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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第五章 恩師救出と教え子の旅路
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83話:雷勇者の捜索隊

 ミルキット伯爵家当主のグルトンは朝から面倒な客たちを相手にしていた。

 一人目は銀狼騎士団の団長を務めているミシェル=ベント、二人目は近衛騎士団の団長であるラインハルト=アレクシス、三人目はこの国の王城内に召喚されてつい最近帰ってきた勇者、神立信壱、そして、その守護者でもあるノモルの四人だ。一応、銀狼騎士団の部下もいるが、ラインハルトは側近の二人だけ、ノモルは誰も連れていなかった。

 銀狼騎士団の信頼を取り戻すために動員を銀狼騎士団に限ったのだろうとグルトンはあたりをつけた。

 そのまま、四人を応接室に案内する。ミシェルは自分とラインハルトの部下を部屋の前に残すと、応接室には自分と、ラインハルト、信壱、ノモル、グルトンの四人だけになる。


「本日は、遠い所からわざわざお越しくださり、ありがとうございます。しかし、誠に申し訳ありませんが、娘がさらわれて少し体調を崩しているかもしれません。皆様にうつしてしまうのも悪いので、お話は手短にお願いできますか?」


 グルトンはサラッとミシェルの失態を突きつつ、話を手短に終わらせるように要求した。ミシェルはグルトンの言葉に若干苛つきつつ話を始める。


「………これは内密にして頂きたい話なのですが」

「はい」

「ラティーナ第一王女が王都から姿を消しました」

「はぁ」

「つきましては、貴殿に王女の脱走幇助の容疑が掛けられています」

「成程、心外だ」


 グルトンは犯罪者扱いされて不機嫌そうに顔を顰める。


「しかし、ですね、王女殿下は貴方が経ったと同時に姿を消してしまわれたと騎士団側の見解です」

「王女殿下には申し訳ないが、こちらは行き先も目的も検討は………、フォルス公爵派の本拠地か?」

「おそらくは」

「だとしたら、大体中間あたりの我が領都に辺りをつけるのは納得ですな」

「いるのであれば、出してもらえますね」

「そう言うのは、いるのを見つけてから、言ってもらえますかな?」

「捜索しても?」

「構いませんよ」


 グルトンは大分、堂々として受け答えする。不審な点が無い為、ミシェルも難癖が付けづらかった。

 ミシェルは今回のラティーナ捜索に銀狼騎士団の運命をかけていた。式での失態を取り戻すために軍部にも協力を要請してだいぶ大規模な部隊を預けられた。その数、7千。二人組を見つけるだけにしては、過剰な戦力である。他の狙いもあるのだろうかとグルトンは勘ぐった。

 直ぐに指示を出しに行くかと思ったがグルトンの話し合いをミシェルは優先した。


「まだ、聞きたい事でも? それとも、今回の件とヘレンが奪われた事に関係が?」

「………そこら辺はまだ捜査中ではあります」

「そうか。で、あればこんな所でくすぶっている暇はないのではないのではないか?」

「ぐっ、知っていることがあるのであれば、全て話していただきたい」

「知らない物は知らないし、これ以上話すことは無い。………まぁ、君はまだ若い、失敗等いくつもある筈だ。気にするなとは言えないが、今回の失敗から学ぶと良い」


 子供を宥める様な口調で言われてミシェルの高いプライドは逆なでされる。しかし、言えることもなく、これ以上聞けることもないのでそのまま応接室から出て行く。


(ラティーナ様の目的地をフォルス公爵派の拠点の方角に向かせることに成功したが、どこまで上手くいくか。まぁ、祈るしかあるまい。そう言えば、あの勇者の名前は祈るっている意味だったかな? なら、あの勇者に祈るしかないか)


 溜息を吐きたい気持ちを抑えつつ、娘たちが逃げて行った方角を見据える。


*  *  *


 ミシェル=ベントは苛立っていた。最近、彼の人生史上、最高の不祥事が起こってしまい。今はそれを取り消すために恥を承知で大規模部隊を展開して脱走した王女を探している。これで見つからず、フォルス公爵との合流を許したら大失態だ。銀狼騎士団の解体は免れないだろう。


「私は各捜索隊の指揮官に指示を出してくる、ラインハルトは動きがあるまでここで待機だ。勇者様もどうかここで待機をお願いします」


 ただ、敬語なりを使う程度の理性は持っていたのか、それだけラインハルトと信壱に伝えると不機嫌さを隠そうともせずにドシドシという効果音が付いてくるような足取りで進んでいく。


「機嫌が悪そうですね」

「まぁ、無理もないでしょう。事情が事情な上に彼は昨日、今日で休んでもいませんから」

「ま、事が済めばヤツの機嫌も治るでしょう。それより、伯爵に長期の宿泊の許可を貰いに行きましょうか」


 ノモルがそう言うと、全員が踵を返してグルトンがいるであろう扉を叩く。


「どうぞ」

「失礼します」


 中から入室の許可が出ると断ってから中に入る。

 グルトンは少し意外そうにしながら対面の席を勧める。ノモルは紅茶がキレているのを確認すると、許可をもらってから茶器を借りてお茶を淹れる。

 その間にラインハルトと信壱は長期宿泊の許可の話をする。


「成程、勇者様は随分と律儀なのですね」

「あはは、先生に筋は通しておけと教わりまして」

「その心がけは大事だと思いますよ。貴族と話すとなると、思わぬところで足元をすくわれる」

「参考になります」


 老練の貴族から高評価が得られているのであればこの姿勢でいた方がいいだろう。自分の立場等国王の機嫌一つでいくらでも組変わるのだから、なるべく国内に人脈を作っておきたい。


「………こちらからも聞きたいことがあるのだが構わないだろうが?」

「ええ、ミシェルさんが来るまでなら大丈夫ですよ」

「では、王女殿下がいなくなってしまわれたみたいですが、他にもいなくなってしまった人とかいますか?」

「ええ、いますよ」


 信壱は嘘を吐くことなく正直に答えた。すんなりと、答えるとは思わなかったのかグルトンも少しびっくりしている。


「まさか、正直に答えてもらえるとは」

「隠す事もないでしょう、むしろ身内なら話してもらえていたのでは」

「ふっ、勇者様は大分面白い少年だな。召喚前はどう言った生活をしていたのか教えてもらえないか?」

「大丈夫ですよ。まずは、そうですね………」


 何から話そうか、信壱は顎に手を当てて考える。そこからは地球のたわいもない事を話していく。グルトンは道具や文化などの事を興味深そうに聞き入っている。途中で、ノモルから紅茶も差し出された。


「魔法技術で再現できそうなものはあるだろうか?」

「うーん、物理学、化学なんかの複数の学問を踏襲しての製品ですからね、基本だけでもいいんでこの世界の人にそれを学んでもらうことが早いですかね」

「しかし、ニホン商会が似たようなものを生み出しているが?」

「そうなんですよね。不思議ですよね~」


 信壱はとぼけた風に相槌を打つ。グルトンもこれ以上馬鹿正直に話が聞けるとは思えなかったので、別に気にしていない。


「話はこれで大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう。面白い話が聞けたよ。迎賓館に部屋は用意しておいてあるから、好きに使ってくれ。体を動かしたいのなら訓練場にでも行くと良い」

「感謝します。では、私はこれで失礼します」


 信壱は紅茶を一気に飲み干すと応接室から挨拶をして出て行く。ラインハルトとノモルも信壱について出て行く。この日はラティーナ捜索隊は有益な情報を得れる事はなかった。

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