表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第五章 恩師救出と教え子の旅路
95/151

80話:王都に残った者達は

 ラインハルトは敵を逃がした後悔よりも、会場の人間を守れた安堵感の方が強かった。


「陛下、申し訳ございません。実行犯と襲撃犯を取り逃がしてしまいました」

「気にするな。とは、言えないか。戦って見て何かわかった事はあったか?」

「申し訳ありません。主犯と戦いましたが、空からの襲撃に対応せざるを得ませんでした。しかし、まともに戦わざるを得ないときは難しいかもしれません」

「お前にそこまで言わせるか」


 国王ーー、ラムード=ファン=ガイネアは難しい顔をして唸る。ラインハルトは現状でラムードが自由に扱える最強の戦士だ。国王としての力はあるが、それとはまた別の話だ。

 彼が難しいという戦力はごく少数である。だが、今回の襲撃でその小数との共通点は見つけらえなかったのだろう。少なくとも、ラインハルトの剣を足で止められる人間は少ない。


「可能性は少ないが花嫁の捜索を進めて置け」

「はっ!」


 ラムードは捜索の任だけ出す。すると、入れ替わるようにベント公爵が近づいてきた。


「失態だな。カールルスプ」

「っ! いえ、このままでは終わりません! どうか、我が家に捜索の任をお任せください!」

「万全の準備を整えて、情報の操作も完璧に整えていたとお前は報告してきたが、このざまは何だ?」

「万全に準備はしました。しかし、今回の規格外すぎる襲撃者の対策は出来ていませんでした」

「それも含めて対策を立てるのがお主の仕事であろう。というよりも、今回の様なパレードをやる必要性を我は感じてなかったのだが、その意見を否定して強引にこの行事を勧めたのはお主たちだろう。おかげで、我が国は天才的な魔導師を一人失ってしまったぞ。この責任、必ず取ってもらう。沙汰は追って伝える、暫く王都の自宅にて謹慎していろ」

「………っ! はい、了解しました」


 ベント公爵は頭を下げて、よろよろとその場を後にする。

 ラムードがベント公爵と話していると気絶させられた騎士達の回収が終わり、大体の現場復帰が進められた。

 すると騎士の一人がラムードに報告してくる。


「陛下。現場の復帰が終わりました。襲撃者達の確保も済みました」

「そうか、内容は後日まとめて報告書を提出してくれ。襲撃者達の情報が出てきたら最優先に伝えろ」

「了解です」


 その後、ラムードは方々に指示を出して王城へと帰っていく。


*  *  *


「………」


 グルトンは棒立ちの状態であった。周りから見れば、愛娘を奪われて放心状態であろうと思われている。まぁ、実際少し放心状態である事も否めない。


(私の依頼はこなしたのであるが、やっぱり少し複雑だな)


 流石にあんな大胆な真似をされるとは思っても見なかったが、結果的には満足のいくものだったので水に流そうとする。


(しかし、公衆の面前であんなことをすべきではないのではないのか? だとしたら、ムカついて来たぞ今度会った時には必殺の一撃をかまさなくては。まぁ、無意味だろうけど)


 彼我の実力差をハッキリと理解しているからこそ、冷静な頭で結果を予想する。

 今回の事で、ベント公爵の権威は落ちていくことになるだろう。少なくとも勢いはなくなる。勢いの低下が止まる前にもう一つ手を打っておくことにする。


(今日中に出られるようにしておかなくてはな。陛下の方も、準備は整っている筈だし都合をつけてサッサと帰るか)


 グルトンは悲しみを顔に出して演技を始める。項垂れるように地面に座り込み、顔を俯ける。すると、騎士の一人が近づいて肩に手を置く。


「ミルエット伯爵、その、今回の事は、大変…」

「うるさい!」

「っ………!」


 グルトンは騎士の手を精一杯の力で振り払った。表面上は穏やかな気性として知られていたグルトンが感情を露にしていて会場は呆然としている。グルトンはそのまま襟を掴んで騎士に詰め寄る。


「貴様に、何が分かる! 娘をあんな暴漢に奪われ! 汚されて! 無事なのかもわからないのだぞ! こんな所で、燻ぶってないでとっとと捜索に向かったらどうだ!」

「は、はい」


 騎士は頭を下げると、持ち場へと帰っていく。グルトンはヨロヨロと、気落ちしている様に何処かへ向かう。全員が憐れに思い慰めようと声を掛けようとするが、ラインハルトが近づいていくので、一歩引いた。


「ミルエット伯爵、どちらへ?」

「すまないが、自領へ帰らせてもらう」

「………しかし、今は」

「申し訳ないが、家族への事情説明もある、気持ちの整理もしたいし帰らせてくれ」

「………分かりました。ご迷惑おかけします。陛下への説明は私の方からしておくので」

「感謝するよ」


 グルトンは落ち込んだ顔を作ってそのまま自家所有の飛空艇に乗り込む。そこには、先に数名の乗客が乗っていてそれを確認するとしたり顔で、王家と共に立てた作戦の次の段階へと移行する。


*  *  *


 会場にはいろいろな国から要人や外交官が招かれていた。その中の一人、レドロスと話していた細身の男ーー、ジャンがジンが去っていた方向を見つめている。


(ふむぅ、困りましたね。ここでベント公爵の勢いがなくなると今後に支障が出てきてしまいそうですね。……それに、あの襲撃犯、一体どこの所属なのか。私の眼でも誤魔化されるとは思いませんでしたよ)


 労わるように自分の眼を撫でると、それ以上ジンが逃げ去った方向を見るのはやめてタンカに載せられて運ばれていくミシェルを見つめる。

 今回の式は彼はミシェルに招かれてきている。出席した結果、騎士団たちの失態を見せつけられている。表面は神妙な顔を取り繕っているが、内心は吹き出しそうになるのを抑えるのに必死だった。彼とミシェルは長い付き合いであり、ミシェルの方はジャンを唯一無二の友だと思っているほど彼との信頼関係は築いていた。今回の一件のフォローを後々に入れることを決め、今はこんな面白い場面を楽しんでおくことにする。


(式が終わったら帰る予定でしたが、少し動きがありそうなので暫くこの国に留まる事にしましょう。あの男から遣わされた傭兵もいることですし多少荒事起こしてもどうとでもなるでしょう)


 ジャンはそんな事を考えて内心ほくそ笑みながら、神妙な顔で騎士達の誘導に従って宿泊施設へ向かう。


*  *  *


 ジンによる襲撃のあった夜。王城の敷地内に用意された宿泊施設にて、公爵令嬢であり、大商会の代表であるエリーゼ=レズモンドは黄昏ていた。招待された身とはいえ、厳しいスケジュールの調整を頑張ったうえで此処に来ているのだ。今回のような事が起こり、予定が壊れた事でちょっとだけ、不満げだった。


(まぁ、補填はこの国に請求できるし。そこら辺は気にしてないけど。それに、今回の事は皇国にとっては僥倖ね。目障りな一派の勢いが大幅にそがれたわけだし)


 腹心のメイドに用意してもらった紅茶を口に入れて考え込む。


(そこら辺の調整は陛下たちがやるでしょうけど、まぁ、こっちにかかりきりなんてできないわよね。もう直ぐ、()()()だし。……そういえば)


 考え事を深めているとふと、思い当たることがあった。


「ねぇ、レティ。貴方、昔にヘレン様と交流があったようだけど心配じゃないの」

「心配ではありますが。彼女も私もいい大人。余計な事は言えませんよ」

「そうなの。まぁ、本人自体の利用価値も高いし殺される可能性は低いだろうけど、一時でも早く見つかることを祈りましょうか」

「御意」

「それに帰ったら、超級迷宮の事にかかりきりになると思うから、覚悟しておきなさい」

「そうですね。今年もヒードラ家の皆さま方には苦労を掛けますね」

「そうね。若い身で生贄にならなくてはならないとなると同情するわ」

「エリーゼ様。それ以上は」

「………そうね。今更、取り繕ってもしてもしょうがないと思うけど。ビャクヤの花嫁様には、皇国の為になってもらいましょうか」


 エリーゼは祈るように目を閉じて今後の自国の未来がよくなるように祈った。

公爵令嬢の名前をかえさせてもらいました。

エリーネ→エリーゼ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ