58話:やるべき事がある人達
優夢は暫く鳥と戯れて待っていると、ジンが義手の様なモノを持ってやって来た。
「義手と義足を持ってきたから付けてくれ」
「えーっと、どうやって?」
「まぁ、直接くっつければくっつくよ」
「えー」
ジンは布団を捲って、無くなっている足の部分の断面に押し付けるとぴったりとくっつく。
「立てる?」
「えっ、どうでしょう?」
ジンは優夢の右手を持ってゆっくりとベッドから出してやる。ガチャ、ガチャ、とした音と共に優夢は偽の足と共に地面に降り立つ。
「あ、きゃっ!」
「よっ」
ジンはふらつく優夢を支えてやり、バランスを取らせる。これを見てまだ自力で動くのは無理そうだと考えた。という訳で、ジンが抱っこしてやる事にした。
「ひゃっ!」
「少し我慢してな」
「は、はい」
優夢は顔を赤くしてお姫様抱っこで運ばれていく。運ばれた先にはお茶を飲んでくつろいでいた祈達の姿があった。他人の姿があってさらに優夢の顔が赤くなる。
そのまま一人用のソファに座らせる。
「自己紹介でもしますか?」
「お、お願いします」
「では、自分から、名前はジンと言います。普段はリョウって名乗っているので外ではそっちで呼んでください」
「ええっと、千治望です。OLをやってました」
「千治祈です、この人の娘です」
「千治願です。双子の妹です」
「はい、桜川優夢です。高校生でした」
自己紹介だけで仲良くなれる訳もない。ジンもそう感じたのか別の話に移る。
「さてさて、皆さんは異世界にやってきてしまったわけですが、どうします?」
「………何ができるんでしょう?」
「一応、仕事も紹介できますけど、どうします?」
「何か、お薦めの予定とかありますか?」
「そうですねぇ。それじゃあ、少し付いて来てくれますか?」
「ど、どう?」
「私は別に良いけど」
「何するんですか?」
「王様に会ってもらおうと思って」
「王様?」
「この国で君達を召喚するような大事が起こったからなこの国のトップにそれを報告する義務が俺にはある。という訳で、状況説明のために協力してくれ」
「は、はい」
ジンが状況を説明すると、納得して一行は付いて行くことを決定する。
* * *
ジンはエルフの村の住人に仕事の事を尋ねると竜人が昨日のうちに片付けて攫われたエルフ達も戻って来たと告げられた。ジンは少し話すと優夢を抱えて千治親子に捕まってもらい、転移で移動する。祈達は景色が歪むように見えるとその歪みが正されると目の前にはプランターに埋まった大樹を起点に街が広がっていた。
「お、お~」
「あの大きい樹が城になっているから行こう。体の一部に捕まってくれ」
「あ、はい」
「こ、こう?」
「………望さんは俺の背中に、双子は俺の腰に抱き着いておいて」
「………はい」
際どいところに双子の手が入ってきていたので腰の方に手を回してもらう。ジンは風属性の魔法で空を飛び、城になっている大樹へ向かう。
空から正門前に降り立つと不審者の様なジンに対して門兵が槍を向けて来る。ジンは千治親子を降ろすと優夢を持つ体勢を変えて懐から白金色のカードを見せる。
「超級冒険者のリョウです。陛下にお伝えしたいことがあるのでお目通りできますか?」
「うわっ! しょ、承知致しました。直ぐに担当の者を呼んでまいります!」
兵士が城の中に走って数分後、文官風の男がやって来たその男の頭の上には狐の耳が付いていた。コスプレでもないと見る事の出来ない、自然に付いた耳に異世界から来た人間は目を奪われる。
「ご案内いたします」
「頼みます」
そう言われて一行が案内された先は待合室、王様に謁見する前に通される場所だ。ここでしばらく待たされることになる。ジンはよくよく考えて優夢の格好を改めて確認する。
「一応、これも付けておいてくれ」
「はい………」
ジンは眼帯を取り出して優夢につける。少しムズムズするが我慢して装着する。
「この水筒にお茶が入っているのでよかったらどうぞ」
「ああ、どうも」
「ありがとうございます」
暫くの間ゆっくりとした時間を過ごすと位の高そうな服を着た獣人がやって来た。
「陛下の準備ができました。ご案内いたします」
ジンは優夢を抱えて千治親子はそれについていく。入り組んだ城内を数分歩くと謁見の間に続く大扉が現れた。その両隣にはフル装備の騎士が立っており、その騎士が合図を出すと。大扉がゆっくりと開いていき、ジンがその先へ進んでいくと、それに続いて祈達が先へ入っていく。




