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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第五章 恩師救出と教え子の旅路
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76話:一方、その頃

 祈達はジンに依頼されるために自力でミルエット伯爵家が納める領地の領都ミルキアに来ていた。


「やっとついたー」

「最初にニホン商会の支部が出来たところなんだって。色々揃ってるだろうし楽しみですね」

「お風呂入りたーい」

「美味しいモノ食べたーい」


 呑気な会話をしながら領都周りを囲む外壁の門をくぐり、宿へと向かう。ニホン商会の経営する宿を数週間分とることにする。


「どうしよう?」

「お風呂に入りに行きましょう。このままだとこの子達寝そうだし」

「そうしますか」

「だるいー」

「やだー」


 優夢と望がお風呂に入ろうかと話し合い、入ることが決まると祈と願は駄々をこねている。しかし、抱えられて強制的に銭湯に連れていかれる。番頭にお金を払い銭湯の大浴場を借りることにする。

 ロッカーに荷物を預けて鍵をかける。タオルと石鹸をもって全員で大浴場に入り入浴を済ませる。ちゃんと、お風呂のマナーはちゃんと守っていた。


「このまま、ご飯食べに行きましょうか」

「「「はーい」」」


 四人は近くにあった女性用の食堂に入りそこで食事も済ませることにする。女性用の食堂は街の規模によって作られるが、女性専用の食堂を作る事でお酒でのトラブルを避けたりできるのが利点なのだ。


「あー、これからどうしようか」

「………依頼の内容ってなんだったっけ?」

「要人の護衛依頼。トウキョウに連れて行くって話だったよ」

「その後、何処に行こうか?」

「帰る為の手段って言っても、見当がつかないよね」

「先生にあった時に何処が怪しいか聞いてみましょうか」


 依頼の後の事を空想しながら話し合っていた。この依頼がどれだけ過酷なものになるとは、この時はジンですら予想は出来ていなかった。


*  *  *


 祈達がミルキアに来た頃。一方のガイネルスではミシェルが仕事をしていた。彼は最近新設された騎士団の団長を務めている。と言っても、脅迫で取り付けただけの形だけの騎士団なのだが、そこそこ実力もあり、盗賊の退治なんかを積極的に行って他の騎士団よりも最近は目立った成果を上げている。今は一週間後の結婚式のための書類仕事なんかを側近の男性と共に片付けていた。


「さて、準備は整っているのだろうな?」

「はい、内密に準備しているので王都内の重要人物についてはバレてはいません。他国の人物なんかにはスケジュールを調整して、王都内の貴族たちにはバレない様に集まってもらっています」

「全く、父上の心配性にも困ったものだ」

「ミシェル様、そのような発言はお控えを誰がどこで聞いているか分かりませんので」

「お前はそうは思わないのか?」

「ミシェル様が率いる銀狼騎士団がいれば他は必要はないと思いますが、念には念ですし、いても損はありません」


 ミシェルとヘレンの結婚式では、会場までとパレードの道中と挙式の警備を銀光騎士団が務め、披露宴の会場内の警備を近衛騎士団が務め、その上空を空挺騎士団がカバーすることになっている。まさしく鉄壁の布陣であり侵入者など現れる前に捕縛される。


「確かにそうだな。まぁ、ここに突っ込んでくるのなら余程準備不足で阿呆なのだろう」

「同感です」


 側近の男性はそう言うと部屋から出て提出書類を提出しに行く。


「さて、あの体を楽しめるのは一週間後か。ふふふ、今から胸の高鳴りが止まらないな」


 一人になったミシェルは、股を膨らませながら気持ち悪い笑みを浮かべている。


*  *  *


 打って変わって、場所はセイムント聖王国。いま、その王城には二十数人の高校生くらいの男女が武器を取って訓練をしていた。その顔に余裕はない。


「はぁ、はぁ、はぁ!」


 勇者の少年ーー、緋山勇樹は膝をついて息を荒らげている。その目の前には男性が立っている。しかし、聖王国の騎士の騎士服は白を基調にしているにかかわらず、その男の服は黒を主張していて正規の騎士とは思えない程粗野な感じを前に出している。


「はっ! 前よりは剣筋にブレが無くなってきたが、剣技の習熟度はまだだな」

「当たり前でしょ、こっちは初心者なんですから!」

「甘い、甘い、敵がそんな理由で見逃すわけねぇだろ。死ぬ気で身に付けることだな」


 男は笑いながら訓練場から去っていく。勇樹は苦笑いししつつも息を整えてしっかり立つ。そのまま、剣の型稽古を始める。周りの人間もそれに感化されたのか全員が気合いを入れて訓練に取り組む。

 訓練場から出ていった男はその光景を目に入れて笑っていた。すると、その後ろから声かけられる。話し掛けてきた男は病的な感じのする細身の男でボロボロという言葉がこの上ない程に似合っていた。


「レドロス様」

「あん? お前か…………、何のようだ?」

「いえね、一応、しばらくでかけますし、挨拶しておこうと思いまして」

「気持ちわりぃ、別にそんな仲でもねぇだろ。何処かに行くんだったらさっさといけよ」


 男ーー、レドロスは面倒くさそうに溜息を吐きつつ、鬱陶しそうに手を払ってどっかへ追いやろうとする。細身の男はやれやれという様に肩を竦めつつも話を続ける。


「それにしても、勇者に剣術を師事するとはあなたも随分と酔狂な事をしますね」

「へっ! それが聞けよ、あいつはこの世界に惚れた女が来てるかもしれねぇんだとよ」

「ほう」

「まぁ、ここから出られない憐れなあいつに代わって、おれが先に見つけてやるんだよ」

「貴方にしては優しい事をする」


 細身の男は感心したように話す。しかし、その目は少しも興味を示したはいなかった。


「だろ? 俺は優しいからな、見つけ出して、ここに連れてきてるんだよ。それでその後に、あいつの前で犯してやるんだよ。ははは、その時のあいつの顔を想像するだけで興奮してくるぜぇ!」

「ほどほどにしておいてくださいよね。下手に育てて勇者を刺激すれば何が起こるか分からないんですから」

「塩梅は分かっているんだから心配すんな」


 気持ち悪い事を話しながらレドロスは愉快そうに笑っている。細身の男はそのままレドロスと一緒に城内を歩き程々の所で二人は別れた。

 レドロスは城内から出て自分の持ち家となっている『剛腕の隻眼巨人兵団』の本拠点に帰っていくとそこには数人の彼と同じ傭兵が暇を持て余していた。


「あ! 団長、お疲れ様です」

「おう、早速だが仕事だ」

「はい、何でしょう?」

「お前らガイネア王国で何かあるらしいからジャンの野郎を手伝いに行け」

「何があるんすか?」

「さあな? それを調べる為にもさっさと行ってこい、ジャンの野郎が好きに動いていると鬱陶しいんだよ」

「まぁいいっすけどね。じゃあ、3人程でいいですか?」

「おう、サッサと言って来い」


 傭兵たちはそう言われると3人程出撃する人間を決めて一回の一部屋に入るとそこから大量の魔力が放出され、その部屋から直ぐに消えてしまった。レドロスは自室に戻りこれからの事を楽しそうに夢想して眠りにつくのだった。

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