な状況だったが、国が調律師を管理し必要な場面にのみ調律師を投入し、さらに調律師の保護を行うことで一般の人々、そして調律師の納得を得ることができた。こういった背景から、日本国に所属することを承諾する調律師も多く、日本は世界でも有数の軍事力を持つ国として世界に君臨した。
だが、国に属さない調律師も当然多く存在している。
彼らは自身のナワバリを持ち、国に従わず自らの為に戦う。
彼らには彼らなりのプライドや、望み、そして想いを秘め戦いを繰り広げていた。
そんな、国に所属しない調律師の1人である少年は、世界の真実を知るために1歩を踏み出そうとする。
真実が少年にとって優しいものでは無いとしても、彼は真実を求め進み続ける。
これはそんな少年の物語だ──