75話:裏方のやり取り
ジンは市場や仕立て屋のスケジュールから結婚式は一週間後にあると予想していた。彼女の反応を見てその予想は正しいだろうと確信した。恐らくグルトンは嘘の情報を掴まれている。当日になったら、強制的に連れていくのか、それとも二回に分けて結婚式を行うのか。
「どっちにしろ、一週間後か」
恐らくは敵対勢力の準備をさせない様にベント公爵が仕組んだことだと思った。何をするにせよ、一週間の差はデカい。裏側で動くものは準備にかける時間を逆算して、丁度で間に合うように準備をする。早めに準備をして準備の段階での計画の発覚を防く為だ。
(まぁ、指示を受けているのなら、潜伏場所を見つけるのはたやすい)
ジンはパレードの通り道になっている場所で最近入居手続きをした住人か最近使われるようになった部屋を探す。聞き込みをし続けながら探すと、直ぐに見つかった。しかし、直ぐに突入はせずに夜になるまで待つ。
夜になり、使っている宿屋から抜け出して目をつけていた家屋に侵入する。中には黒装束の怪しい集団が何かしらの準備を進めていた。
「どうも、こんにちわ」
「…っ!!」
ジンの声に素早く反応し、ナイフを投擲する黒装束の集団。ジンはそれを屈んで躱して、拳を鳩尾に打ち込んで全員を気絶させる。一応、仮面で顔を隠しているので、身バレは防いでいる。
黒装束が寝ている隙に縄を取り出して、全員を縛り上げる。その後に部屋の中で用意していた物資をあさり始める。
「暗殺が目的か。予想通りではあるな」
室内には暗殺用にかき集められた使い捨ての魔道具や武器がある。しかし、黒装束の奴等の体を調べてみても、黒幕に繋がる手掛かりはない。
「ほれ、起きろ」
ジンは聖術『きつけ』を行い黒装束の一人を目覚めさせる。
「っ………!」
「落ち着きな、目的は半分一緒なんだし、それに多分君達も知らない情報を持ってるぜ」
「………目的を言え」
黒装束の男は舌打ちをしつつ、ジンに情報を求める。ジンは黒装束の服をまさぐった時に自決用の毒が口の中についていたが、ジンはそれを外してある。
「ヘレン=ミルエットを救出するようにある御方から、依頼された」
「我らの任務を邪魔すると?」
「最終的な目的は、ベント公爵の失墜だろ? だと、したらヘレン=ミルエットを排除するのは今後の国にとっては惜しいのではないか?」
「我らには関係ない、与えられた指令をこなすだけだ」
「それを俺が邪魔するんだ。達成できるかはともかく、難しくなるだろう?」
「だからと言って、他国に持ち逃げされるわけにはいかないだろう。協力は無理だ、サッサと殺せ」
「ドライだね。けど、無抵抗の人間を殺す気もないんだ。式が終わるまでは大人しくさせてもらうよ」
「ふん、甘いな」
ジンは薬品を全員に注射して長期に渡って眠ってもらうことにする。ジンは全員を持ってスラム街の廃屋に隠しておく。そのまま、同じような目的の集団を二つほど捕まえて、同じようにスラム街の廃屋に押し込む。
* * *
宿の方に戻り、ジンはベッドに寝転がる。しかし、その間も仕事をしている。次にやる事はニホン商会として結婚式をお祝いをする事だ。花を差し出すのが無難であろうが、それは大きな貴族がやっていたりするだろうから、別の物を送ろうと考える。因みに貴族の結婚の贈り物は一週間前か、結婚式の前後に送るのが一般的なので割ともう贈り物としては集まっているタイミングである。ジンはニホン商会の支部に寄った時に贈り物は既に渡して置いたと聞かされていたので、商会長が個人的にお祝いするという意味も込めて別で用意することにしていた。
といっても、ジンに贈り物のセンスがあるとは言えないので、部下からのアドバイス通りにオルゴールでも送ることにする。一応、飾りつけの為にタキシードとウェディングドレスを着ている人形を作り、くっつけて置く。
「こんなもんか」
少し仕上げを行い、ラッピングをしてインベントリにしまっておく。ジンは当日の為の計画を練り始める。暗殺者たちの協力が得られないのなら、ジン一人での単独での突撃を行うことになる。警備は厳重になるだろうし、曲がりなりにも王族も出席するイベントだ、出席者として会場に入ったとしても怪しいものは取り上げられるだろう。
「ううーん、出席は出来ないから、その代わりって事で渡して置くか」
贈り物のオルゴールを思い浮かべながらジンは欠席の言い訳を思い浮かべて置く。
欠席して外から会場に侵入して方が黒装束たちの黒幕たちの目論見も達成しやすいと判断した。暗殺されるよりは誘拐されるの方が捜索の手を使わざるを得ないため別の事に当てる人的余裕を失わせることが出来る。
「さてと、成功したら王都は派手に揺れるな~」
ジンは面白そうにクククと笑う。ジンの思い描いたとおりに事が進むのであれば王都から二人の重要人物が消えることになる。




