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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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71話:先生はスパルタ優しい?

 祈の目覚めは最悪だった。自分の中に硬いものが入り、口の中には苦みのあるどろどろとした液体が入っている。苦みと舌先の痛みで目が覚める。初めての経験に涙が出てくる、いきなりの出来事に頭が追い付かない。状況を理解すると深い悲しみと絶望感が祈りを満たした。












 












「ぐ、ぐぅえぇ」


 祈は口の中の最悪な感触を吐き出しつつ、えずきながら体を起こす。その隣には優夢達が眠っている。その対面には男が座っていた。


「あ、アンタはァ!」

「落ち着けよ。その傷じゃまともに動けないだろ」


 男に注意されるが、祈は敵意をたぎらせた瞳で男を睨む。男は一先ず祈りを宥める事にする。


「良いから落ち着きなさいな。これで口でもゆすぎなさい」

「うっ、うん」


 祈は男に言われた通りに差しだされたコップを受け取って、中に入っていた水で口をゆすぐ。


「ぺっ! で、誰なのアンタ」

「へーへー。ま、自己紹介が先か。俺はメッソ。ニホン商会の学園で講師業をしていてな。今日はこういった迷宮であった生徒に襲い掛かっていくっていう内容なんだ」

「へー」

「お、信じてないな。これが身分証明書な」

「……ん、本物っぽい。という事は、ウチの先生も関わってるのか」

「そうだな。あっちはあっちでウチの生徒をしごいてるだろうよ」


 メッソは苦笑いする。ジンの実力を理解してるから苦笑いしているのだろう、中途半端な奴では心折られるだろう。


「色々聞きたい事はあるけど、その前に何を私に飲ませたの、口の中がイガイガするんだけど……?」

「『気付薬十二式』。スプーン一杯を樽レベルで薄めてそれをまたスプーン一杯で飲ませると2メートルの大男が一撃で起きる位キツいのを、原液で一本」

「死ぬわ! なに飲ませてくれてんの!」


 祈を声を荒げて怒る。知らない間にとんでもない物を口に入れられていたようで起こるのは無理はないだろう。男は追加で瓶を三本用意する。


「ほれ、追加の気付け薬だ。そっちの嬢ちゃんたちに飲ませてやりな」

「感謝はするよ。で、どうするの?」

「お前さんが起きたのなら俺は他を見に行くよ。それじゃ、もう帰っても良い筈だよ」

「え、でも、まだ、素材が集め終わってないよ」

「んー、大丈夫だよ。元々、君達が集めた分だけでよかったんだよ。それに俺達と戦って今日の授業は終了って訳」

「先生に文句言わないと」

「おー、言っとけ、言っとけ。依頼内容と違うことが依頼書に書かれたならそれは依頼者に文句言えるのが正しい依頼者との関係だ」

「あ、なんか変な事してないよね」

「へっ、嫁さんがいんだ。お前ら襲うほど飢えちゃいないよ」


 メッソはハハハと笑って迷宮の中で別れる。

 祈はメッソからもらった薬を鑑定して毒が無いかを確認する。毒が無い事を確認すると優夢達に飲ませる。


「……っ! ゲェハッ!」

「ハグッ!」

「フゥァ!」


 おおよそ女性の口から洩れる声ではないと思う声が三人から吐き出された。原液を突っ込まれ全員が苦々しい顔をしながら、祈から水を受け取り、一通りの事情を説明される。


「……口の中がキツイ」

「今日はもう帰っていいのか」

「早く行動しよう、今日は疲れた」


 望のそう言われると全員荷物をもって足早に迷宮を出て行く。


「うわっ!」


 祈が迷宮から出て目にした光景に驚愕する。死屍累々という表現が似合うくらい迷宮前の広場に沢山の人間が並べられている。その服装は祈達のとは色が違うが学園のジャージだった。どうやら、何者かに襲われて、こうして転がされて治療を受けている最中らしい。

 それらの横を通って、自分達の仮家に帰宅する。今日のご飯は皆で作り風呂に入ってみんなで寝た。明日は色々ジンに聞くことになる、ちょっとだけ不安だけど質問を考えて置く。


*  *  *


 祈達は朝起きて朝食を食べる。まだ少し気付け薬の効果か、舌先がピリピリする。


「うーん、味がしない」

「私も」

「私も同じ」

「同じく」


 祈の呟きにそれぞれが反応する。しかし、朝食はしっかりと腹に納める。モグモグと口に入れてのどに流し込む。味がしないので今日は味気の無い食事であった。

 学校の準備を手早く済ませて、四人で学校へ向かう。教室に入ると姫奈や蓮人が居たそれぞれが怪我しているようで、ガーゼや包帯が当てられている。どうやら迷宮で手ひどくやられたようだ。次に信壱たちが入ってくるこちらも同様に手酷くやられたようだ。

 全員が揃うと少し待ってチャイムが鳴る。ジンが扉を開けて教室に入ってくる。


「はい、昨日はお疲れ様。何やら大変だったみたいだね」

「当たり前だー!!」


 蓮人の方から怒りの雄叫びが聞こえてくる。無理もない、半分殺されかけたようなモノなのだから声を荒げて怒ってもしょうがない事である。


「襲った奴等に関してはすまなかったな。俺だとどうしても手加減しすぎちまいそうだし、信頼できる奴等も少なかったものだからな、手荒にはなったが俺以外との戦闘経験も積ませる為にもあれらとの戦闘はお前らにもいい経験になっただろう」

「それはそうかもだけど……」

「話さずにやらせたことに関しては謝るよ。でもね、人を殺したくない君達には大概の奴等を制圧できる強さを身に付けてもらいたいんだよ。殺せるんだったら程々でもいいが、そうしたくないなら相手を圧倒できる強さが必要だ。だから俺は君達に強さを仕込む、そして君達は教わった強さでこの世界を自分の足で建てられるようにしなさい。少なくとも俺はそう思ってる」


 ジンは真剣な顔つきで本心を話す。死んで欲しくない、ジンにとってはそれだけだ。だから、厳しくするし、キツイ事もやらせる。


「………いくつか、言いたい事もあるだろうけど、最終日には俺とやり合うことにしている。不満があるならその日に発散してくれ」

『はーい』


 そうして今日の授業が始まった。何時ものように授業をするジンの姿を優夢は少しだけ寂しそうに見た。


*  *  *


「やっぱ、厳しい」

「でも、手加減がすごいんだよね。よく見ると、痣とかにもなってないし」

「無駄に超技術」


 最後の訓練が終わって更衣室で着替えている。何発も連撃を加えられていたり、投げられたりしていたのに痛みもないし、余り痣にもなっていない。うまい具合に、手加減がされている。


「やっぱり、あの人はすごいね」

「………でも、あの気付薬を飲まされたのは納得いかないよ」

「間違いない。今日は朝ごはんが美味しくなかった」


 願の言葉に皆は苦笑する。ここにいる全員気付薬を飲まされているのだ。酷い味はしばらく忘れないだろう。着替えの終わった祈が制服のポケットから小瓶を取り出す。


「そしてなんと、ここにあるのは先日飲んだ気付薬」

「よし、飲ませよう」


 願は手早く着替えを終わらせて、祈と共にジンの元へ向かう。


「元気だね」

「仕方が無いね。まだ中学生だったんだもん」

「そうか。………まだ、中学生か」


 優夢は少し懐かしむように遠い目をする。それに気付いた望はちょっと好奇心を顔から覗かせて、優夢をお茶に誘う。今は放課後だ、優夢はその誘いに乗る。


*  *  *


「優夢ちゃんは、先生の事をどう思ってるのかな?」

「ど、どうって?」

「そこは恋愛的な意味で、って意味なんだけど」


 優夢は顔を逸らす。少しだけ意識はしていると感じたのか望は攻勢に出る。


「優夢ちゃんは恋してるんじゃない、先生じゃなくても元の世界とかに誰か気になる人はいるんじゃない?」

「……どうでしょうね」


 優夢はしらばっくれる。望も引かない攻勢し続ける。


「ふふん、話すまで今日は返さないよー」

「私は、料理の支度があるので帰りたいです」

「ままっ、今日の支度は願に任せましょう。だから、お姉さんに話してみなさいな」

「話すような事は無いです!」


 そんな問答をしながらしばしの優しい時間を二人は過ごした。


*  *  *


「フフフ」

「ふふふ」

「ぐぅあああああ!」


 ジンは喉を抑え少しふらつく、頭がガンガンするし、目から涙が出てくる、口の中で味覚が暴れている。

 不敵な笑みを浮かべた双子は復讐完了という様に満足していた。

 祈達はなにもされていません。

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