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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第四章 召喚勇者と見守る守護者
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59話:勇者と獣王の取引

 全員で謁見の間に向かい。無駄にデカい門を通っていくと、そこにはガイネア王国の様な謁見の間に辿り着いた。国は違うから細部は違うが様式は同じにできているのだろう。

 玉座に座るは、ガンジ獣王国の国王、獣王アイゼル=ベス=ガンジ。顔は厳ついが、その頭には立派な鹿の角が付いていて親しみがあるように見える。

 ジン達が中に入るほど後ろと前の緊張感が高まっていっているのが、手に取るように分かる。アイゼルの前、数メートルに来るとジンが跪き、それに続いて千治親子もジンと同じように跪く。優夢はジンに抱えられながら顔を下げてアイゼルの方を見ないようにする。

 ジンが顔を上げると話し始める。


「アイゼル様、超級冒険者のリョウが挨拶に参りました」

「うむ、久しぶりだな。息災の様で何よりである」


 上の者の許可なく話し掛けるのは礼儀に反するが、期限を悪くした感じはなく威厳のある声がアイゼルから聞こえる。一応ジンは謝罪も行う。


「急な申し出にも関わらず、謁見を許可してくださり感謝しています」

「よい、お前から正式に謁見を申し込まれることもなかったからな、新鮮だったし。それに冒険者から申し込まれたのは久しぶりだ。して、今回の要件はなんだ?」

「この度、受注していた警戒任務中にて、聖王国の貴族が冒険者の集団を率いてゴーゴータの森へ侵入、その際、戦闘となり貴族の子息を捕縛しました」

「そうか、あの豚共め。ふざけたことをしてくれやがって」


 ジンの報告を聞くとアイゼルの機嫌が悪くなる。そんなアイゼルの低くなった声に当てられて小さい悲鳴がジンの耳に入ってくる。ジンは少しだけアイゼルを宥めると彼は咳払いをして場を仕切りなおす。


「それで?」

「その際、巨大な光の柱が発生し、後ろの彼女らが同時に出現しました」

「ほう?」


 ジンは簡潔ではあるが纏めた情報をアイゼルに伝える。光の柱が出現したことは分かったが、詳細な話はここで初めて聞くのだろう。

 アイゼルは興味深そうに話の続きを促す。


「勇者が出現したと私の方は考えます」

「成程、根拠は?」

「実際、その称号を持った人間が現れた為です」

「確かに、聖魔大戦以後に勇者の称号を持つ者は出なかったな」


 アイゼルは納得したように頷くとジンに質問をする。


「それで、勇者は誰なのだ?」

「後ろの双子の少女の姉の方です」

「言い方が悪かったな、勇者はどっちだ?」

「右の方です」

「では、勇者殿質問よろしいか?」

「はい、大丈夫です」


 祈はガチガチに緊張しながらアイゼルの方を見る。快活そうな感じだったのにその雰囲気は鳴りを潜めてしまっている。


「ようこそ、と言うべきではないのかな?」

「どう、なんでしょうね? 呼び出してもらえなかったら、母も妹も大変なことになってたことでしょうから」

「理由はあるが納得はしていないと」

「帰り方とかあるのなら聞きたいですが」

「ない、と言うか。我らも知らんのだ」

「そうですか」


 少しだけ気落ちしたように俯く祈。そんな祈にアイゼルは言葉を続ける。


「まぁ、我らは知らないが。そっちの男は役に立つだろう。情報収集、分析、技術の開発。様々な最新がその男には詰まっている。勇者殿がそいつらについておけば手掛かり位は見つかるかもしれない」

「それは、どういう?」

「形式的には、我が国に属してもらう。しかし、その男について色々な技術を学んでくれると良い。それを我が国に還元してくれればこっちとしては満足だ」

「まぁ、俺に面倒を任せるって事なんですけどね」


 ジンが呆れたように呟く。

 アイゼルが指で横にいた腹心に指示を出すと、腹心が近くにあった棚の上から、ガンジ獣王国の国章の入ったメダルを持ってくる。事前に複数枚用意していたのか、余裕をもって四人にメダルが渡される。


「それは、国章の入ったメダルだ。貴族とのトラブルなんかに見せれば少しは有意に事が進むだろう」

「あ、ありがとうございます」


 今度は、祈ではなく望が答えた。一応、代表としての意地を見せた結果だろう。


「では、細かい事は後で話そう。解散だ」

「それでは、御前より失礼します」

「うむ、退出を許可する」


 アイゼルが許可すると、ジンは立ち上がって回れ右すると全員立たせて入った所から出て行く。


*  *  *


 ジン達は謁見の間から退出すると、先程案内してもらった人に別室に案内される。


「しばらくしたら、陛下が来られるでしょうからここでお待ちください」


 四人はソファに一列に揃って座る。ジンは部屋にあった茶器を用意して紅茶を淹れる。紅茶を少し蒸らした後カップを複数用意して優夢達に渡してやる。


「良かったら、どうぞ」

「ありがとうございます」


 緊張している様だったが全員疑うことなく飲む。そもそも、何も入っていないが。


「一息、付けましたか?」

「はい、ありがとうございます」


 望が代表して礼を言う。しかし、ジンも何となく四人の間にある微妙な空気を感じ取った。


「自分は少し出ているんで、自由に話でもしてください」


 雑ではあるが、年長者の望に何とかしてもらおうと思う。話す場を整えてやれば、少しは打ち解け合えるだろう。

 何となく優夢から視線が向けられてる気がするが、一旦振り切って出て行く。


「失敗したな」


 正直言って、前世の頃からあれで仲良くしろと言われて仲良くできたためしはない。雑だが。年長者に任せて部屋を出て向かいの壁に背中を預けて待つことにする。


*  *  *


 ジンが出て行った部屋の中には気まずい空気が流れている。その空気を壊しに行くのは祈だった。流石は勇者である。


「桜川さん?」

「あ、はい、何でしょう?」

「……優夢姉さんって呼んでいい?」

「……大丈夫だよ。私も祈ちゃんって呼んでいい? できれば、お二方の事も下の名前で呼ばせてくれませんか?」


 優夢は祈のお願いを快諾し、祈、願、望にも下の名前で呼んでもらえるようにお願いする。


「良いよ」

「大丈夫」

「私も大丈夫よ」

「ありがとうございます」

「……少し、色々聞いていい?」

「まぁ、……大丈夫ですよ」


 祈が優夢に引っ付いて質問をする。右腕を掴まれているが優夢は困ったようにしているだけで特に不満はなさそうだ。


「あの、身体、は、どうしたの?」

「ああ、これね。こっちに来たらこうなってたの、私もよくわかんないけど」

「そうなの」


 祈は労わるように優夢の右腕を撫でる。祈は何となく優夢の傍に引っ付いている。


「皆さんはこっちに来る前には何をされていたんですか?」

「誕生日だったからパーティーの準備をしてたよ」

「そうだったんですか。私も春頃が誕生日だったんで親近感がわきますね」


 多少、何かあった事を察したのか優夢は深くは切り込まず話を逸らして話題を続ける。そこからは和やかに話が続く。


*  *  *


 ジンは外で待っていると、役人がやってきて捕虜にしていた貴族の居所を確かめられる。ジンはヌルの胃袋から貴族を取り出す。出されてすぐに騒ぎ始めるが腹に蹴りを打ち込んで黙らせる。

 役人は頭を下げて後ろの兵に地下へと運ばせる。報酬はアイゼルから直々に渡されるそうだった。


「なんか、情報入ったら頼みます」

「承知しました」


 たいして期待はしていないが役人にそう頼むと相手もそう思っていたのかそのまま立ち去っていく。

 十数分するとアイゼルが王女を連れてやってきた。彼女はセルリア。年頃はジンと同じ位で、勝気な雰囲気を感じる。アイゼルと同じ茶色の髪を長髪で整え、活発な雰囲気と同時にお淑やかさもある。


「役人との話は済んだか?」

「ええ、そちらは話が纏まりましたか?」

「反対するのは何人かいるが、まぁ、予想通りだった。条件をまとめたのは後でお前宛に送ろう」

「承知しました」


 そこで話を切るとジンは祈達がいる部屋へ向かい、部屋の前に来ると扉をノックする。


「遅くなりました、話があるので入れて貰えますか?」

「ど、どうぞー」


 ノックをすると中から返事がした。なので、普通に扉を開けて中に入ってくる。ジンに続いてアイゼル達も中に入ってきた。


「じゃ、色々とお話ししましょうか」


 ジンがそう言うと、少しだけ弛緩した空気が流れ始めた。その緩んでる筆頭はアイゼルで、謁見の間であった時よりもだらんとしていた。


「ああ、君達もゆっくりしてくれ。公式の場ではないからな、緊張することは無い」

「はぁ」


 目上の人というより年上の人に言われたところで、緊張しかしない。緊張するなと言うほどが無理である。


「先ほども言ったが我が国は君達を歓迎する。君達がどう思ってるかは分からないが、勇者とその知人である以上は信仰心がある場所なら優遇はされるかもな」

「あ、ありがとうございます」


 祈が代表してお礼を告げる。勇者と言われて半分反射的だったのかもしれない。


「さて、話は変わるがお嬢さん、その体は?」

「えっ、そのぉ」

「答えたくないのなら無理しなくても良いが」

「そういう訳じゃないんですが、只この世界に来たらこうなっていたってだけで」

「なるほどね。リョウ、何かわかるか?」

「火と風の勇者の召喚に巻き込まれたのでしょう。その証拠にギフトに火と風の神の寵愛が確認できました。失った部位についてはココでは調べられんのでトウキョウで詳しく診てみますよ。義眼、義手と義足も専用のにするつもりですしね」

「あ、ありがとうございます」

「気にしないで良いよ。こっちも医療技術の発展という目的があるからね」

「我が国も資金的な援助をしよう。失った肢体の補助が出来る技術の向上なら我が国にとっても有益な事だ」

「ありがとうございます」


 消え入りそうに本当に恐縮そうな顔をして、優夢はお礼を述べる。リョウとアイゼルは今後の支援の具体的な話に関してを説明し、有事の際は祈達は名前だけ貸す事を条件に支援の話を締結した。祈達の条件の中にはトウガについての条件は無かった。

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