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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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66話:生徒の休日 その1

 休日二日目の朝。

 姫奈は先生であるリョウからオウカと共に借りている家の自分の部屋で目を覚ました。そのまま朝の身支度を整えて、リビングに向かう。


「おはようございます」

「ええ、おはよう」


 台所にはミルカが立って料理していた。世話好きな性格をしていて家に住んでいる守護者や姫奈達の面倒をよく見てくれている。しかし、彼女ばかりに家事を押し付けているわけでは無く、家の全員で協力して分担をしている。


「トーストは私が用意しますね」

「お願いします。他は私が用意しますね」

「……お米が欲しいですよね」

「同感ですが、無い物ねだりはしてもしょうがないでしょう。貴方の先生に頼めば分けてくれるかもしれませんよ」

「持ってるんです?」

「持ってはいるよ。ここでも栽培は始めたようだけど、上手くいってないようだけどね」


 地質や水質が違う場所で作物を育てるのは難しいのである。手探りで土の配分も考えながら作物が育ちやすい環境を作るのは普通なら重労働な作業だが。この世界には魔法がある。なのでこの問題は早期解決に向かっている。近いうちに米が一般に普及するかもしれないだろう。

 しかし、いまの所は米が食べられるのはジンの周りか学園だけである。


「今度貰ってきますね。次は和食にしましょう!」

「ええ、期待しておくわ」


 朗らかな顔をしてミルカは期待しているという。

 その後、朝食を作り、家の全員を起こしそのまま全員で朝食を取る。朝食を食べ終わると、姫奈は一人で商業エリアへ向かった。本屋へ向かうとオウカへ伝えた後に出て行った。


*  *  *


 商業エリアへ姫奈が訪れるとその広さと物珍しさに目を輝かせる。大量の珍しいモノがあふれる景色に心を躍らせ本屋を探すついでに色々なモノを見回っていく。今の彼女の服装は長めのローブに身を包み、肩にショルダーバックを掛けている。お上りさんというほどではないが、行動はお上りさんのようであった。

 そんなキョロキョロと見回りながら歩いていると、露店の女主人に声を掛けられた。


「そこのお嬢さん。そんな見回して何かお探しかい?」

「いや、その、本屋を探してまして」

「ああ、本屋ね。あそこはお上りさんには、見つけにくいでしょうね」

「あはは、そんな所にあるんです?」

「ああ、所でお嬢さんよかったら見て行かないかい? 安くしてくよ」

「うーん、先に本屋の場所を教えてもらえるかな。それなら二つ」

「ふふ、しっかりしたお嬢さんだね。良いだろう、ここの大通りの先へ行ったあと路地を抜けた先に研究エリアへ行く為の道があるそこら辺に二つぐらいはあるはずだよ」

「うん、ありがとう。じゃ、これとこれ頂戴」


 姫奈は青と紫の腕輪を取って、値切りをした後に代金を払って、その場を後にした。女主人に言われた通りの道順で歩いていくと本屋が並ぶ場所へ出た。


「ここか」


 姫奈は先ずは通りの奥の方の店から見始める事にする。奥の方の店は高級志向の本屋が構えられていて姫奈は近づきにくく入る前に諦めて別の店へ向かう。

 次の店は古書店の様な雰囲気のある店だった。店の中を見ても入りやすそうな雰囲気があるので姫奈は早速中に入ってみる。店の奥にはやる気のない女性店員が商品の本を見ながら、客が来るのを待っている様だった。


「いらっしゃい」


 女性店員はそれだけ告げると手元の本へ目線を戻す。それを確認すると姫奈は棚に並べてある本を手に取って読み込んでいく。静かな癒しの空気が過ぎていく。それからどれくらいたったのか、読みふけっているとカウンターの方から騒がしい声が聞こえてきた。


「だからよぉ、今日は俺に付き合えって言ってんだ」

「店番に忙しいので、付き合えません。買う気が無いならお引き取りを」

「へっ! 客のこないしみったれた本屋にいるより、俺達に付き合った方が建設的だと思うが?」

「お客ならいるので関係ありません」


 どうやら女性店員に突っかかっている男性が来ている様だった。男性は乱暴に女性店員を口説こうと脅しも挟みながら話していて、ふと、今のこの店の唯一の客である姫奈に話題が移ってきた。

 姫奈は棚の後ろに隠れて動向を窺い始める。


「あ? 見えねぇが?」

「いるんです。何もしないのであればお引き取りを」


 素っ気なく男性達の申し出を断り女性店員はカウンターに引き籠るが、いら立ったように男性客はカウンターに身を乗り出し始める。


「いいから、黙って付いて来いっての!」

「っ! やめて下さい! 人を呼びますよ!」

「へっ! こんな所に来るかっての!」

「や、やめなさい!」

「あん?」


 姫奈が飛びだした。なぜかは分からない、けれど飛びださずには入れなかった。目の前に困っている人が居る。助けたいから、助けるために飛びだした。しかし、気概だけで事態が好転する事などない。


「あん? へっ! ガキか、ビビらせんなよな」

「ひ、ヒトを呼びますよ!」

「はは、こんな辺鄙な所に来る衛兵もいねぇよ。それよりおめぇも見ないタイプだがかなりいい顔付きじゃねぇか。あいつと一緒に可愛がってやるよ」


 店員を掴みながら、無遠慮に姫奈の方に男は近づいていく。男が手を掴み、同じように下卑た目線を向けながら何処かへ連れて行こうとする。


「大人しくするなら優しくしてやるよっ」

「おい」


 ドスの聞いた女の声が聞こえてくる、すると室温が下がった気がしてくる。男は後ろから聞こえてきた声の主を確認しようとする。

 だが、


「く、首が動かねぇ!」

「させる訳ねぇだろ」


 男は腹に衝撃を感じると、そのまま意識を失い襲撃者の顔を確認することなく一方的に倒された。


*  *  *


 オウカは不満そうな顔をしながら姫奈を見る。ちょっと気になって後ろを歩いていたら、危ない事に巻き込まれていたのだからいい気分ではない。

 男を見下ろし背中を踏みつけて置く。すると、女性店員の方に目が向いた。


「貴方は?」

「ここの店長のリーンです。危ない所をお助けいただき、ありがとうございます」

「……これ、どうする?」

「巡回兵に引き渡しましょう、そろそろ見回りの時間なのですが」


 そう言って、一旦外へ出ると少し遠くに巡回兵が見えた。彼らを呼び寄せて男を引き取ってもらう。


「お礼にお茶位出しますが、どうされます?」

「……どうする?」

「え、ええ、じゃあ、ご馳走になります」


 リーンからお礼の申し出があり、オウカにどうするか尋ねられると姫奈は少し迷ったものの受け入れて店の奥に案内される。そして二、三冊の本をもって奥に入っていく。


「どうぞ」


 冷蔵庫に保管してあった紅茶を取り出してカップに次いでオウカと姫奈の二人に差しだす。よく冷えた紅茶がスッと喉を通っていく。


「貴方なら、さっきの男を瞬殺で来たんじゃない?」

「お客さんがいる所で暴力を出すのも難しいんですよ」


 簡単に対処できただろうと、リーンの能力をオウカが疑うと出来はするが姫奈を気遣うとあそこでは暴れられなかったと弁明する。オウカも流石にお店を壊させてまで無理を言う気はないので、この件は飲み込んでおくことにする。

 すると姫奈が話に入ってくる。


「あ、あの、本のお話をしてくれますか? これとか興味があって」

「うん、…ああ、この本ね。専門書だけどいいの?」

「はい。教えてもらえますか?」

「お礼って事ならまぁ」


 渋々という風にしながらもリーンは少しうれしそうにしながら姫奈の隣に移り、本の内容を解説していく。内容は魔術についてで、ジンからはまだ教わっていない範囲の無いようだった。


*  *  *


「いらっしゃいませー!」


 休日はバイトに精を出す祈達。喫茶店でバイトをしている彼女らはかなり接客にも慣れていた。喫茶店の方も顔の良い四人を目当てに客足も伸びてきている。

 因みに、喫茶店の店長は男性で、四人にセクハラする客は容赦なく叩きだしている。


「はい、カルボナーラとペペロンチーノ、それと鳥の香草焼きですね。承りました」


 祈は客から注文を取ってカウンターへもっていき、店長兼マスターの男性ーー、トランに注文の料理を作ってもらう。横には優夢も一緒に料理している。ホールも担当するがお昼ごろは忙しいため、彼女が厨房に入り料理を手伝っている。


「香草焼きは俺がやろう」

「了解です。ソースは私が作るんで」


 手際よく二人は調理を進めて、同時進行で別の料理も進めていく。注文は連続して入ってくるので効率的に調理を進めていく。

 続々と料理を完成させそれを祈、願、望の三人が配膳をしていく。そんなこんなでピークを終え、昼食後のちょっとした休憩に入る。


「慣れてきたとはいえ、疲れたねぇ」

「初めてとは思えんよ。君たちが来てくれたおかげで、売り上げと店の回転率がうなぎのぼりだ」


 悪い笑みを浮かべながらトランは四人分の昼食を用意する。四人はそれを受け取って店の一席で遅めの昼食を取る。


「慣れてきたとはいえ、やっぱ疲れるよねぇ」

「私もずっと、立ちっぱなしで、料理しっぱなしで疲れました」

「そう言えば、優夢ちゃんは何処で料理習ってたの?」

「…私は、お母さんが料理に詳しくてそこで教えてもらったんです」

「なんか、ごめん」

「良いの、良いの、気にしないで、今はこっちでも楽しく過ごしているんだから」


 優夢は穏やかに笑いながら気にしない様に言う。寂しくはあるけど、今も十分満足して楽しい生活を送れている。


「そう言えば、祈ちゃんはどうなの? 元の世界とかで、好きな男の子とかいないの?」

「ええ、いないよ!」

「聞いたことなかったね、私にも教えてみてよ」


 優夢が祈を揶揄うと、祈は顔を赤くし反論する。望もそれに乗って祈をからかい始める。和やかな昼食が終わり掃除を始める。


「~♪~~♪~♪~~~♪~」

「……前から思ってたんだけど、音外れてない?」

「あはは、私もそう思うけど、あんま変えたくないんだ」

「何で?」

「ま、まぁ、良いじゃん、それよりもそっちまだ掃除してなかったよね」


 口笛を指摘されると、慌てて話題を逸らして別の場所を掃除する。すると、扉のベルが鳴りお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませー」


 反射的に入店の挨拶をして、祈がお客を出向かいに行く。すると、入って来たのは姫奈だった。後ろには物静かそうな女性が付いて来ていた。

 祈はいつも通りに席に案内して水とメニューを出す。


「ごゆっくり、どうぞ」


 そのまま、休憩室に引っ込む。中では願と優夢が休憩していた、望が暫くはトランとホールをやっててくれるらしい。


「で、何で変えたくないの?」

「何でもないの! 大切な思い出なの!」

「そこが一番気になるんだけどね」


 祈と願で優夢を弄る。さっき弄られた憂さ晴らしなのか、祈はしつこく優夢に聞いていく。


「じゃあ、さわりだけ教えてよ。今はそれで満足するから」

「今は、って…。まぁいいや、じゃあ、さわりだけね」

「うんうん」


 また聞かれるだろうなって思いつつ、優夢は話していく。


「ええとね、私は昔にね、凄く仲のいい幼馴染がいたんだ。お母さんの話では、赤ちゃんの頃からの付き合いでよく遊んでいたんだ。その子はすごく器用な子で、色んなことが出来たんだ。口笛とかも、その子に教えてもらってたの。まぁ、音が外れてたけど、歌もそんな感じだったから、多分音楽が苦手だったのかな?」

「…それで?」

「小学校に上がる前かな? 親の都合でその子が引っ越すことになっちゃったんだ、私ねその時に凄く泣いちゃって、男の子を困らせちゃったの」

「………」

「それで、その男の子がね、約束してくれたの、もう一度、会いに行くからその時は結婚しようって。昔の私も単純だから、それですごく喜んだんだ。その後、私も色んなことを頑張って、あの子の事を待ってたんだけど、こっちに来ちゃったんだ」

「……そうだったんだ」


 祈は胸焼けしそうな気持ちでいっぱいであった、糖分過多で甘い話である。祈は取りあえずそこで話の矛を収めて、別の話題を振って話をしていく。

 話に夢中になってると望が入ってくる。


「貴方達、交代の時間だから早く行きな」

「はーい」


 三人はホールへ向かい望は一人休憩室で、休憩に入るのだった。

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