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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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72話:勇者たちの卒業式

 勇者が召喚されてから四か月目。今日はいよいよ、卒業予定の日。

 今日は朝から飛ばしている。卒業式はジンと多対一の模擬戦。これをクリアすれば、晴れて卒業。それぞれの所属組織に戻ることになる。地と氷に関しては立場が曖昧なのだが、それ以外に関しては後ろ盾がちゃんとある。

 それはさておき、ジンとの模擬戦は白熱していた。

 生徒側はジンに投げられたり、殴られたりを繰り返しまくって散々ストレスが溜まっていて、この人はちょっとやそっとじゃ死なないことを理解しているため、最悪、殺してしまっても構わないというように気持ちで武器を振るっている。ジンの方は最初とスタンスは変わらず殺さないように手加減をしている。この4ヶ月で彼らのレベルは平均で114くらいになった、それでもまだまだジンには届かない。

 今は祈達のパーティーと戦っている。その前には信壱達のパーティー、蓮人達のコンビとやりあっていたと言うのにジンは息切れせずに木刀を持って祈の神器と切りあっている。


「らあぁぁぁ!」


 祈りとジンが切りあっていると願が間にはいる。ジンは願の膂力に弾かれる。飛んでいった先には望が待ち構えていて槍を振り抜こうとするが、後ろに構えられた木刀で防がれる。しかし、望はそのままジンの腕を掴んで動きを止める。流れるような連携でジンの喉元を祈がかっさばこうとするが、ジンは望に腕を持たせたまま両足をあげて思いっきり突きだす。軽い祈はそのまま吹っ飛んでしまい、ジンはそのまま望を祈に向けて投げる。すると、光の砲撃がジンの背中に着弾する。


「アッツ!」


 優しい優夢も、もはや手加減は考えない。全力でぶっ放す。願が祈と望を抱えて射線から脱する。これで、優夢も心置きなく連射を開始できた。よく狙って当たる相手ではないのは分かっているので狙撃ではなく、面での制圧射撃に切り替える。

 前方全面をカバーする射撃にジンは対応していく。やり方は簡単、木刀で光の矢を弾いていくだけである。元々、連射性と速度を優先していたので攻撃の重さはそれ程でもない。見切ることができたら、この程度はジンにとっては造作もない動きだった。

 対応されたら次の手を祈が打ってきた。影魔法で、ジンの後ろに回り込む。ジンはしゃがんで祈のナイフを躱す。しゃがんで躱したジンめがけて勢いが増した光の矢がさらに大量に突っ込んでいく。祈は影に潜りこれを躱すがジンは不安定な態勢での迎撃を余儀なくされる。木刀での迎撃は諦め、強靭な脚力を利用して後ろへ飛ぶ。ジンが立っていた場所に光の矢が着弾して爆散する。地面が抉れ、向こうの世界ならおおよそ人に向けて撃つようなものではないことが分かる。

 優夢は続けてジンを狙って大量の光の矢を壁のように放つ。ジンは恵まれた膂力をフルに活用して衝撃波を放つ。それにより、光の矢は着弾する前に全て掻き消される。ジンは木刀を構えて突っ込んでいく。狙いは優夢。邪魔な援護射撃を早めに潰そうとする構えだった。両側には望と願が構え、優夢を守ろうとする。意図を理解した優夢は直線に突っ込もうとするジンを迎え撃とうとする。

 大量の魔力を込めた攻撃をジンに向けて放つ。直径数メートルの光の砲撃がジンを飲み込もうとする。ジンは避けるのも弾くのも無理だと悟って闘気で全身を覆ってなんとか防御し攻撃が終わった瞬間に一足飛びで優夢の間合いに入って顎を打ち上げて気絶させる。

 そのまま体を回転させ、両側にいた願の側頭部、望の前腕部に木刀を強く打ち込む。結果は願は意識を失い、望は槍を落とすことはなかったが、そこそこの怪我で後ろに下がるのを余儀なくされる。


「これでっ、どうっ!」


 引けばやられるのは分かっている、だが、あの場の最善はあれだけだった。捻挫させる気で強引に移動の起動を捻じ曲げた望は槍を最速で突く。ジンは腕で防ぐが深々と突き刺さる。そのまま腕の筋肉を使って槍を固定し、そのまま鳩尾を拳で一発。しかし、腕の槍を抜く時間は与えられず、祈が背面から猛攻を仕掛けてくる。すると、今度は望が後ろから抱き着いて動きを止める。前後から母娘がジンを追い詰める。


「よく、頑張ったな」


 そう一言ジンが告げると、ジンの体から膨大な電気が放出されて衝撃が二人の体を貫く。


*  *  *


 特別棟の教室内。ココでは今、小さめのパーティーを開催していた。そこに出席している生徒達は傷の手当てをされて、包帯やガーゼを巻かれて治療されている。そんな傷跡が痛々しい参加者ではあるのだけれど、晴れやかに騒ぎながら色々やっている。

 余興に、コントに、カラオケに、今はこれからの苦しい未来を忘れるためにどんちゃん騒ぎをしていてた。それを壁際で和やかにジンは見守っていた。


「入らなくていいんですか?」

「んー? 良いんだよ、俺が入る場所じゃないしね」


 今日で彼らは卒業でジンはささやかなパーティーを開催してやっているのだ。因みに、この世界の常識でお酒は全員飲めるのだが、アルコール類は出していない。

 望は若い陽気に当てられたのか、少しだけ疲れた顔をしている。


「お疲れ様です」

「あはは、オバサンには少しキツかったね」


 考えてみれば望はもういい歳である、こう騒ぐような催しは好みではなかったかもしれない。しかし、そう言っても太陽は前世の年齢も合わせると四十路に入る頃だ。もうおじさんで誤魔化しがきくとは思えない。


「これからどうするんです?」

「うーん、悩んでるけど、迷宮攻略を中心に冒険者活動をしていくのがベストかな」

「帰る方法探しですか」

「うん、諦めたわけじゃないしね」


 望の気合の入った返答に少し苦笑いしてしまうジン。姿は二十代なので今は姿相応にエネルギッシュな状態に見える。


「応援はしますよ」

「………ねぇ」

「はい?」

「先生は戻りたいとか帰りたいとかも思わないの?」

「………少しだけありますよ。けど、あそこで俺は一度死んだんです。死んだんなら、人生はそこで終わりにしなくちゃいけないんです。だから、前世(前の俺)の未練は捨てました。思い出すことはあっても、追い掛けはしませんこれから先も今の人生を歩んでいるのはジン一人です」

「………そう」


 望は少しだけ悲しそうな表情をした。そして口を開く。


「先生はさ、少し溜め込み過ぎなんだよね。もう少しくらい、生徒を頼りにしても良いと思うんだよね。少し、頼りないかもだけど」


 悪戯っぽく笑う望の笑みはいつもの彼女より魅力的で不覚にもジンはドキッとしてしまった。


「せんせーい! 次、先生が歌って!」


 カラオケをやっていた祈から、リクエストが入る。ジンはそれに乗って歌うことにした。カラオケ機はこの世界の音楽や、前世でジンが覚えているだけの音楽を入力させて記録させている。なので、祈達も知っているような曲があったりする。

 ジンも流行りだった歌を歌った。ジンの歌声は全員の鼓膜と脳みそを揺らして気持ち悪くさせて倒した。


*  *  *


 パーティーはまだ続いているが、ジンは抜け出した。そのまま、転移で本部に戻る。そこはジンの秘密の部屋だ。ココの存在を知るのはジン以外に数人。ココには各地から集めた『剛腕の隻眼巨人(サイクロプス・)兵団(アーミー)』だったり、危険な団体だったりの情報を集めていたそれを整理している。

 今この部屋にはトウガとジンしかいない、少しだけ話し合いを始める。


「そろそろ、全体的に政治なんかが動き始めるか」

「じゃあ、裏側であいつらも動き出す頃だね」

「ああ、あいつ等を育ててたかいもあったもんだ」

「動き出すタイミングの制御か。どうにも面倒なタイミングだね」

「そうか。もう直ぐ皇国であの行事か。仕方が無い、お前は先に皇都に向かっておいてくれ」

「いいのか、お前はあそこの勇者の担当だろう」

「その分はお前に任せるよ。俺はお前の方を見て置く。依頼を出しておくから、取りあえずそれをこなさせておくか」


 ジンは依頼書を製作し、この部屋を知る数人で建てた計画を開始する。

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