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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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70話:戦闘訓練 実戦の巻

 トンテキたちとの訓練を開始して一か月ほどたった。祈達がこの世界にやってきて二ヶ月経ったことにもなる。それぞれに分けたチームで連携の訓練を積ませたりしている。


「うん、連携もそれぞれ完成してきたね。そろそろ次の段階に移ろうか」

「はぁ、はぁ! つ、次?」


 訓練が終わった直後にいきなり言われたので、祈達は驚く体力も残っていないようだ。少し休憩させてもらい、改めて話をすることにする。


「次の段階って何?」

「今度は本物の実戦。見てるだけじゃなくて実際に自分で獲物を取ってくるんだ」

「んー、キツイ」


 祈は苦笑いする。見てるだけで結構心に来るものがあったのだが、自分の手でやるとなるとやっぱりストレスも比べ物にならないくらい大きそうである。それを想像するだけでもきつそうである。


「安心しろ、今回は一週間後に出発だ」

「なーんにも、安心できない」

「レベルは低いけど、怪我する可能性はあるからね注意しないといけないよ」


 ジンは取りあえずの注意だけをしておく。死亡の確率は少ないがそれでもない訳ではない。過保護かもしれないが死んで欲しくない気持ちの方が強い。だから、注意点を伝えるし、危険度の少ない実戦を積ませる。加えて、死なない程度にも失敗を経験させる必要もあるとジンは考えている。成功体験だけでは慢心と油断が生まれ、そこを突かれて死ぬ確率が上がる。


「鍛錬をしっかりやって来週に備えよう」

「はい」


 全員がしっかりと返事をする。その瞳には最初の頃よりも真剣な色が灯っていた。


*  *  *


「ここか」

「そうみたいだね。周りには私達と同じような恰好した人が多いもんね」

「あああ、緊張するー」

「準備はしてきたし、早く行きましょ」


 祈、望、願、優夢はトウキョウ近くにある六級迷宮『カハトの迷宮』の前にまで来ていた、少し離れたところにはクラスメイト達が見える。

 今日の彼女たちの装備は強化ジャージに革鎧と革手袋、頭にヘッドギアを着けている。安っぽい装備であり、周りには同じ様な装備を付けた冒険者が大量にいる。ここは難易度が低いため初心者冒険者がたくさん集まるのだ。祈達は早速迷宮へ向かう。受付で入ることを伝えて保険にも入って置く。そうして迷宮の入り口に足を踏み入れる。


*  *  *


 迷宮の中へ入っていくと中は洞窟の様に岩肌が露出していて、祈達は始めてみる自然の造形に少しだけ感動しているものの気を抜くことなくそのまま洞窟の中を進んでいく。

 少し進むと迷宮の内装が整えられ、レンガ造りで建てられている。


「……来た」


 索敵の為、先頭にいた祈が敵が近づいてくるのを察知した。全員が戦闘態勢に入る。険しい表情で 角から敵が出てくるのを待つ。

 角から白い物体が視認できると、一足飛びで敵に近づき神器のナイフで首元を狙う。人型の敵は一撃で首が飛ばされる。


「伏せて!」


 優夢がそう叫ぶと、構えていた弓から光の矢が射出される。光の矢は更に出てきた二体の敵を一気に貫く。これで打ち止めなようで、静けさが戻る。全員で後片付けに移る。腰に下げてた巾着袋の口を開いて残骸を詰め込んでいく。


「何に使うんだろ、コレ?」

「さぁ? それよりももう少し広い所に出たいんだけど」

「うーん、ここの先に広場が出てくるから一先ずそこにとどまって狩ろうか」

「りょうかーい」


 そう言うと全員で広場への道を進んでいく。

 広場に出ると、ドーム状の石造りの広場が出てきた。広場は直径100メートルの広さがあり、迷宮内は薄暗いので奥の方は見えない。


「よく見えないね。懐中電灯出してー」

「ほい」

「ありがとう」


 祈はそう言うと、手にした懐中電灯で先を照らす。広場の真ん中あたりを照らすと白く巨大な存在が鎮座していた。


「まずっ。後ろへ下がって!」


 光に気付いた巨大な物体は光の方向、祈達の所へ全速で向かっていく。敵は先程出てきた奴と同じ形だが体の大きさが桁違いであった。4メートルはあり、広場の天井に頭が届きそうである。緩慢かと思った敵の速度はかなり速く。少し目を戻すと手が目の前に迫ってきていた。


「願!」

「ふっ!」


 祈がそう叫ぶと、願が前に出てきて長剣を振ってコンパクトに手を弾き返す。敵は尻餅をついて、後ろに倒れる。すると、その横からワラワラと同形の人形のような敵が押し寄せてきた。


「祈は右! 願はデカイの! 優夢は願の援護!」


 今度は望が叫んで指示を出す。それに従ってそれぞれが動き出す。祈はナイフを持って白い人形たちへ飛び込む。滑らかにナイフを振るたびに、人形の首が飛んで機能を失っていく。

 左側に向かった望は、短槍を振るって人形の群れへ飛び込む。中心に入った望は縦横無尽に短槍で無双していく。一番近くにいる敵に襲う性質がある様で望に周囲の人形が囲って襲いに行く。しかし、短槍の間合いに入れた瞬間に首を飛ばして仕留める。

 そうやって巨大人形の周りを抑える。願は安心して長剣を振ってデカいのを追い詰めていく。立ち上がろうとした頭を地に打ち付け、上がった手は優夢の光の矢が弾き飛ばす、デカい図体を活かせずに一方的に倒される。


「終わったー」

「終わりー」


 迷宮内である為、声を抑えて勝利を喜ぶ。そ敷いて残骸たちを回収すると巾着の一つが一杯になった。巾着は人数分あり、それら全部を一杯にすることが今日の課題だった。祈はいっぱいになった事を喜ぶ。


「これからどうする?」

「うーん、ここでおびき出すか、潜るか」

「そういや、これらの名前って何ですっけ?」

「確か、普通のがウードで、さっきのデカいのはウード・ルークでしたね」

「あれでも一番じゃないんでしょ。やっぱり、下に降りるのは危ないと思う」

「やっぱりそうだよね。じゃあ、ここに残っても獲物はしばらくは来ないだろうから別に移ろうか」


 取り敢えず、方針を決め、荷物を背負い、入ってきた所とは別の通路へと向かう。だがしかしー、


「しっ!」


 優夢が体を回転させて回し蹴りで後ろに来た何かを迎撃する。すると後ろにいた男の剣を弾いた。


「誰です、貴方?」

「知る必要はねえ。取り敢えず、沈んで貰うぜ」


 見知らぬ男がいきなり攻撃を仕掛けてきた。

 男の獲物はレイピアと短剣。優夢と望以外の間合いには対応している。

 傷つけず捕らえたいのか、男の振るう刃に殺意はなく、全体的に引きつける剣技をしている。祈達は願が男の相手をしていた。というより、させられていた。男は願が盾になる位置を常に意識させていて、祈達が動こうものなら男もそれに反応して位置を変えている。全体的にこういう事に慣れている動きだ。


「目的は何?」

「こんなことしている奴が、言うと思うか?」


 そう言うと男は勝負を仕掛けてきた。一歩詰め寄り間合いに入って超接近戦を仕掛ける。願はそれを長剣でそれを弾くが、元々この間合いで有利なのは短剣を持っている男の方なのでグリップエンドで水月に一撃入れて気絶させるとその体を祈の方へ投げ飛ばす。それを祈は怪我をさせないように願の体を弾いて男の間合いを潰そうとするだが、弾かれた先から見えたのは男が持っていた短剣で慌ててそれを弾く。


「もらった!」

「くっ!」


 その時には男は祈の脇に迫っていて、祈の脇腹に横薙ぎの蹴りを入れる。祈は防御が間に合わなかったが、神器の効果で意識は保っていた。しかし、体重の軽い祈を蹴ったので蹴られた方向へ飛んでいく。男は追撃を仕掛ける為に駆け出す。途中で弾かれた短剣を拾い、祈に近づくが望に後ろから攻撃されることで横へ逸れて距離をとった。

 それを好機と思った優夢が攻撃を仕掛け始める。光の矢を連射し始める。正確さは置いておき男を誘導するように光の矢で退路を狭めていく。


「やぁっ!」

「はぁぁっ!」


 退路の先には望がいて短槍を構えて真正面から相手をする。男はレイピアで綺麗に受け止め、短槍を弾き返していく。


「わたっ!」


 願の事を安全圏へ退避させていた祈は途端に身体がフラつく。祈は首筋に手を当ててようやく何か刺さっていることに気が付いた。即効性の毒が塗られているらしく、酷い倦怠感と手足の震えがした。

 優夢が傍によって聖術で治療する。その間、優夢からのサポートが無くなる。それを好機に思った男が望の間合いに入って果敢に攻め込む。体を回転させて強引に自分をねじ込んで、鳩尾に短剣を握って拳を打ち込む。


「ぐぅあっ!」


 望はそのまま気絶してしまい、残りは祈と優夢の二人だけ。男は即行を意識して優夢を狙いに行く。しかし、男から突き出されたレイピアは祈のナイフに弾かれる。


「まだ、動けんのかよ」

「お姉さんのお蔭でねっ!」


 毒のダメージから回避した祈は高速移動して男の死角から突っ込んでいく男はレイピアを優夢に放って牽制し、短剣で祈と対峙する。男は願と同じように無力化しようとするが、立ち止まって斬り合う願と動き回って翻弄する祈とでは、立ちまわり方が違った。度々射線も通り、光の矢に対応しなくてはいけないので男は苦戦を強いられていた。


「あああああっ!」


 男は祈のナイフと短剣が合わさったタイミングで短剣を振り抜く。筋力の度合いは似たりよったりの二人だがタッパの分だけ男が競り勝った。そのまま中に浮いた祈を蹴りで顎を打って眠らせる。

 残りの一人になった優夢も弓を捨てて徒手空拳で攻める。膨大な魔力に物言わせて体表をコーティングする、そしてそのまま男の短剣と打ち合う。


「ぐっ! ふっ! ふっ!」

「サッサと諦めろっての!」


 男は優夢の連撃を短剣で捌くが、反撃に出ても膨大な魔力に覆われた体を貫くことが出来ない。優夢も反撃に出るが男の技術を抜くことが出来ない。しかし、ジリ貧のような攻防は優夢の一手で崩れる。


「行って、ホーク!」

「キャアアアア!」


 優夢が突き出す拳から自信と契約する緑の鷹のような精霊ーー、ホークを出現させて強引に距離を取る。いきなり現れたホークを男は避ける暇なく嘴に挟まれ壁に激突させられる。地面に落とした弓を拾って直ぐに構えて全力で放つ。


「ホーク!」


 優夢がそう叫ぶとホークも意図を理解して自分の体を霊体化させる。精霊は自分の体を霊体にさせる事でこの世からのあらゆる干渉を受け付けなくなる。霊体への変更は精霊自身による。

 ホークが消えた事で男は解放されたが、優夢が放った最高威力の矢が消えることは無い。それは光の砲撃となって男に直撃する。


「はぁ、はぁ、はぁ!」

「キュゥゥゥゥ」


 ホークが実体化して優夢に寄り添う。優夢は直ぐに祈達に近づき容体を見ようと近づく。


「まだ、終わってねぇ!」


 体を少し焦がされても優夢に近づいて後頭部に蹴りを打ち込もうとする。それをホークの羽がそれを防ぐ男はいつの間にか握っていたレイピアでホークの両眼を貫通させる。ホークはそのまま実体化を解いて消えてしまうそのままレイピアは放って置き。優夢に殴り掛かった、頭、顎、鳩尾を中心的に狙われている。


「ぐぅ、うぅ、かぁ!」


 優夢はもう一回ホークを呼び出そうにも溜めが出来ず何回か急所以外にいい攻撃を貰ってしまっている。優夢は一か八かもう一回攻撃に出る風を拳に纏わせて男の体に打ち込む。


「ぎゃあああ!」


 男は体をえぐられる痛みに大声を出してしまう。するとまた状況が変わる男の声に引かれてきたのかウードが数体広場に入ってくる。ウードたちは優夢を狙っていく何に反応して狙いに行ってるのかは分からないが男には目もくれず迫る。男はウードを囮に優夢の後ろへ回り込む。

 ウードに対応しなくてはいけない優夢を後ろから掌底で後頭部を弾くその衝撃で頭が揺れて倒れ込む。男はレイピアを取り付けていた極細の鋼線で引き寄せると一気に仕留める。


「はあぁあ、仕事は辛いね。けど、お仕事完了」


 男は痛む体を抑えて祈達を一か所に集めた後に自分の治療を開始する。


「ああああ、クソっ後でボーナスを請求しなくちゃな、先生さんよ」

「承るよ」


 男の横にはジンが立っていた。その顔は少し微笑んでいるように見えた。

まさかの、裏切り。どうなる勇者!

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