第5話 デート
(変な恰好じゃないだろうか?か)
デートにあたって俺は普段の格好と全然違う。いつもの戦闘装備ではなくただの見た目用の装備だ。黒の解襟シャツの下にはシンプルに白のTシャツに下は、黒のジーンズ。これと言って特にいうこともないようなシンプルな装いだ。仕方ないじゃん。それ以外に思いつかなかったんだから。
噴水広場で待つことおよそ5分。待ち人が姿を現した。
「ユウ君、ごめーん。」
そこには、白のレースを基調としたワンピースを着たクロがいた。しかも肩だしなのにクロの白く滑らかな肩が見える。正直かなり色っぽい。
「えっとユウ君。どうしたの?」
しまった思わずずっと見つめてしまっていたようだ。これじゃあただの変態じゃないか。
「えっと、クロがきれいだったから。見とれていたよ。」
何言ってんだ俺ー。そんなことを言って許されるのはイケメンだけだ。そんなきざなセリフを俺がはいたところで・・・。
「そ、そう?ありがとう。」
え?頬を赤らめて少しうつむくあたりが超かわいらしいんですけど。何この生物。
「とりあえず、どこか移動しよう。」
「う、うん。そうだね。」
この時の俺たちはかなり周囲のプレイヤーたちから注目されていたがもちろんそんなことに俺が気付くわけもなく、あとで掲示板を見た俺はめちゃくちゃ悶えた。
「ねぇ、これなんてどう?」
「うーん、こっちも捨てがたいんだよなー。」
今俺とクロはアクセサリーショップにいる。最もここで売ってあるアクセサリーに装備効果がないので本当にただの飾りとしてのアクセサリーだ。ここで俺たちは、互いにいいと思った商品を選んでお互いにプレゼントしようということになった。
(なかなかいいのがないなー。)
正直クロは、何でも似合うと思う。贔屓目なしにクロは、かなりレベルの高い美少女だと思う。俺にはもったいないくらいだ。だからこそ、ゲームでよかったと思う。現実の俺なんかが釣り合うハズなどないのだから。
(ん?これは)
俺の視界に一つ気になる商品があった。それは、ハート形のネックレスで赤色に輝くハートが特徴的だった。
「ユウ君、いいの見つかった?」
「あぁ、これだ。」
俺は先ほど見つけたネックレスを見せる。
「すごいきれい。」
クロの表情もとても微笑ましいものでそれだけで気に入ってくれたのがよくわかる。
「じゃぁ、ユウ君のはこれだね。」
クロが選んだのは、俺が選んだネックレスの隣にあったもの。俺がクロにあげるつもりの物とは、対照的で青色に輝く星が特徴的なネックレスだった。
正直すごくかっこいい。クロのセンスの良さを感じた。
◇◇◇
「今日は突然ごめんね?いきなりデートに誘っちゃって。」
「いや、全然かまわないさ。俺だって楽しかったしさ。」
今俺たちがいるのは、ちょうど街の端っこに位置する場所。ここからは、海を眺めることができて勝つ人もほとんどいないという最高の場所だ。すごく居心地もいいし、景色も最高だ。
「まぁ、それで今日嫌なことがあってね。ユウ君にいやしてもらおうとしたってわけさ。おかげでもうすっきりありがとう。」
「・・・俺の方こそいつもクロにいやされているよ。むしろ感謝するのはこっちの方だよ。」
心の底からの黒の笑顔に思わず見とれてしまいそうになった。
「そうだ。さっきもらったネックレスつけてくれないかな?私もユウ君の方を付けるからさ。」
「あぁ、いいぞ。」
お互いにネックレスを付けるというのはどこか恥ずかしかった。何よりクロの肌に触れるというだけで緊張した。そのせいか少しつけるのに手間取ってしまった。
「ユウ君、かっこいいね。」
「クロの方こそ、きれいだよ。」
月明かりに照らされつつ数秒間見つめ合った俺たちは、互いに何も言うことなく唇を交わした。初めてキスの味は、どこか甘酸っぱかったような気がする。
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